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3月28日(月) 「防災国家」の実現に生かされるべきだった憲法9条の含意 [災害]

 昨日のブログで記事を引用した『毎日新聞』には、一面の下に「余録」というコラムがあります。昨日の「余録」は、アポロ13号の「成功した失敗」を例に、「失敗」について書いていました。
 そのなかに、次のような一文があります。

 ありえないはずの重大な事故を招いた原発や、想定を超す津波で壊れた防波堤、援助の遅れで命を落とすお年寄り。東日本を襲った大地震ではあまたの「失敗」が連鎖した。

 その通りです。
 同時に、これにもう一つ付け加えたい「失敗」があります。戦後日本が犯したもっとも大きな「失敗」だったと言えるかもしれません。
 それは、憲法9条の重大な含意を見落としていたということです。非武装と戦争放棄を国是とすることによって実現可能であった筈の、もう一つの国のかたちを作りそこねてしまったということです。
 この「失敗」は、今回の東日本大震災によって、極めて明瞭に示されることになりました。それは「防災国家」や「レスキュー国家」という、日本ににふさわしい国の形を実現できなかったということです。

 非武装と戦争放棄によって生じた余力と資源を、「防災国家」や「レスキュー国家」の実現のために使いなさいというのが、憲法9条の含意だったのではないでしょうか。本当であれば、10万から20万の国際緊急救助隊が誕生していなければならなかったのです。憲法9条を正しく生かしていたならば……。
 それなのに、自衛隊を作ってしまいました。救助隊ではなく、軍隊を復活させてしまったのです。
 このような軍隊が戦後の国際情勢の下では全く不必要であったことは、もはや明らかでしょう。できてから半世紀以上も経つのに、軍隊として戦争したことは一度もないのですから……。

 いや、自衛隊は災害救助にも役立ったではないか、現に今も東日本大震災での救助・救援に役立っているではないかと、仰る方がおられるかもしれません。その通りです。
 今日の『東京新聞』の社説「災害派遣をより本格的に-自衛隊と大震災」によれば、「被災地に派遣されている自衛官は約10万6千人、航空機約530機、艦艇約50隻」だそうです。そのこと自体は、評価されるべきことでしょう。
 しかし、自衛隊員は全部で23万人います。動員されていない隊員や航空機、艦船などの装備の方がずっと多いのです。

 今回の出動も、もっと早く、もっと多く、もっと効率的に行うことができていれば、もっと多くの人を救い、もっと効果的な救助・救援ができたにちがいありません。自衛隊が、戦争ではなく災害への防衛を主たる任務とする部隊であったなら、直ちに、最大限の人員と機材を動員して、全力で救助活動に当たることができたはずです。
 軍隊では、そうはいきません。「約22万9000人いる隊員の半数を投入していることから、他の地域に『防衛力の空白』を生じかねないとの懸念も指摘されて」いると、『毎日新聞』3月23日付は報じていました。

 軍隊だから総動員できないのです。未曾有の国難でありながら、全力を尽くして「自衛」できないのは、自衛隊が軍隊だからです。
 戦後日本の為政者、政権政党は、本当の危機は何であり、それにどのように対処するべきかを見誤ってきました。特別に訓練された部隊によって「自衛」するべき危機は、外敵による戦争ではなく、自然による災害だったのです。
 日本という国では、地震や火山の噴火は避けられず、梅雨明け前の集中豪雨、洪水、土砂崩れ、台風災害、大雪による災害なども、ほとんど毎年のように繰り返されてきました。このような日本という国土・国情に見合った危機管理こそが必要だったのです。

 これからでも遅くはありません。地震をはじめとした自然災害に備え、常に防災と災害救助を最優先課題とした「防災国家」「レスキュー国家」の実現へと舵を切り換えるべきでしょう。
 そのためには発想を転換しなければなりません。常に存在している自然災害という危機への対処を主とし、あるかどうか分からない軍事侵攻という危機への対処を従とするような部隊へと、自衛隊を作り替えることです。
 特別に訓練された「自衛」する部隊は必要です。しかし、問題なのは、何を、何から守るのか、ということなのです。

 「自衛」隊の任務は、本来、国民の日常を脅かす「今、そこにある危機」から、国民の命と生活を守ることであるはずです。そのような、本来あるべき姿に変えていくことこそ、憲法9条が指し示していた道なのではないでしょうか。
 本当に必要なのは、ブルドーザーとしても使える戦車ではなく、戦車としても使えるブルドーザーなのです。自衛隊を改組・再編して、主たる任務を災害救助とし、「今、そこにある危機」に対応できるような部隊に変えなければなりません。

 それこそが9条「活憲」の最重要課題なのだということを、今回の大震災は私たちに教えているのではないでしょうか。

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