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10月15日(木) 外交・安全保障政策でも根本的な転換を [国際]

 鳩山新政権の新基軸が続いています。「変わること」は、これまでの政権を拒絶した国民の望むところであり、基本的に、新政権の方向性はこのような望みに添うものだと言えるでしょう。
 もちろんそれは、「基本的に」ということであって、具体的な施策の進め方では問題が生じたり、ギクシャクすることもあるようですが……。

 このようななかで注目されているのが、外交・安全保障政策です。とりわけ、来月12~13日、オバマ大統領が初めて日本にやってきますから、ここでの鳩山新政権の対米交渉が重要な意味を持つことになるでしょう。
 一方で、「日米同盟の強化」というこれまでの枠組みを維持する選択肢はありません。自公政権が総選挙で敗れた時点で、このような選択肢は国民によって拒否されました。
 他方で、日米間の関係の悪化を招くような選択肢も避けなければなりません。アメリカとの友好関係の維持は、日本の外交・安全保障にとって大きな意味を持つことは否定できないからです。

 鳩山新政権の外交・安全保障政策の基本線は、この両方の選択肢の間に引かれる必要があります。これまでの枠組みにとらわれず、同時に、日米関係の悪化を招かないような選択です。
 そのためには、妥協や譲歩が必要になることもあるでしょう。しかし、だからといって、最初から譲歩していたのでは交渉になりません。
 これまでの自公政権は、この点で大きな過ちを犯していました。「ご無理ごもっとも」と相手の言うがままに受け入れ付き従っていくことが外交であり、同盟関係だと勘違いしていたからです。

 外交とは、独自の対外政策を持つ国同士が、それぞれの国の立場に立って交渉することです。そのためには、まず、独自の政策を持たなければなりません。
 その政策を相手に伝えるところから交渉が始まります。独自の方針がなければ、交渉にはなりません。
 これまでの自公政権には、このような意味での独自政策がありませんでした。したがって、交渉することもなく、外交は不在だったといって良いでしょう。

 オバマ大統領との会談に向けて、鳩山首相は日本独自の対外政策を確立しなければなりません。とりわけ懸案となっているのは、核問題、インド洋での給油、沖縄の普天間基地移転問題です。
 これらの問題について、どのような方針を打ち出すべきなのでしょうか。私の意見を述べさせていただきます。

 まず、核政策です。オバマ大統領のプラハ演説と国連安保理首脳会合での「核全廃決議」に従い、核廃絶に向けての具体的な道筋について提案し、合意する必要があるでしょう。
 一方で、核廃絶枝を目指そうとする日本が、他方で、アメリカと核問題での密約をむすび「核の傘」に守られているというのでは、全く説得力がありません。日本は、これまでの「核の傘」を閉じて、代わりに「非核の傘」を提唱するべきです。
 そのためには、アメリカの核兵器の持ち込みをきっぱりと拒絶し、改めて「非核3原則」の堅持を確認する必要があります。同時に、北朝鮮の核開発をストップさせ、中国に対しても核兵器の放棄を迫り、東アジアの非核地帯化を目指すべきです。

 次に、インド洋での給油問題です。訪米中の長島昭久防衛政務官はジョーンズ米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)やマレン統合参謀本部議長らに海上自衛隊の艦船を来年一月に撤収させる方針を伝え、ジョーンズ補佐官らは「基本的には日本政府が判断する問題だ」との態度を示しています。当然でしょう。
 アフガンは「オバマのベトナム」「オバマのイラク」になる可能性があります。軍事的介入を止めてアフガニスタンから米軍を引き上げ、民生支援に重点を移すよう、鳩山さんはオバマさんに忠告するべきでしょう。
 「日本は海上自衛隊の部隊を引き上げるから、アメリカもアフガニスタンから軍隊を引き上げたらどうか」と、オバマさんに言ったらどうでしょうか。このような忠告によってアフガンの窮地からオバマさんを救い出すことこそ、本当の「友人」なのではないでしょうか。

 第3に、沖縄の普天間基地の移転問題があります。辺野古沖への移転の是非が問題になっていますが、私は大反対です。
 このような移転によって貴重な自然が破壊されるだけでなく、工事が終了して新しい滑走路ができる頃には、そのような基地そのものが不必要になっている可能性が高いからです。不要なもののために、かけがえのない自然を破壊するような愚を犯してはなりません。
 というよりも、日本の安全保障を考えた場合、沖縄の基地や在日米軍基地が不必要になるような国際環境を生み出すことこそ、新政権が目指すべき方向でしょう。一方で、基地が必要なくなるような国際環境を目指し、他方で、新しい基地を作るなどという政策が、合理的な選択であるとは思われません。

 それではどうするのか。基地を撤去し、閉鎖すればよいのです。
 県内での移設や統合では、沖縄における基地の密集という問題は解決しません。沖縄の基地を少しでも減らすような解決策こそが、目指されるべきものです。県外移設と言った場合、それではどこに持っていくのか、という新たな問題が生じます。沖縄の基地負担を他の県に押し付けることになり、在日米軍基地の整理・縮小という方向にも反することになりますから、このような方針も取るべきではありません。
 唯一の解決策は、普天間基地を閉鎖することです。そこに駐屯している部隊は、アメリカ国内に引き上げてもらえばよいのです。

 そもそも、クリントン政権時代にトランスフォーメーションという世界的な規模での米軍基地の整理・縮小方針が出されたのは、国際情勢の変化、軍事技術や輸送手段の能力の向上などによって、紛争地に近い海外の基地に部隊を配置しておく必要がなくなったからです。韓国からも米軍部隊の一部は引き上げ、日本の基地も縮小される方向にあります。
 自公政権は、これに抵抗しました。アメリカ軍に「引き上げるのではなく、居て欲しい」というのが自公政権の態度だったのです。
 ことし4月初旬、米軍三沢基地に配備しているF16戦闘機約40機すべてを早ければ年内から撤収させ、米軍嘉手納基地のF15戦闘機50機余りの一部を削減する構想が日本側に打診されました、しかし、自公政府が難色を示したため、この構想は保留になっているそうです。

 鳩山さんはオバマさんに、「米軍基地を撤去して欲しい」「日米地位協定を改定したい」「『思いやり予算』は止めたい」というべきでしょう。それがスンナリ受け入れられる可能性は低いかもしれませんが、そのような国民の思いを、日本の政府としてアメリカに伝えることから、交渉は始まるのです。
 お互いの率直な思いを伝え合うところから、互いの譲歩や妥協が生まれます。日本は独立国なのですから、そのような思いを伝えることに何の遠慮もいらないと思うのですが、いかがでしょうか。

 なお、昨日、UNハウス(国連大学校)のエリザベスローズ・ホールで開かれた第22回国際労働問題シンポジウム「経済金融危機と雇用問題:世界雇用危機にどう立ち向かうのか?」には、100人を超える沢山の方にご出席いただき、充実した報告と討論がなされました。ご出席下さった皆さん、パネラーの方々に感謝いたします。
 今週末の10月17日(土)、18日(日)の2日間、松川資料室のある福島大学を会場に「松川事件60周年記念全国集会」http://matukawa60.com/annai.htmlが開催されます。大原社会問題研究所に松川事件の裁判資料が保存されている関係で、私もこの集会に参加します。
 とは言いましても、翌18日(日)の午後には、POSSE主催のシンポジウムも予定されていますので、東京に戻って来なければなりません。二日目の催しに出られないのは残念です。
 NPO法人POSSE設立3周年記念シンポジウム「若者の労働とセーフティネットを考える」は、東京ウイメンズプラザで午後2時半から開催され、初めに私の講演、次に「ガテン系連帯」共同代表の池田一慶さん、朝日新聞記者の竹信三恵子さんが講演されます。興味・関心のある方にご参加いただければ幸いです。

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林 俊成

五十嵐先生、いつも読ませて頂いております。視野が広くなるように思え、感謝しております。
鳩山首相がオバマ大統領に先生のご指摘の3項目を率直に述べられることを、私も希望します。しかし、鳩山首相は「日米関係の強化」ではなく、「日米同盟の強化」と述べられました。それも、「日米同盟」を規定することもなく述べられたので、どうなのかと思ってしまっております。「日米同盟」は2005年の「日米同盟:未来のための変革と再編」を指すのが、私は常識と思っていますので、これを強化するのかと今でも不安に思っております。
単に言葉の問題かも知れませんが、首相と言う立場なら、厳格に使用すべきと思いますが、如何でしょうか。
外交・安全保障でも、良い意味で政権交代を実感させてくれることを願うばかりです。   
by 林 俊成 (2009-10-16 00:32) 

さとし

はじめましてです。
米軍縮小は誰もが思ってることだと思いますが、我々はもっと声を上げなければならないと思いますし、それには合理的な戦略を考えねばならないと思います。
それには政治家が己の強みと弱点を知り、又相手のことも知ることです。
我々もその辺を考慮に入れて鳩山新政権を育てていかなければなりません。何があっても絶対に政権を自民党に渡してはならない。渡したら日本の最後だと覚悟して懸からねばと思います。
まだまだ日本人の意識は低い。私は自民党政権を日本版チャウセスク政権だと考えてきましたから私と一般国民との意識のズレも相当です。
まずできること、それはやはりマスコミ改革です。これができなければ私たちに未来はありません。
少々話がズレましたが、まずそれをやることが民主主義の原点だと思います。
我々で変えていきましょう。
by さとし (2009-10-18 18:12) 

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