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6月23日(木) 脱原発に向けてどのような対策を取れるかだけが唯一の選択肢なのでは? [原発]

 NHKが「”フクシマ後”の世界~私たちは原発とどう向き合うのか」という番組を企画し、NHKスペシャル「どうする原発」という番組を放送するそうです。そのアンケートに答えました。
 当然、「すべて廃止すべきだ」というのが、私の回答です。この時に送った意見は、下記のようなものでした。

 95年以降、地殻の活動期に入っている日本では巨大地震再発の可能性が高く、原発震災が大きな被害をもたらすことは福島第1原発の事故によって実証された。ウラン鉱石の採掘、精製で生ずる放射能残滓、配管の清掃などに際して被曝は避けられず、使用済み核燃料の廃棄と最終処分についての技術も開発されていない。発電に使用されているのは原発によって発生する熱量の3分の1にすぎず、残りは温排水として海水の温度を上げ、地球温暖化を促進している。電源3法交付金なしには原発を建設できず、最終的には料金に上乗せされて電気代を高くしている。原発は過疎地にしか建設できず、消費地である大都市への長距離の送電線を必要とし、多くの電力ロスを生んでいる。以上、あらゆる面から見て、原発は全て廃止するべきである。

 以下、これについて、もう少し詳しく説明することにしましょう。

 まず初めに、「95年以降、地殻の活動期に入っている日本では巨大地震再発の可能性が高く、原発震災が大きな被害をもたらすことは福島第1原発の事故によって実証された」ということでは、3つの点が重要だと思います。第1に、日本は世界でもトップクラスの地震国だということであり、第2に、90年代頃から地殻の活動期に入っているということであり、第3に、津波による被害だけでなく、地震そのものによる被害も軽視できないということです。

 現在、世界には原発が435基あります。そのうち、アメリカ104基、フランス59基、日本54基、ロシア27基、韓国20基、イギリス19基、カナダ18基、ドイツ17基、インド17基、中国11基などとなっています。
 日本には商業用原子炉54基のほか、日本原子力開発機構の「もんじゅ」もあります。このうち、現在稼働しているのは19基です。
 同じ原発でも、地震の発生可能性や設置されている地盤の堅さによって、原発震災のリスクは異なります。これらの国々のうち、最も地震の発生確率が高いのは地震国である日本であり、地盤の堅さが劣るのも、ほとんどが海岸線の砂岩のうえに立地している日本の原発です。

 つまり、日本という国の海岸線にある原発は、最もリスクが高く、本来であれば存在してはならないはずの原発群なのです。地盤が古く、内陸部にあるフランスなどの原発とは、そこが異なっています。
 「原発が危険だといったって、フランスなど他の国の方が多いではないか」などという言い訳は通用しません。他の国の原発より日本の原発の方が数段、危険性が高いということを無視すべきではないでしょう。
 しかも、世界の中で4つものプレートがひしめき合っている場所は日本しかありません。東から太平洋プレート、北から北米プレート、西からユーラシア・プレート、南からフィリピン海プレートがぶつかり合い、想定されている東海大地震の震源域の中心に位置する浜岡原発の稼働停止は当然のことですが、稼働していなくても地震などで電源喪失となれば、保管されている燃料棒が暴走を始める危険性は常に存在しています。

 しかも、1990年代頃から、日本は地殻変動の活動期に入ったと見られています。今回の東北沖や茨城沖の大地震は、その一環にすぎません。
 1991年には雲仙普賢岳の大噴火があり、95年には阪神・淡路大震災で多くの犠牲者が出ました。その後も、2000年に三宅島の大噴火、04年には新潟県中越地震、07年にも新潟県中越沖地震、08年に岩手・宮城内陸地震と続きました。
 そして、今年に入ってから、新燃岳が噴火し、東北の三陸沖でM9.0という1900年以降では世界第4位の巨大地震が勃発しました。この時、長野県北部と富士山の麓である静岡県東部でも地震があり、今後は茨城沖から、次第に南下する形で大きな地震が起きるのではないかと予測されています。

 これまで原発は、地震がなくても数々の放射能漏れなどの事故を起こしてきました。その回数があまりにも多いため、報告せずに事故を隠すことさえ度々あったのです。
 しかも、稼働停止しているからといって安心できないのも原発の特徴です。保管されている核燃料は冷やし続けなければ高温になって暴走を始めるからです。
 平時においても原発が事故を起こすのは、複雑な配管の構造を持ち、耐用年数がすぎて劣化していたためです。そのような原発が、大地震の衝撃に耐えることができるのでしょうか。

 一部には、今回の福島第一原発の事故は「想定外」の大きな津波によるものであるから、津波対策を充分にすれば大丈夫だという意見があります。菅首相が浜岡原発の一時停止を命じたのも、津波対策をきちんとするべきだという考えからのものでした。
 しかし、津波が来る前に地震の揺れそのものによって福島第一原発の配管が損傷していたこと、外部電源の喪失は鉄塔が倒れたために生じたことは、既に明らかになっています。また、津波がなかった新潟県中越沖地震に際して、柏崎・刈羽原発が重大事故の寸前まで行っていたこと、東日本大震災の余震によって、東通原発も電源喪失の危機が生じた事実も伝えられています。
 もちろん、津波対策も必要ですが、地震の揺れそのものによる被害を「想定」しなければなりません。そのためには、30年を過ぎて老朽化した原発、活断層の近くにある原発、砂岩など脆弱な地盤のうえにある原発などから優先的に稼働停止し、稼働を停止している場合でも、保管されている核燃料をもっと安全な場所に移動することが必要になるでしょう。

 今後、おそらくは30年以内に、今回の三陸沖地震と同程度の巨大地震が起きるだろうと予測されています。それは、東海、東南海、南海という形で続くか、今回のように全域に渡る広範囲な地震となるかは分かりません。
 しかし、その危機は刻々と近づいているように思われます。地殻変動は一定の周期で生じ、その変動は相互に影響し合って連続するからです。
 今回の東日本大震災は、その始まりにすぎないのかもしれません。だとすれば、福島第一原発のような原発震災もまた、やがて訪れるかもしれない大破局の始まりかもしれないのです。

 もはやグズグズしている暇はない、と考えた方が良いように思われます。今回の原発震災を予兆かつ教訓として、脱原発に向けてどのような対策を取ることができるかということだけが、残された唯一の選択肢なのではないでしょうか。


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