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11月9日(月) 「反転」へのとば口に立つ民主主義-政権交代後の課題とは何か(中) [論攷]

〔以下の論攷は、2009年9月24日にアジア記者クラブの定例会で行われた講演のテープを起こしたものです。かなり長いので、3回に分けてアップし、最初のリードと最後の質疑応答は省略させていただきます。〕

「反転」へのとば口に立つ民主主義-政権交代後の課題とは何か(中)

■ 生きる希望を失う国

 こういう形で政権交代は実現したが、しょせん民主党と自民党はあまり変わらない、どっちもどっちだという見方がある。よく言われるのが「カレーライスとライスカレーの違い」にすぎないと。ちょっと見は違うが食べてみれば同じ、第一保守と第二保守で中身はほとんど変わらないというわけだ。それは当たっている面もあるが、同時に、重要な違いもあると、私は思っている。どこが違うかというと、自民党カレーライスは腐っていたということだ。たとえ味は同じでも、腐っているか腐っていないかは大違いだ。腐っているカレーを食べ続けたら死んでしまう。
 自民党カレーライスを食べ続け、「もうこれでは生きていけない」と自ら命を絶った人が11年連続で毎年3万人以上になる。こんな国がいったいどこにあるのか。生きる希望を失うような国民がこんなにたくさんいる、そういう国にしたのが自民党だったのだ。生活が成り立たない、生きていけない。「おにぎり食べたい」と書いて、生活保護が認められずに死んだ北九州の青年がいた。こういう社会にしたのが自民党だ。選挙でペナルティを与えられるのは当然ではないか。

■ 「反転」の潮目

 私は拙著『労働再規制』で、「反転」ということを書いた。2006年から潮目が変わったと主張している。労働政策を調べていて、どうもこの辺から状況が変わったのではないかと思い、こう主張し始めた。「反転」していると感じたとき、「これで日本は助かる」と思った。規制緩和だ、民営化だ、構造改革だという言説や政策がまん延したとき、これじゃもう駄目だと思ったが、潮目の変化を感じたとき、「これは何とかなるかもしれない」と思った。それでいろいろと調べたら、その後どんどん変わってきている。その「反転」の行き着いた先が、今回の総選挙だったと思う。
 今日の演題は「反転のとば口」となっているが、「とば口」どころか大きく「反転」したと思う。危ないところで、日本は助かるかもしれない。新しい政治をつくる可能性をやっと手に入れることができたから。民主党には、政策転換によって「カレー」の中身を変えようとする意欲、不味ければ中身を取り換える柔軟性がある。世論への応答性、フレキシビリティが自公政権とまったく違う。前原誠司国土交通相が八ツ場ダム問題で現場に行って話をしたり、赤松広隆農水大臣が築地市場の移転問題で現場に行って意見を聞いている。これまでは、反対運動の人たちが役所に押し掛けて、大臣に「話を聞いてくれ」「現場に来い」と求めたものだが、今は大臣が現場に行って「話を聞かせてくれ」と、逆になっている。政治のベクトルが変わったということだ。
 ただし、変え切れなかった部分もある。継続性の象徴としての鳩山首相という問題がある。エスタブリッシュメント内のエリートの交代ということであり、この辺は残念に思うところだ。庶民から出てきたたたき上げの、アメリカでいえばオバマさんのような人が望ましかった。ボランティア活動の経験があったり、社会的な運動の経験を持っている人が政権のトップになれば、本当に政治は変わったということになる。しかし、鳩山さんはそういう人ではない。所有する株式の時価が61億円、総資産額90億円だと言われているが、本当はいくらになるか分からないくらいの財産を持っている。
 同時に、このようなエスタブリッシュメント内のエリートの交代で、それまでの政権とある種の共通性があったから、安心して変化が起きたと言えるかもしれない。統治における継続と変化は、バランスをうまく取る必要があるからだ。あまりにも大きく変わると、国民は心配になってしまう。転換というのは、希望と同時に不安も生まれるもので、それほど大きく変わらないからこそ変化を受け入れることができたのかもしれない。今回、鳩山内閣の支持率はだいたい7割台ということだが、高い支持率はある種の変化への期待と、極端に変わらないだろうということへの安心感の両方があるのではないか。

■ 時代遅れとなった反共主義と開発主義

 自民党長期政権はなぜ崩壊したか。簡単に言えば、支えていた「つっかい棒」がもはや機能しなくなったからだ。「つっかい棒」は二つあって、一つは反共主義、もう一つは開発主義だ。反共主義は西側自由主義陣営の一員だったということ。自民党にいろいろ問題があっても「自由社会を守る」ことの方が大切だと、国民は長い間そう思わされてきた。だから、自民党の問題点は大目に見られてきた。しかし、これは昔のことだ。ところが、何を勘違いしたか、今回の選挙でも自民党は日教組に乗っ取られるとか言い出した。昔ならそれなりの効果があったかもしれないが、今では全然効かない。こういう反共イデオロギーが効力を発揮するような国際環境は大きく変容してしまったのに、それに気がついていないのだろうか。
 これは今回の選挙の失敗の一つの要因だ。このように、反共イデオロギーは基本的に弱体化した。確かに、その後も「一国平和主義」批判や北朝鮮による拉致と核の問題、靖国参拝への批判や歴史認識の問題などを契機にナショナリズムが高まる局面もあったが、ソ連、東欧が崩壊した時点で、このような反共主義の体制維持的効力は基本的に失われたと言って良いだろう。
 このような反共主義を担っていたのが保守傍流右派と言われる旧福田派と旧中曽根派、内閣でいうと、森、小泉、安倍、福田、麻生政権が、これに当たる。多少の色合いや強弱の違いはあるが、その中でもイデオロギー色が最も強かったのは、安倍政権だった。
 開発主義も、自民党に多少問題があっても収入が増えて生活が豊かになればそれで良いという意識を生み出した。高度経済成長正統性というか、生活が豊かになれば自民党が腐敗・堕落しても大目に見てやればいいじゃないかという気分が生まれていた。これを担ったのが保守本流と呼ばれる旧田中派と大平派で、竹下、宮沢、小渕政権がそうだった。しかし、これも基本的に弱体化した。欧米先進国へのキャッチ・アップ(追いつき)の終了と多国籍企業化、日米貿易摩擦、バブル経済の崩壊などによってどんどん弱まっていった。

■ 自民党支配の“終わりの終わり”

 開発主義の構成要素の一つは、政界と財界・業界団体や官界による支配のシステム、つまり、政あるいは「族議員」、官・財(業界団体)による「鉄のトライアングル」であり、これの体制が保守政権を支えてきた。2番目が企業社会による統合で、3番目が農村社会への利益分配ということになる。しかし、こういう構造が時代に合わなくなってしまった。したがって、本来であるなら、自民党政治は森政権で終わっていたはずだ。
 反共主義はソ連・東欧の崩壊や湾岸戦争あたりまでで力を失っている。開発主義もバブルの崩壊あたりで物質的・客観的な基盤を弱体化させてしまった。それが、細川連立政権が登場した背景の一つだったが、様々な延命措置によって自民党政治は生き延びてきた。それが限界に達したのが森政権だった。そこで、新自由主義的な構造改革を掲げて登場したのが小泉首相だった。この時、自民党支配の“終わり”が始まったのだ。そして今回の選挙で自民党支配の“終わり”が終わった。
 小泉マジックと構造改革によって、自民党はぶっ壊された。小泉さんは一時的に“カンフル剤”を打ち、痛み止めによって苦痛は和らいだかもしれないが、“ガン”の進行そのものは早まったのではないか。構造改革の名の下に、労働の劣化、貧困化と格差の拡大による経済と社会の破壊が生じた。農村、中小企業、高齢者、業界団体など、自民党の従来の社会的支持基盤の崩壊も進んだ。ということで、自民党のオウン・ゴールが今回の選挙の結果だった。構造的敗北としての深刻さがここにはある。今回の選挙の結果は、一時的なものではなく、構造的・長期的なものであると言うべきではないか。自民党の統治そのものが拒絶されたのだ。民主党の勝利は、個々の政策が支持されたというよりも、新しい政治を求める国民の渇望と期待によるものだったと言える。

■ ネオコンとリベラル

 今の自民党には、二つの分岐が残っている 一つはネオコン対リベラル。もう一つはネオリベ対保守再建派で、このような分岐がどのような形で解消され、解決されるのか。あるいは、それが別党路線という形で分裂に結びつくのかが一つの注目点になる。現在、総裁選挙を実施していて、河野太郎、西村康稔、谷垣禎一の3人が立候補している。河野、西村さんはどちらかというとネオコンに近く改憲派。谷垣さんは比較的リベラル派だと言ってよい。河野さんはネオリベ派で、構造改革が失敗したのではなく不十分だった、もっと改革を進めるべきだという言い方をしている。谷垣さんは保守再建派。昔の在り方を復活させるべきだと言っている。西村さんはその中間で、小泉改革路線の問題点を指摘するが、谷垣さんほど古いものが良いとは言っていない。
 3人3様だが、新しい自民党のリーダーが谷垣さんほどの見識があり、河野さんほどのエネルギーがあり、西村さんほどのルックスがあれば、再建の芽が出てくるかもしれないが、今はばらばらの状態。谷垣さんには新しさがないしエネルギーももう一つだ。小泉さんが辞めたときに「麻垣康三」と呼ばれた4人の後継者候補のうちの最後の1人だ。結局、安倍、福田、麻生ときて、その後では何の新しさも感じられない。谷垣さんが最後に残ってしまったところに自民党の限界がある。むしろ、最初に谷垣さんが出てきて3年ぐらい政権を担っていれば、もうちょっと違ったのではないか。しかし、最もどうしようもない安倍さんが最初に政権に就いた。次に、少しはましだけどエネルギーもやる気もなさそうな福田さんが出てきて、最後に、漢字も読めない麻生さんだった。今後、自民党が党勢を回復して挽回するのはむずかしいだろう。
 今回の惨敗は自民党のオウン・ゴールだと言ったが、「味方のゴールに点を入れた責任者出てこい」と言われたら出てくるべき人が、みんな選挙で残ってしまった。残ってはいけない人が残って、再建に取り組むべき若手がどんどん落選してしまった。新人議員は5人しかいない。再選されたのは10人。これに対して、3年生、4年生、5年生はごろごろいる。新入生が少なく、上級生ばかりの山奥の小学校のような状態。河野さんや西村さんが、もし総裁になったとしても大変だろう。

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