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12月25日(木) 拙著『労働再規制』に対する池田信夫氏の書評への反論(その6) [論攷]

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 拙著『労働再規制-反転の構図を読みとく』(ちくま新書)刊行中。240頁、本体740円+税。
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 12月20日から始めた池田「書評」に対する反論は、今日で終わりです。長々とお付き合いいただきまして、ありがとうございます。
 お陰様で、アクセス数が急増し、皆さんから有益なアドヴァイスやコメントもいただきました。お礼申し上げます。

 第6に、「著者が八代尚宏氏などの経済学者を罵倒する一方で、天下り学者を評価している」と書かれている点についても、反論しておく必要があります。私は、池田さんとは違って、「八代尚宏氏などの経済学者を罵倒」などしていません。
 池田さんは、批判することは「罵倒」することだと思い込まれているようですが、私は批判するに際しても、できるだけ「罵倒」するような態度は避けるべきだと考えています。もし、拙著の中で八代さんなどを「罵倒」しているというのであれば、その部分を具体的に示していただきたいものです。

 反対に、私は八代さんが説明された労働市場改革専門調査会の第1次報告を「極めて注目すべきもの」(172頁)だと評価しています。だからこそ、「八代さん個人が『考えを改め』て『改心』したためでしょうか。それとも、専門調査会による集団的検討から生じた結果なのでしょうか」と問題を投げかけたのです。
 このときに、引用したのが池田さんが「天下り学者」とさげすんでいる濱口桂一郎さんの言葉です。これは、濱口桂一郎「『労働ビッグバン』を解読する」『世界』2007年11月号、から取ったものですが、これについても、そのまま「評価している」わけではありません。
 「八代さんの『改心』については、もう少し、状況を見極める必要があるように思われます」(175頁)と書いているのですから……。

 つまり私は、八代さんを一方的に「罵倒」することも、濱口さんの言をそのまま「評価」して受け入れているわけでもないのです。この辺のニュアンスについてはかなり微妙ですので、私としては注意して書いたつもりだったのですが、池田さんにはそれを読み取るだけの力がなかったようです。
 「中学生なみの知能どうしでお似合いだ」と書かれ、濱口さんと並べて「罵倒」されるのは大変光栄ですが、この程度のことも読み取ることができないなんて、「中学生なみの知能」はどちらの方なのでしょうか。

 私の反論は以上の通りです。「日本の官僚機構は社会主義だからである」など、「相手にするのもあほらしい」記述もありますが、もういいでしょう。
 ここまで私の反論を読まれた方は、これが大学教授の書いた書評なのか、と驚かれたにちがいありません。ネットであれば、何を書いても良いことにはならないということは、池田さんもよくご存知のはずです。それなのに、どうしてこのような曲解と悪意に満ちた文章を書かれたのでしょうか。
 書評をする以上は、少なくとも、相手の主張を正確に読み取ることが最低限の前提のはずです。しかし、池田さんは、拙著を正確に引用することもせず、私の主張をねじ曲げたうえで批判されています。
 批判するためにねじ曲げたのか、主張を正確に読み取るだけの読解力がなかったのか、それは分かりません。しかし、いずれにしても、大変、アンフェアーなもので、書評としては失格です。

 また、どのような批判であっても、人格的な批判や「罵倒」は避け、相手を傷つけないような配慮を行うこと、根拠のないレッテル張りを避けることは、最低限のマナーでしょう。大学の授業やゼミなどで、池田さんは学生にそう教えていないのでしょうか。
 この書評は、これらの適格性を全て欠いています。どのような書評を書いてはならないかを示すための、格好の教材になるでしょう。そのような教材を提供することになった池田さんは、大きな誤りを犯したと思います。
 そのことは、何よりもご本人のために惜しまれます。この一文によって、これまで積み重ねてきた研究者としての実績や評価に大きな汚点を残すことになったからです。そしてそれは、せっかく築き上げた研究者としての信用を一気に崩すことになりかねない大きな汚点かもしれません。

 いずれにしましても、私が理解できないのは、何故、池田さんが誤読までして、拙著『労働再規制』を批判しなければならなかったのかということです。普通、「こんな本、読んじゃダメ」という場合、中身に問題があるから読むべきではない、というのが普通でしょう。
 しかし、今回の場合、批判されている部分はほとんど誤読によるもので、しかも、根拠もなく「社会主義者」のレッテルを貼って、予断と偏見を与えようとしています。何としても読ませたくないという気持ちが先にあって、本や著者のあら探しをし、見当違いの「罵倒」を投げつけるという形になっています。
 ところが、私は池田さんを知らず、このような形で「恨み」を買う覚えはまったくありません。それなのに何故、「読んじゃダメ」と仰りたかったのでしょうか。

 「文は人なり」と申します。書かれている文章を読めば、その人がどういう人か、およその見当がつきます。
 最初に紹介しましたように、池田さんの文章には、「内容は読まなくてもわかる」「二次情報の切り貼り」「高校レベルの経済学も理解できない」「相手にするのもあほらしい」「まったく売れていないから、幸い影響力もないだろう」「中学生なみの知能どうしでお似合いだ」など、およそアカデミズムの世界の住人とは思えないような言葉が並んでいます。
 これもまた、私には理解できないことです。どうして、研究者としての節度を越えて、このような「品格」に欠ける汚い文章を書かれたのでしょうか。ご自分の内面と無知が露呈され、評判が悪くなるというリスクを冒してまで……。

 ということで、ほぼ1週間にわたって、池田さんの「書評」(「反書評」)に対してまじめに反論させていただきました。「読んではいけない:Anti-Book Reviews」http://www003.upp.so-net.ne.jp/ikeda/ikenai.htmlによれば、池田さんは「『週刊ダイヤモンド』で書評を担当して、足かけ10年」だそうです。
 それなのに、どうしてこのような個人攻撃に満ちた稚拙で乱暴な「書評」をされるのでしょうか。私には、依然として謎です。

 池田さんは、「意外なことに、怒りや抗議はほとんどなく、『溜飲が下がった』『内容は意外に常識的だが、学界の大家にこんなことを言って大丈夫か』という反響がほとんどだった」と書かれています。
 私は明確に「怒り」を感じ、「抗議」しました。この反論を始めるに際しても、ご本人にメールを送り、正々堂々、公明正大に反論する旨、伝えてあります。池田さんからの反応はないようですが……。

 「おもての書評は、仕事なのでちゃんと読んでいるが、こっちはもともと読むに値しない(というか最後まで読むに耐えない)本なので、ちゃんと読んでない。ほとんどの本は、身の回りにあるのも不愉快なので捨ててしまったし、立ち読みもある。まぁその程度の本だということで、基本的に冗談なので、内容に責任はもたない」とも書いていますので、まじめに反論する方が愚かだということかもしれません。
 「基本的に冗談なので、内容に責任はもたない」ようなものはウェッブで公表するべきではないと、池田さんは考えないのでしょうか。それがウェッブ社会でのネチケットであるというふうには……。

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コメント 9

ねこ

紙屋研究所を見て、『労働再規制』を購入し読みました。
財と学が結託して、日本を動かした仕組みを面白く解き明かしていて、
面白く、勉強なりました。
先生の予測どおり、規制改革会議の第3次答申が死に体になっていて、
納得しました。

このような審議会や財界のやり方は部外者には見えにくく、
私の希望は、なぜ派遣法がこうなってしまったのか、
マンパワーの汚職事件や派遣業界と労働省幹部のつながりなど、
先生に解き明かしていただけたらと思います。

by ねこ (2008-12-25 07:35) 

元左

あまりにも反論が冗長で退屈です。要点を整理してください。読ませる文章になってない。それから表面的な言葉の問題はいいから本質的な問題に答えてください。たとえば下の記事の見解に反論してほしいです。「労働者はひとつ」といった嘘はやめてほしい。正社員と派遣の利害は対立関係にあります。派遣や非正規の側に立つような口ぶりで正社員の既得権益を擁護している終身雇用の左派系学者には反吐がでます 博士号もなく、紀要に感想文程度の論文しか書いてない連中が、大量の若い博士号取得者をクラウドアウトしている。あなたは、彼らを救うために、自らの特権のほんの一部でも差し出したことがありますか??

http://www.j-cast.com/2008/12/20032296.html
働かない中高年リッチ解雇せよ 「正社員」保護しすぎ論が台頭




by 元左 (2008-12-26 01:20) 

NO NAME

>書評をする以上は、少なくとも、相手の主張を正確に読み取ることが最低限の前提のはずです。しかし、池田さんは、拙著を正確に引用することもせず、私の主張をねじ曲げたうえで批判されています。

あなた自身は、きちんと池田さんの「読んではいけない」を読んだのでしょうか?そこには、こう書かれていますけれども。
http://www003.upp.so-net.ne.jp/ikeda/ikenai.html
>「書評ではなく人物評ではないか」という指摘もあったが、これは当たっている。おもての書評は、仕事なのでちゃんと読んでいるが、こっちはもともと読むに値しない(というか最後まで読むに耐えない)本なので、ちゃんと読んでない。

by NO NAME (2009-01-03 01:49) 

NO NAME

>あなた自身は、きちんと池田さんの「読んではいけない」を読んだのでしょ>うか?そこには、こう書かれていますけれども。
、、、、、、、なんともいえない。意味不明です。

by NO NAME (2009-01-05 18:33) 

akira

> こう書かれていますけれども。
と仰られても、こういう姿勢こそが池田氏が批判を招く点なのではないですか?これこそが、濱口氏の言う「事実の軽悔」でしょう。

今回の議論でどちらが優勢であるかは、五十嵐氏の本を読んでいないので、私は分かりません。しかし、研究者として知を扱う者として他者の業績を批判するときは、まず謙虚になり、それをきちんと理解し吟味すべきでしょう。その上で、納得いかないなら批判すればいいのです。的外れの批判を書き散らしておいて、読むに値しないからそれで良いんだと開き直る、というその姿勢だけでも、池田氏は批判に値すると思いますよ。
by akira (2009-01-07 11:38) 

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