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10月1日(月) 郵政民営化は地方衰退に向けての第3段階か? [社会]

 10月に入りました。今日から、郵政が民営化されます。
 振替口座サービスが150円から330円へ、電信現金払いが180円から630円へ、公共料金の払い込みが30円から240円へ、定額小為替が1枚10円から100円へと、値上げラッシュが予定されています。
 それだけではありません。郵便局の整理・統合なども伝えられています。この郵政民営化が、また一歩、地方の衰退に向けて歩を進めることになるかもしれません。

 先日、『朝日新聞』の「編集局労働グループ」に属する記者の方から、取材を受けました。JRの採用差別事件から20周年を迎えるので、この事件の意味について意見を聞きたいというのです。
 そのとき、旧国鉄の分割・民営化について私が指摘した問題点の一つが、地方の衰退です。分割・民営化によるロール線の廃止や第三セクター化が、その第1段階だったのではないかという点です。
 分割・民営化によって、本州のJRが活性化し、都市部でのサービスが向上したことは否定できません。しかし、北海道、九州、四国のJR3社はどうでしょうか。都市部以外でのローカル線の廃止は、地方のコミュニティと生活を破壊してしまったのではないでしょうか。

 これに続いて、平成の大合併がありました。地方自治体の統合は、地方の衰退の第2段階だったように思われます。
 ローカル線の廃止によって、地方のコミュニティの核になっていた鉄道の駅がなくなりました。自治体の統合によって、かつての駅の近くにあった役場などの行政機関も姿を消したり、規模が縮小したりしています。
 駅や役場の消滅によって人々の往来が減れば、周辺の商店街も影響を受けます。町や村の中心部にあった商店街が、シャッター通りに変わってしまうのも当然でしょう。

 そして、地方衰退の第3段階が今日の郵政民営化から始まるのではないか、というのが私の懸念です。地方や山間部の郵便局が統廃合されてしまう可能性が高まるからです。
 局があれば人が集まります。集配に従事する局員は、一人住まいのお年寄りなどに声をかけたり、学校に行き来する子どもたちを見守ったりしてきました。
 郵便局がなくなれば、人は集まりません。集配の局員が減らされたり、回数が減ったりすれば、郵便屋さんが走り回ることも少なくなるでしょう。

 地方の山間部では、コミュニティとしての機能を維持できない限界集落が激増しています。その維持にはお金がかかりますから、経済合理性や行政の効率性からいえば、周辺の都市部に移ってもらった方が良いということになります。
 山村や離島の集落を整理し、人々を都市部に集約するのは、実は、「構造改革」の隠れた政策目的だったのではないでしょうか。「構造改革」が失敗したからではなく、それが成功したから、地方は衰退しているのではないでしょうか。
 その結果、地方には不安や不満が渦巻くことになりました。それが参院選での自民党大敗をもたらしたために、政府・与党が慌てているにすぎません。

 行政の論理からすれば、少数の人に多額の税金をかけることは不合理です。税金の効率的運用からすれば、人口の少ない地方を切り捨てることは、極めて合理的な政策選択だということになります。
 しかし、その地方には、そこで生まれ、生活し、生涯を全うしたいと願う人々が生きています。ふる里で人生を終わり、先祖から受け継いできた土地や建物を子孫に伝えていきたいというのは、余りにも当然の願いでしょう。
 これは人間の論理です。この論理からすれば、行政の論理は間違っています。

 「人はパンのみにて生きるにあらず」と言います。行政の効率性だけで、人間社会のあり方を考え、左右してしまって良いのでしょうか。
 いま、地方の衰退という事実が突きつけているのは、この問いにほかなりません。この問いにどう答えるのかが、与野党ともに、問われていると言うべきでしょう。
 行政はそこに生きる人々のためにあります。行政のためにそこに生きる人々がいるのではありません。

 民営化によって公の論理が否定されてきました。国鉄の分割・民営化はその始まりであり、「構造改革の本丸」であった郵政民営化は、その究極の姿にほかなりません。
 行政の効率性を追い求めるあまり、人間の論理が忘れられているのではないでしょうかそれは結局、社会の衰退を早めてしまうという本末転倒を、一体いつまで続けるつもりなのでしょうか。


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正面教師

 地震学者=石橋克彦もそれを震災の面から警告しています。市場原理主義が都市集中と地方の過疎を激化させ、ひとたび地震のユレがそれらを襲えば人的にも物的にも都市は甚大な被害を受け、放棄された農地や山林が広がる地方では斜面崩壊などが余計に起こります。上流部での災害は当然下流都市部へ洪水や土砂流出などの後遺症をもたらす。

 地震列島日本には危険を分散させる国土計画は必須で、それこそが日本が生き残る道です。その意味では小泉のやった構造改革は二重の意味での「売国行為」になります。米国の保険会社のために郵政民営化をし、その結果地方を荒廃させた。・・・もちろん原発をすぐ止めておかないと、日本の未来もありません。
by 正面教師 (2007-10-02 08:31) 

通行人A

はじめまして。いつも興味深く拝見していますが、国鉄問題は年来の関心があるので、少しだけ書き込ませていただきます。

民営化でサービスがよくなったというのは本当でしょうか?五十嵐先生は「本州のJRが活性化し、都市部でのサービスが向上したことは否定できません」と述べられますが、都市部においても周遊券や青春18きっぷなどのサービス低下があります。外見としてはキレイな商店街「駅ナカ」ができていますが、これは固定資産税の不正免除と指摘されて追徴課税が決まりました。構内の障害者トイレ整備も法令により「JR」にとってはいわばイヤイヤしているものですし、エレベーター設置や新駅開設も地元自治体負担に依るところが大きいと思います(蕨市長選挙では争点の一つとなりました)。つまりサービス向上とおぼしきものは、「JR」の企業自助努力によるものではないし、民営化せずにもできたことだと思われます。
by 通行人A (2007-10-03 12:08) 

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by モンクレール (2011-08-24 11:39) 

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