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9月17日(月) 「政府の顔」と「選挙の顔」の選択 [総裁選]

 「本当に病気なのか?」という疑いを抱かせたまま、朝青龍はモンゴルに帰っちゃうし、安倍晋三は慶応病院に逃げ込んじゃうし、「一体どうなっているのか?」という声をよそに、あれよあれよという間に自民党の総裁選挙が始まり、始まった途端にもう勝敗が決まってしまい、「消化試合じゃないか」という声も無視してマスコミだけははしゃぎ回っている。本当に、一体どうなっているんでしょうか。

 相も変わらずマスコミは福田対麻生の対決を演出し、総裁選挙を盛り上げようと躍起です。しかし、この二人しかでてこないというところに、もはや“自民党に明日はない”ということが象徴的に示されています。
 人材が、完全に払底してしまったということでしょう。自民党の生命力の枯渇と言っても良いと思います。
 この二人なら、どちらがなっても50歩100歩です。たとえは良くないですが、目クソ鼻クソの争いにすぎません。

 この二人に、全く違いがないとは申しません。麻生さんは若くて派手、福田さんは年配で地味、麻生さんは安倍執行部の一員で今回の“退陣騒動”に責任があるが、福田さんはそうではありません。
 外交路線では、中国や韓国との友好を重視し、靖国神社への参拝を行わないことを明言している福田さんに対し、中国包囲網づくりのための外交路線を押し進め、靖国参拝について「適切に判断する」としか言わない麻生さんという違いがあります。北朝鮮の拉致問題でも、麻生さんは圧力を強めようとし、福田さんは対話を重視しています。
 政治路線では、麻生さんはタカ派で福田さんはハト派と見られています。安倍前政権との関わりでいえば、麻生さんはその一員であり、福田さんはそうではありませんでした。

 しかし、これらの違いは、目クソが目から、鼻クソが鼻から出るという程度の違いにすぎません。目と鼻のどちらから出るにしても、「クソ」は「クソ」です。たとえが汚くて済みません。
 福田さんは福田赳夫元首相の息子で、麻生さんは吉田茂元首相の孫です。二人とも、世襲議員であるという点、それも元首相の血を引くエリートであるという点では同じです。
 小泉さんの進めた構造改革路線についても、修正や是正をいっていますが、二人ともその転換ではなく継承を掲げています。「政治とカネ」の問題でも消費税率の引き上げでも、この二人に違いはありません。
 麻生さんは安倍さんに近く、福田さんは遠いのかというとそれは誤解です。小泉、安倍、福田の3人は、いずれも旧森派の一員で、福田さんは森内閣と小泉内閣の官房長官でした。

 臨時国会の最大の焦点と見られているテロ特措法問題ですが、これについても二人の姿勢に違いはありません。二人とも、インド洋での給油活動を継続する方針です。
 法案が参院で否決された場合の対応でも同じです。二人とも、3分の2の多数で再議決する意向を示しています。
 派閥との関係でも、麻生さんは「派閥政治」の復活を批判しています。しかし、自分自身が麻生派を率いる領袖であるという事実をどう考えているのでしょうか。

 つまり、自民党の総裁選挙に立候補した二人には、言われているほどの違いはないということです。二人の相違や対決は、総裁選挙を盛り上げたい自民党の演出であり、それに乗っかって視聴率を稼ごうとするマスコミの画策にすぎないのです。
 このような“賑やかし”は23日の投票日まで続くでしょう。しかし、国民にとっては不毛の選択です。
 どちらが選ばれても、局面を打開するのは困難でしょう。どちらも、帯に短したすきに長し、だからです。

 福田さんは、年配で落ち着いており、調整型で派手さがないという特徴があります。これが安心感を与えるということで、多くの派閥ボスに支持されました。
 この点では、麻生さんが言うように、「古い自民党」の復活です。ボスの威光が徹底しきれないという点では、復活も中途半端ですが、自民党よりも世論に依拠してきた小泉・安倍路線からの転換であることは明らかです。
 そしてここに、福田さんの弱点があります。一度は脱却が目指された「古い自民党」に頼らざるを得ず、幅広く世論に訴える「選挙の顔」としてのアピール力に決定的欠けるという点です。

 麻生さんは、若者受けする大衆性があり、演説も上手で「選挙の顔」としては、福田さんよりもましです。でも、安倍内閣での実績やこの間の党運営についての批判が強く、国会議員による支持では劣勢です。
 世論の支持を盛り上げて、これを逆転しようというのが、麻生さんの作戦です。小泉さんの時と同じように、地方票をテコに劣勢を跳ね返そうというわけです。
 そしてここに、麻生さんの弱点があります。「選挙の顔」としての人気に頼って選び、結局は失敗してしまった安倍首相の苦い教訓のあとに、同じような手法をとろうとしているからです。

 こうして自民党は、「政府の顔」としての福田さんを選ぶのか、「選挙の顔」としての麻生さんを選ぶのか、という選択に直面することになりました。問題は、この二つの「顔」が一致していないという点にあります。
 「政府の顔」としての福田さんは、「選挙の顔」としては役に立たないでしょう。かといって、「選挙の顔」としての麻生さんを選べば、安倍さんと同じような失敗を繰り返す恐れがあります。
 どちらを選んでも、「自民党レジーム」の維持には、黄信号が点るのではないでしょうか。とりわけ、苦手なパフォーマンスを求められ、「選挙の顔」を努めなければならない緊急事態に、「もう、年も年」である福田さんが耐えられるのでしょうか。

 野党にとって福田さんは、政策論争や国会論戦では手強い敵になるかもしれません。しかし、世論へのアピールや「選挙の顔」としては大きな弱点を抱えているのが福田さんです。
 これをどう判断するかが、総裁選の大きなポイントになるのではないでしょうか。ヒョッとしたら、麻生さんの逆転もあるかもしれません。


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