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5月19日(木) 民主党と同じ頃、連合も原発推進へと方針を転換していた [労働組合]

 先週の『週刊金曜日』2011.5.13に、村上力さんの「労組頼みの民主党に脱原発は難しい 原発推進の連合、背後に電力総連あり」という論攷が掲載されています。「民主党は脱原発どころか、自民党よりも原発を推進しようとしているのは明白」で、その「背後には、民主党に原発推進へと舵を切らせてきた労働組合の“暗躍”がある」というのです。

 ここで、民主党が「自民党よりも原発を推進しようとしている」というのは、いささか言い過ぎでしょう。自民党政権だったら、浜岡原発の停止やエネルギー基本計画の凍結を言い出したかどうかは、大いに疑問だからです。
 そもそも、原発を推進してきて世界第3位の原発大国を作り上げてしまったのは、歴代の自民党政権です。すでに書いたように、その元凶は中曽根康弘と正力松太郎であり、原発推進のエネルギー基本計画を最初に作ったのも自公政権の時代でした。
 とても、「自民党の方がまし」などとは言えません。村上さんの論攷のリードは、このような自民党を「免罪」してしまう危険性があります。

 とはいえ、民主党の原発政策転換の「背後には、民主党に原発推進へと舵を切らせてきた労働組合の“暗躍”がある」というのは、間違いではありません。それは、自民党の原発政策推進の背後に電力会社の“暗躍”があったのと同様です。
 この「労働組合の“暗躍”」の中心勢力が電力総連であったことも、村上さんが書いている通りです。その他にも電機連合や基幹労連なども、原発推進勢力だったと言って良いでしょう。
 これらの原発推進の立場に立ってきた単産は“暗躍”というよりも、公然と連合の路線転換を働きかけて来ました。たとえば、電力総連は2010年9月8~9日に開催された第30回定時大会の「議案書」で次のように書いています。

 プルサーマルの推進、核燃料サイクルの確立を含め、原子力発電の推進は、エネルギー安定供給、地球環境問題への対応の観点において、極めて重要な課題です。私たちは、労働組合の立場から労働界をはじめ国民各層への理解活動を強化していかなければなりません。(以上、引用終わり)

 「原子力発電の推進」は「極めて重要な課題」であるから、「労働組合の立場から労働界をはじめ国民各層への理解活動を強化していかなければな」らないというわけです。こそこそと隠れてやっていたわけではなく、堂々と公言していました。

 その効果もあって、連合は原発推進へと舵を切ります。その始まりは、2008年11月のことでした。2008年11月20日、連合第14回中央執行委員会はエネルギー政策の転換に向けてプロジェクトチーム(PT)を設置します。
 それは「今後のエネルギー問題に関する政策的課題の洗い出し、連合としての方向性を整理すべく、政策委員会のもとにエネルギー問題PTを設置する」として決定されました。PTは、12月に第1回を開催します。
 その後、09年5月まで7回の会議を開いて「6月の政策委員会、7月の中央執行委員会に報告する」予定でした。しかし、実際にこの報告がなされたのは、09年9月17日に開かれた第24回中央執行委員会です。

 2ヵ月も遅れたのは、内部での議論が紛糾したからだと思われます。それだけ問題のある方針転換だったのではないでしょうか。この時のPTの報告には、原子力発電について次のように書かれています。

○原子力エネルギーは、発電時にCO2を排出せず、大量勝つ安定的なエネルギー供給が可能であることから、わが国における主要電源の1つという位置づけは変わらない。既設原子炉の廃炉により供給能力が確実に減少するなかで、需要に見合った供給力の確保を確実に進めていくことが重要である。
○(「エネルギーのベストミックスとは何か」という問いに)化石エネルギー、原子力エネルギー及び再生可能エネルギーの特性(安定性、環境性、経済性、安全性等における調書・短所)、地球温暖化対策をはじめとする社会的要請、そのと時々の経済環境や関連技術の進展度合いなどを見ながら、多様なエネルギーの組み合わせについて都度最適なあり方を判断・決定する。
○原子力エネルギーは現在わが国の主要電源の1つであり、……エネルギー安定供給に欠かすことのできない重要なエネルギー源として位置づけることが妥当である。
○より高度な安全確保体制の確立を大前提に、高経年化対策を着実に実施するとともに、原子力発電所の設備利用率向上をめざす(「長期エネルギー需給見通し」では80%への引き上げを仮定)。さらに、現在計画中の原子力発電所の新増設(計13基。「長期エネルギー需給見通し」では9基の新増設を仮定)については、地域住民の理解・合意を前提に、これを着実に進める。
○高速増殖炉については、……拙速を避けつつも確実に進める。(以上、引用終わり)

 この転換については、09年9月16日付の「産経ニュース」が、次のように伝えていました。「連合が『原発新設』容認へ 民主シフト鮮明に」という記事です。

 民主党最大の支持団体、日本労働組合総連合会(連合)が、原子力発電所の新設を容認する方針を固めたことが15日分かった。17日の中央執行委員会で了承される見通し。
 原子力政策では、民主党はマニフェスト(政権公約)で「着実に取り組む」と推進を明言。一方、連合傘下の自治労などが支持する社民党は「脱原発 」が党是で、連合は これまで原発への態度を明確にしていなかった。
 連合の新原子力政策で 民主党シフトが明確化し、社民党との距離が広がった形だ。
 ……
 連合ではこれまで、原子力利用について、反原発の姿勢をとる自治労など旧総評系と、推進派の電力総連などの旧同盟系が対立。双方に配慮し運動方針が定まらず「現状の原発は維持する」と妥協してきた。
 民主、社民両党を支持する自治労はPTの報告書について「安全確保と住民の合意は譲れないという考えに立った上で、新設を推進する」としている。(以上、引用終わり)

 ということで、民主党がマニフェストで原発推進へと舵を切った頃、歩調を合わせるようにして連合も原発推進の方針を明確にしていました。『週刊金曜日』に掲載された村上さんの論攷で、「連合は09年に中央執行委員会で旧総評系の自治労などの合意の下に『現状維持』から『新設の推進』と方針を転換」(21頁)と書かれているのは、このPTの報告を指しています。
 これはまだPTの段階でしたが、それはやがて連合全体の方針として確認されることになります。

 というところで、この続きは、また明日……。



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