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2月15日(金) 米兵による事件再発防止のためには基地を撤去すべきだ [社会]

 出勤の途中、めじろ台の万葉公園を通りました。北側の斜面には、まだ少し凍った雪が残っています。
 ふと、見上げると、梅の木に赤い花がついています。居座る冬に見つからないように、そっと春が忍び寄ってきているように見えました。

 春が近づいてきているというのに、気が重くなるようなことばかりが起きています。「このままでは危ない」と思った岩国市長選挙では、滅多に出さない「緊急アピール」を書きましたが、米軍艦載機の移駐に反対していた現職候補が僅差で負けてしまいました。残念です。
 札束でホッペタをひっぱたいて言うことを聞かせるような政府のやり方です。まるで、時代劇の悪代官そのまままですが、政府のごり押しと市議会からの突き上げで現職候補は板挟みになってしまったのでしょう。
 僅差での勝敗に、岩国市民の苦渋の選択が示されているように思われます。アメリカに義理立てして、このような選択を迫ること自体、大きな誤りです。

 その誤りの大きさを、またも示したのが、沖縄の北谷町で起きた米海兵隊員による中学生暴行事件でした。沖縄の現実は、岩国の明日の姿を示しています。
 米軍艦載機の移駐と基地拡張の受け入れは、このような事件の可能性をも引き受けるということにならざるを得ません。そのことをも覚悟した上での、今回の選択だったのでしょうか。
 沖縄の北谷町には、基地に囲まれた町役場があります。組合のツアーでこの役場を訪れたときの、基地の現状を説明する職員の苦渋に満ちた表情が今でも思い出されます。

 それにしても、沖縄の事件は悲惨で痛ましいものです。そのうえ、この事件についての反応は、情けないと言うしかありません。
 政府や当局者がおざなりの反応であることはいつもの通りです。基地の存在そのものを問題にしないだけでなく、そうすることを避けるための対応を行っています。
 さらに情けないのは、今度の事件は「犬にかまれたようなものだ」とか、「見知らぬ人についていった本人が悪い」、果ては「反基地運動を盛り上げるためのハニートラップだ」などの言説が飛び交っていることです。このような言説が、事件の被害者や家族などをさらに悲しませるだけだということが分からないのでしょうか。

 犯人と被害者を同列に並べて、被害者の方に責任があるとでも言うのでしょうか。見知らぬ人についていっても襲われないような社会を望んではならないのでしょうか。
 外を歩けば、「犬」にかまれるのは当たり前だとでもいうのでしょうか。中学生が、30代の海兵隊員を罠にかけたのだと、本気でそう思っているのでしょうか。
 いずれも、まともな考えの持ち主なら思いつくことさえ困難な言説です。人間の尊厳を失い、米軍のやることに逆らってはならないという植民地根性丸出しの姿と言うしかありません。

 私は、雑誌『経済』3月号の座談会で、「在日米軍の再編を契機にした日米の軍事的一体化と軍事力の強化を阻み、軍事利権を解明すること」を、今年の課題の一つに挙げました。当然、これには沖縄の米軍基地の整理・縮小を含んでいます。
 米軍基地や米軍人が絡んだ事件や事故は、これまで5000件以上も起きているのです。今回のような事件もまた、起きるべくして起きたものだと言わざるを得ません。
 基地がある限り、このような事件は何度でも繰り返されます。「再発防止」のためには、基地そのものを撤去する以外にないのです。

 基地によって守られる「平和」などありません。しかし、基地によって破られる「平和」は確実に存在しています。
 沖縄の人びとの生活に「平和」を取り戻すためには、基地を撤去しなければなりません。それ以外に、このような事件の再発を防ぐ手だてはないのです。

 なお、今週から、研究所の業務である『日本労働年鑑』の執筆・編集作業が始まりました。お陰様で、原稿は順調に集まってきています。
 これから、これらの原稿を読んで手を入れたり、自分の分担部分を書いたりしなければなりません。私にとっては、「繁忙期」の始まりです。

 これまでもブログの執筆はかなり間が開くようになっていますが、これからも飛び飛びになると思います。楽しみにしている方には申し訳ありませんが、業務優先ですので、ご了承いただければ幸いです。


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コメント 3

goose

「アメリカ軍はなぜいまだに沖縄にいるのか?」1997年4月に日本政策研究所のチャルマーズ・ジョンソンさんが書かれたエッセイの題です。
10年たったのに、底無しに悪化していく現状を悲しく思います。琉球新報に翻訳記事が掲載されたとありますが、見つからないので訳してみました。お時間があれば、どうぞ。
by goose (2008-02-16 00:53) 

Teru

>基地の存在そのものを問題にしないだけでなく、
>そうすることを避けるための対応

今回、「実効性のある措置」と称して検討されているのが、
1.基地周辺の繁華街での防犯カメラの設置
2.在日アメリカ軍の憲兵隊による基地の外での定期的なパトロール
であると報じられています。

この1.のカメラは被写体を選ばず、また国が直接運用する可能性もあります。
また、2.の「アメリカ軍の憲兵隊」とは
かつての通称で言えば、占領時代に日本警察以上の立場であった「MP」を指します。

すなわち、運用の主体と手段次第では、
(例えば、今後米兵と日本人の外観をした人物の間で、
揉める様が、これら措置の前で見られた場合、米兵「だけ」
咎められるという事になるのだろうか。)
事件を口実に、反論が難しい行政上の強制処分が
今後更に県民に向けられる結果を拡大する対応に
なる恐れを含んでいると見るべきでしょう。

やはり、今回を成す主従関係(安保条約・地位協定)の立法経緯に明瞭な方向性自体から、方向性を転換し「動かす」必要があると思います。
by Teru (2008-02-16 07:54) 

磯永征司

初めての出会いです。政府、米軍、大方のマスコミは表面的に事を収集しようとして、この大元を問おうとしていません。監視カメラ、よりもよって米軍によるパトロール?ふざけるのも、人を馬鹿にするのもいい加減にしてもらいたいし、そうさせなければならない。おちょくる人は悲しいが、提起されていることに集中して、行動、怒りの声を上げよう。
by 磯永征司 (2008-02-16 17:43) 

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