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6月18日(土) 原発は放射能による汚染と犠牲を前提にしたシステムだった [災害]

 福島第一原発内に大量にたまった高濃度の放射能汚染水を浄化する装置の稼働が始まったそうです。浄化した水を再び原子炉内に戻して燃料を安定して冷却するシステムが動き出しました。

 「これで『循環冷却注水』が始まったから、もう大丈夫」と早合点してはなりません。この浄化装置は試運転でトラブル続きでしたから、これからも順調に運転されるかどうかは分かりません。
 それに、大きな余震などで水の循環がストップするかもしれません。そうなれば、また原子炉は暴走を始めるでしょう。
 そのうえ、放射能汚染水から除去された高レベル廃棄物をどのように処理するのかも不明です。これについての法律がないというのですから。

 このように、原発には常に放射能による汚染の問題がついて回ります。それをどう防ぐのか、どのように処理するのかという問題について、これまであまりに無頓着でありすぎたのではないでしょうか。
 昨日の『毎日新聞』夕刊の「特集ワイド:巨大地震の衝撃・日本よ!」で、「『犠牲の仕組み』転換を」と題して哲学者の高橋哲哉さんが次のように語っていました。

 「被ばく覚悟で作業をする人が求められるのは、事故など危機のときだけじゃない。定期検査や大小のトラブルが発生したときなど平時にも必要です。彼らは、あらかじめ組み込まれた犠牲です。さらには、燃料となるウランを採掘している海外の現場では放射能汚染による先住民の被害が問題になっていますし、放射性廃棄物の最終処分のあり方についてはまだ誰も確信をもって見通せない。そこにも犠牲が生まれる」

 ここで高橋さんは「燃料となるウランを採掘している海外の現場では放射能汚染による先住民の被害が問題になっています」と述べていますが、これには放射性残土の問題も含まれています。ウランを含有する土には、ウランだけでなくトリウム、ラジウムなども含まれ、肺がんや骨肉腫などの原因になるからです。
 鉱山で採掘された鉱石は精錬工場に運ばれ、細かく砕かれて水で洗われ、濃硫酸やアンモニア等の薬品によってウランが精製されます。その時に出る鉱滓は池に貯められたり野積みにされ、洪水によって周辺の湖や川に流れ込んだり、乾くと埃となって飛び散って広範な土地を汚染します。
 現在、世界では14カ国がウランの採掘を行っていて、100万トン以上が採掘され、残土は16億8000万トン以上に上るといいます。国連科学委員会は人類の最大の被曝源はウラン鉱山の鉱滓にあると指摘しているほどです。

 このように、放射能汚染は、ウラン鉱石の採掘とその残土、定期点検での整備や清掃、廃棄物の最終処分などの時点で、つまり、最初から最後までついて回る大きな問題でした。そのいずれにおいても、被ばくの危険性は避けられなかったのです。
 その意味では、高橋さんが言われるように、原発は「犠牲を組み込むことでしか動かないシステム」でした。その「犠牲」とされたのは、ウラン鉱石の採掘場近くに住む先住民であり、原発の最下層で働く「原発ジプシー」と呼ばれた人々であり、原発を押し付けられた過疎地の農民や漁民などです。
 そして、今やその「犠牲」は都市に住む人々をも巻き込んでしまいました。被害を受け脅威にさらされているのは一部の「マイノリティー」ではなく、その範囲さえ定かではない「マジョリティー」に転化しつつあります。

 放射能汚染の種類と範囲がどれほどの広さに及んでいるかは、今もって不明です。汚染度の高い「ホットスポット」が、どこにどのようの存在しているかもはっきりしていません。
 最近では、東京の汚水処理場での高濃度汚染水が注目を集めています。都内2か所の下水処理場で汚泥を集めて焼却し、東京湾に埋め立てるなどしている灰から高レベルの放射能が検出されたと言います。
 このような放射能で汚染された物質について、自治体は勝手に除去等を命ずることができません。それをどのように処理するかが大きな問題になっています。

今後、このような問題は更に拡大するでしょう。福島第一原発の「循環冷却注水」が始まったからといって、放射能汚染物質の放出が完全になくなったわけではありませんから。
 原子炉の暴走を抑えることと、放射性物質の放出を停止させることは、関連していますが別のことです。放出をなくすために原子炉全体を覆う作業は、ようやく始まったばかりです。
 放射能との闘いは、これからも続くことになるでしょう。それがどれほどの被害をもたらしたのかは、何十年も経ってみないと本当のところは分からないという点に、放射能の怖さ、恐ろしさがあると言うべきでしょうか。

 放射能に汚染された残土などの処理について、「原発はクリーンで安全だ」と言い続けてきた人々に責任を取ってもらうというのはどうでしょうか。放射能汚染残土を東電本社の地下室に保管するとか、自民党本部の前庭に積み上げればいいんです。
 経済産業省や原子力安全・保安院の施設や経団連の建物なども、汚染残土の保管場所の候補地になりうるでしょう。何しろ、「クリーンで安全」だと、請け合ってきたのですから……。

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