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6月3日(金) 内閣不信任案の否決によって菅首相と民主党は当面の危機を脱したけれど…… [政局]

 「一体、何をやっているのか」というのが、大方の国民の感想でしょう。とりわけ、被災地の住民や避難を余儀なくされている方々にとっては、政治のエネルギーが無駄に費やされているように見えて、やるせない思いだったのではないでしょうか。

 自民・公明・たちあがれ日本3党が提出した菅内閣不信任案は、賛成152票、反対293票で否決されました。投票総数は445票で、みんなの党が賛成、共産党は棄権、社民党は欠席です。
 民主党では2人が賛成に回り、小沢一郎元代表など15人が欠席・棄権しました。民主党執行部は、役員会などで賛成者を除籍とし、小沢元代表の処分は見送り、元代表以外の欠席・棄権者は岡田克也幹事長が事情を聴いた上で判断するということになりました。
 菅首相と民主党は、当面の危機を脱したようです。近い将来における首相の退陣と引き替えに……。

 内閣不信任案を提出し、菅首相の即時退陣か、悪くても民主党の分裂を狙っていた自公両党は、すんでのところで肩すかしを食わされたように見えます。この動きに同調していた民主党内の小沢グループも、2階に上ってハシゴを外されたような気がしたことでしょう。
 小沢グループの大半の人々は「縄ばしご」をたらして、慌てて下りてきました。反対票を投じた2人を除いて。
 今回の奇策を講じた張本人は、鳩山由紀夫元代表だったと思われます。同じように、菅首相と会って自発的な退陣を進言した亀井さんも、鳩山さんと連携していたのかもしれません。

 鳩山さんは、代議士会の直前に菅首相と会い、①民主党を壊さない、②自民党政権に逆戻りさせない、③復興基本法案の成立と2次補正の早期編成のめどをつけるという3項目で菅首相と合意しています。鳩山さんは代議士会でこのことを明らかにし、不信任案に一致して反対することを呼びかけました。
 これが決定的であったと思います。この合意を踏まえて、菅首相が代議士会で「震災への取り組みに一定のめどがついた段階で、若い世代にいろいろな責任を引き継いでほしい」と発言したとき、勝負はついたと言って良いでしょう。
 この後、代議士会で発言した鳩山さんは、「震災復興基本法案を成立させ、11年度2次補正予算の早期編成にめどをつけた段階で身を捨ててほしいと申し上げ、首相と合意した」と発言しました。これで、菅首相は退路を断たれ、「死に体(レームダック)」化したことになります。

 そもそも、菅首相の党内基盤は、「3.11」以前から揺らいでおり、「3月危機」が囁かれていました。もし大震災がなかったなら、すでに首相の座を去っていたかもしれません。
 大震災の勃発と原発災害の発生は、「政治休戦」をもたらし首相の指導力を発揮する重要な機会となりました。菅首相にとっては政権基盤を強化する大きなチャンスでしたが、首相はこのチャンスを生かすどころか、ますます首相としての指導力と信頼感の欠如を露呈する結果となりました。
 その弱点につけ込んだのが、自公両党による内閣不信任案の提出です。こんな大変な時に不信任を出した自公両党は批判されるべきでしょうが、そのような隙を見せる結果となった菅首相の責任も大きいというべきでしょう。

 菅さんは、このようなことになる前に、余力を残さず大震災対策と原発事故の収束のため奮闘し、一定の目処が立った段階で潔く身を引くことを、自ら進んで国民に約束するべきだったと思います。「不信任が通っても総辞職はしない。解散・総選挙で対抗する」と言い続けたがために、首相の地位にしがみつき、保身に汲々とする姿ばかりが目に付き、ますます信頼を失うという悪循環に陥りました。
 そのために、「不信任案を可決して力づくでも辞めさせてやる」という、民主党内外の勢いが増したのだと思います。これを見て危機感を高めたのが、民主党の「オーナー」でもある鳩山さんだったのではないでしょうか。
 鳩山さんと菅さんとの合意文書の最初に「民主党を壊さない」と書かれているところに、それが示されています。民主党の分裂だけは何としても避けたい、という鳩山さんの思いが……。

 今回の内閣不信任案の提出は、成立すれば菅首相を引きずり下ろして民主・自民の大連立に道を開き、不成立でも民主党の分裂を引き出そうとする自公の仕掛けた罠でした。それは、さし当たり、不発に終わりました。
 とはいえ、菅首相は代議士会で、具体的な退陣の時期に言及していません。菅・鳩山の合意文書についての解釈も、鳩山さんと岡田幹事長とでは食い違っています。
 問題は先送りされたにすぎないとの見方もあります。首相退陣の時期が、民主党内の対立を再燃させる可能性も小さくありません。

 しかし、菅さんはそれほど長い間、首相の座に居座ることはできないでしょう。第2次補正予算を組むことはできても、通すことは難しいからです。
 補正予算の通過も9月に予定されている訪米も、新しい首相の手によってなされることになると思います。いくら菅さんが頑張ろうとしても、第2次補正予算の目途が付いた時点で、おそらく参院に問責決議案が提出されるからです。
 もしそうなれば、参院で通るでしょう。これで、菅さんはアウトです。

 「3.11」の大震災とその後の原発事故は、日本社会の根本的な転換という課題を提起しました。社会のあり方は、全面的に見直され、リニューアルされなければなりません。
 その課題を遂行すべき政治もまた、これまでとは違った新しいものとなる必要があります。今回の「騒動」と今後の展開が、このような刷新と創造の契機になることを願っているのですが、果たしてそうなるでしょうか。

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