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9月6日(日) 比例代表区での民意は何を示していたのか [選挙]

 昨日のブログで、私は「民主党は、比例代表区の定員削減ではなく、小選挙区制を廃止して比例代表的な選挙制度の導入を検討するべきでしょう」と書きました。それでは、比例代表的な制度だったら、民意は何を示していたのでしょうか。
 今回の選挙での比例代表区の結果を参考に、この点を考えてみたいと思います。

 今回の選挙で、比例代表区での得票は次のようになっていました。

自民党      26.7
公明党      11.5
民主党      42.4
社民党      4.3
国民新党     1.7
日本新党     0.8
共産党      7.0
みんなの党   4.3
諸派・無所属  1.4

 これがそのまま議席率を表すとすれば、各党の議席はこの割合で分配されます。一応、参考までに議席数を掲げておきましょう。

自民党      128
公明党      55
民主党      204
社民党      20
国民新党     8
日本新党     3
共産党      34
みんなの党   20
諸派・無所属  7

 一見して、今回のような極端な議席変動が生じなかったことが分かります。自民党は10議席ほど増え、民主党は100議席ほど減っています。
 小選挙区で惨敗した公明党は55議席となって2倍以上の議席を獲得し、小選挙区でゼロだった共産党も34議席を得ることになります。民主党と連立するとされている社民党は20議席で、国民新党は8議席になっています。
 みんなの党も20議席、日本新党は3議席、諸派・無所属は7議席です。第一党である民主党の獲得議席が減り、その分、少数政党が議席を軒並み増やすことになりました。

 比例代表区が示している政党制は、民主党中心の多党制なのです。これは多様化した国民の政治的意見の反映にほかならず、「一党優位政党制」でも「二大政党制」でもありません。
 このことから、民意が選択しているのは、実は「多党制」だったということが分かります。選挙制度を比例代表制に変えれば、直ちに日本の政党制を変えることができるというわけです。
 それを、欠陥だらけの選挙制度によって、無理矢理、別の政党制に押し込んでしまったのが現在の姿なのです。「多党制」的な状況こそが現実(リアル)なのであり、「一党優位政党制」もしくは「二大政党制」は制度によって作り出された虚構(フィクション)にすぎません。

 「いや、小選挙区制は政権交代を実現するための制度だったんだ。だから、今回、政権交代が実現したんだ」という反論があるかもしれません。これについてはどうでしょうか。
 旧与党の自民党は128議席で公明党は55議席、合わせて183議席ですから、与党は過半数を失います。つまり、小選挙区制でなくても、比例代表制であっても政権交代は実現していました。
 新与党はどうなるでしょうか。民主党204議席、社民党20議席、国民新党8議席で、合計232議席になります。過半数の241議席には9議席足りません。

 ここでキャスチングボートを握るのが、共産党の34議席とみんなの党の20議席です。共産党が閣外協力すれば、新与党は266議席となって過半数を超えます。
 もし、共産党が閣外協力しなくても、みんなの党が協力すれば252議席となり、やはり過半数を超えることができます。これに日本新党の3議席が加われば、与党の数はさらに多くなります。
 つまり、小選挙区制でなくても政権交代は可能だったのです。それは連立政権にならざるを得ませんが、かえって民主党の独走などを心配する必要はなくなり、まして「小沢独裁」などは起こりようがありません。

 多様化した国民意識に対応した多党制的状況を、そのまま国会の議席配分に生かすべきではないでしょうか。特定の大政党の独走によって国政を専断するというような事態を避け、合意と協調によって政治を運営するためにも、現在の選挙制度を改め、比例代表的な制度に変更すべきだと思われますが、いかがでしょうか。

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コメント 5

わっきー

日ごろ何か旨いもの食いたいっていろいろ意見は持っていても、結局食うのはスタンダードなものを食ってしまう、っていう保守的な国民性があるから、こういう事で正しいと思う。
本当に公正な選挙というなら、全てを全国区で得票順に議員を決めたら良いのであって、そうならないのは、地元の利益を国政に反映させるという事があるから今の選挙制度になっている。それで別に公正なものと私は思う。
比例区での不可思議な話は、単に民主党のリスト作成を失敗しただけの事で、小選挙区で当選できたのに比例区でも上位にリストアップされている人の名前がソンをした原因であって、比例区対策ができていなかっただけのことでしょ?
それでも安定多数を取っているのだから、さっさと公約を実現する動きに出ないと、すぐ年末やってきます。連立調整が遅い遅い。空白を生んでしまってはいけませんね。国の運営は遊びじゃないんですから。
by わっきー (2009-09-06 17:37) 

いわきとおる

 小生は小選挙区制が強行されたとき、鉄砲を使わないクーデターに等しいと思ったものです。民主主義には選挙制度が不可欠だとしても、選挙制度があれば民主主義だとはいえないからです。それは64年前の日本を思い出すだけでいいでしょう。
 直接民主制で、全員集まって話し合う場合と違い、間接民主制で話し合うとすれば、その代表は皆の意見を代表した人が意見に比例して参加しなければおかしいわけで、民意を反映して初めて民主主義とか主権在民といえると思います。
 人工的に作り変えられた擬似代表によって物事がきめられる制度は、民主主義とは本来的に無縁でしょう。マスコミは小選挙制を導入する時、比例制は民意を反映し、小選挙区制は民意を集約するのでこの並立はよいことだと、自画自賛(自らも審議会の参加)し世論形成に力を入れていたのを思い出します。民意の集約という言葉は作為的な使用法で、それは議席の人為的集約でしか無かった訳です。
 「わっきー氏」の「こういう事で正しいと思う」とか「公正なものと私は思う」というコメント、現実を皮肉って言っているのだとすれば多少は理解出来なくも無いのですが・・・
 古いかも知れませんが、戦後「あたらしい憲法の話」を学んだ中学1年の時以来、軍国少年のマインドコントロールから脱し、民主主義の大切さを身にしみて大事にしてきました。ご活躍を期待しています。  tetu.
by いわきとおる (2009-09-07 12:15) 

小市民

 そもそも”小選挙区制”を導入したとき、与党はなんと言って
行ったのかを、思い出すべきだと思います。
「中選挙区制は金がかかる。これならお金がかからない」
といっていたではありませんでしたか?
果たして今、選挙にかかる費用が減ったのでしょうか?

 民主主義の基本は”多数決”だといいます。
けれどその基本にあるべきなのは”少数意見にも十分に考慮して”
物事を決することであり、期間があるからそれまでは議論しましょう、
ではないことは明白です。社会の授業で習いませんでしたか?

 小選挙区制は政権交代が起こりやすい制度です。
その結果が”少数政党”状態を招きます。
”二大政党制”をマスコミ(および政治家)は、
さも理想の制度のように吹聴しますが、
何がメリットで何がデメリットなのか
本当に皆さんわかっているのでしょうか?
ちなみに私の周りには説明できる人が皆無です。
ここは議院内閣制の日本であり、大統領制のアメリカでは
ないことを十分に認識した上で、”二大政党制”を
考える必要があると思いますがいかがでしょうか?

 考えさせていただけるお話にいつも感謝しています。
ご健康を祈ります。
by 小市民 (2009-09-07 12:34) 

与太郎

小選挙区制は、1票の格差を生じさせ(選挙区間格差に支持政党間格差も加わる!)有権者の参政権の平等を著しく損なう非民主的な制度です。
この欠陥は、他の選挙制度における欠陥とも質的に異なり、選挙制度としての基本要件を欠落させた重大欠陥でしょう。
サッチャリズム、レーガノミクスに2周遅れて新自由主義が導入された政治後進国・日本に相応しい制度なのかもしれませんが・・・
こんな制度を受容している日本国民は、21世紀も先進諸国民のお尻にくっついてトボトボ歩いていくしかないような三流政治国民なのでしょうか?



by 与太郎 (2009-09-07 15:16) 

ワタリガラス

政党別の投票結果のみから、小選挙区は民主的ではないという結果を導き出すのはずいぶんと乱暴なやり方だと思います。多様な考え方があるから多様な政党を政権に参加させるというのは、逆に言うと政策決定がそれだけ遅れるということになりはしませんか?
また、政治家ではなく政党に投票するというと、どんな国会議員が出てくるかさっぱりわからない。あるいは、政党の実力者が子供や孫を次から次へと議員にして、簡単に世襲できてしまう。そんなデメリットもあるのでないのでしょうか?
比較考量もしない論調はずいぶんと乱暴ですね。
by ワタリガラス (2009-09-15 12:36) 

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