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3月27日(木) 「2006年の転換」を生み出したのはマスコミと労働運動 [論攷]

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 拙著『労働政策-人間らしく働き、生きるために』、いよいよ4月25日刊行の予定。
 日本経済評論社から2000円(予価)で。予約は、お早めに。
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 H高等学校吹奏楽部の定期演奏会から戻ってきたところです。娘が吹奏楽部に入っていて、ユーフォニウムというあまり馴染みのない楽器を演奏しています。
 朝練だと言って7時前に家を出て、夜練があるときには10時過ぎに帰ってきます。まるで、都心に通うサラリーマンのような生活でしたが、その集大成が今日の定期演奏会でした。

 すごい迫力です。まぶしいほどの若さです。
 青春まっただ中のエネルギーがほとばしるような演奏会でした。100人もの仲間に混じって、演奏する娘の姿がチラリと見えました。
 生き生きとして、楽しそうです。家では見ることのできない表情が、そこにはありました。

 さて、昨日のブログで、「2006年の変化」は、何故、生じたのでしょうか、そしてそれが、2006年に始まったというのは、どうしてでしょうか、との問いを発しました。その問いに答えることにしましょう。
 もちろん、そこには多様なベクトルが働いていたでしょう。しかし、その中でも、かなり大きな作用をしたベクトルについては、特定することができます。
 それは、マスコミと労働運動です。

 先日のMIC(日本マスコミ文化情報労組会議)に招かれて行った春闘決起集会での講演でも、この点を強調してきました。気がついていないかもしれないけれど、情勢を変えたのは、皆さん方なのだと……。
 このMICという団体には、新聞、印刷、放送、出版、映画、広告、音楽、コンピュータ関連の労働組合が加わっています。これらの労働組合に関わっている人々の地道な努力が、情勢を変えたのです。それが集中したのは、2006年のことでした。

 この年の7月23日、NHKスペシャルで「ワーキングプア~働いても働いても豊かになれない」の第1弾が放映されました。この番組が初めて「ワーキングプア」の実態を明らかにし、社会に大きな衝撃を与えたのです。
 その直後、7月31日に、『朝日新聞』が朝刊の一面トップで、「偽装請負 製造業で横行」「実質は派遣、簡単にクビ」という記事を掲載します。これも、「偽装請負」の実態を報じて大きな反響を呼びました。
 さらに、9月11日には、『週刊東洋経済』の年9月16日号が発売されます。この号は「日本版ワーキングプア 働いても貧しい人たち」という特集を行っており、ここで記事を書いた風間直樹さんは、後に、『雇用融解-これが新しい「日本型雇用」なのか』(東洋経済新報社、2007年5月)という本を出しています。

 まだ、あります。格差社会と非正規雇用の問題を告発した新書が、相次いで岩波書店から出されました。
 それは、橘木俊詔さんの『格差社会-何が問題なのか』と中野麻美さんの『労働ダンピング』という岩波新書です。前者は9月に、後者は10月に刊行されています。
 このようななかで登場したのが「労働ビッグバン」であり、なかでも注目を集めたのが、ホワイト・カラーエグゼンプションでした。
 「労働ビッグバン」という言葉が登場するのは、06年10月13日の経済財政諮問会議に民間四議員から提出された「『創造と成長』に向けて」という資料です。ホワイトカラー・エグゼンプションについては、それよりも早く、2005年6月21日に日本経団連が「ホワイトカラーエグゼンプションに関する提言」を発表しました。

 2006年6月に発行された日米投資イニシアチブの報告書の中にも、この構想が登場しています。その後、厚生労働省の労働政策審議会労働条件分科会がその素案を示したため、この問題は急浮上することになります。
 そして、年も押し詰まった12月27日、この制度を盛り込んだ法案要綱が初めて審議会に諮問されました。これに対して、マスコミは一斉に残業代カットを認める「残業代ゼロ法案」だとの報道を行ったのです。
 この頃、私は講演で、次のように話しました。まさに、マスコミ報道のあり方が変化していたのであり、それに導かれるようにして、世論も変わりつつあったのです。

 もう一つあります。自民党労働調査会の復活という記事も報道されています。「労働ビッグバン」に対して、党内からは経済界の論理が強すぎる、働き手に果実を分配するべきだなどの意見が続出したと言います。これもやはり、注目しなければならない動きでしょう。自民党でさえ、こういう状況、今のような労働の規制緩和は経済界の論理が出すぎていると言っているのです。
 さらに、ここに11月24日付の『週刊金曜日』を持ってきました。「ただ働きはもうたくさん! “過労死促進法”の恐怖」という記事が出ています。11月21日付の『夕刊フジ』にも「残業代がなくなる、怒れ、サラリーマン」という記事が出ていました。『日刊ゲンダイ』には、こういう記事はよく出ますが、『夕刊フジ』にはなかなか出ない。「勇敢なフジ」に変わったのかなと思いましたけど(笑)、もっと“勇敢”になってもらいたいものです。
 こういうふうに週刊誌が労働問題を取り上げるということは、久しくなかったことです。しかも、今、紹介したように労働の規制緩和に対する強い危機感を表すような記事になっています。NHKのドキュメンタリーや報道番組でも、今の働き方の問題を提起するような放送が次々になされています。
 世論が変わってきている、ということでしょう。これを的確にとらえて、さらに世論に訴える。そして、労働界、労働運動、労働組合としての共同を進め、統一した力を盛り上げ、世論を味方につけて、ホワイトカラー・エグゼンプションの導入をはねのけていただきたいと思います。

 これは、2006年12月に、生協労連第80回中央委員会〈学習講演会〉での講演で、昨日のブログで紹介した自民党労働調査会の復活、すなわち雇用生活調査会の発足についても触れています。これは、「労働法制の規制緩和と日本の労働者の働き方」という表題で、『季刊生協労連』2007年4月号に掲載されていますので、興味のある方はご覧になって下さい。

 こうして、世論の後押しによって、ホワイトカラー・エグゼンプションは葬り去られるわけです。そのプロセスにおいてマスコミが果たした役割には、極めて大きなものがありました。
 これは偶然だったのでしょうか。恐らく、そうではないと思います。
 新自由主義の負の側面が表面化し、社会や労働のあり方が変わってきたからです。鋭いマスコミ人や研究者、実践家がこの変化を的確に捉えて問題提起を行ったため、結果的に、足並みが揃ったような形になったのではないでしょうか。


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革命21事務局

はじめまして。貴ブログへの突然の書き込みをいたします失礼をお許しください。「運動型新党・革命21」準備会の事務局です。
私どもは、このたび「運動型新党・革命21」の準備会をスタートさせました。この目的は、アメリカを中心とする世界の戦争と経済崩壊、そして日本の自公政権による軍事強化政策と福祉・労働者切り捨て・人権抑圧政策などに抗し、新しい政治潮流を創りだしたいと願ってです。
私たちは、この数十年の左翼間対立の原因を検証し「運動型新党」を多様な意見・異論が共存し、様々なグループ・政治集団が協同できるネットワーク型の「運動型の党」として推進していきたく思っています。
★既存の中央集権主義に替わる民主自治制を組織原理とする運動型党(構成員主権・民主自治制・ラジカル民主主義・公開制の4原則)
この呼びかけは、日本の労働運動の再興・再建を願う、関西生コン・関西管理職ユニオンなどの労働者有志が軸に担っています。ぜひともこの歴史的試みにご賛同・ご参加いただきたく、お願いする次第です。
なお、「運動型新党準備会・呼びかけ」全文は、下記のサイトでご覧になれます。rev@com21.jp

by 革命21事務局 (2008-10-09 14:30) 

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ありのままを受け入れます。
by iPhone 4 ケース (2011-09-23 15:17) 

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