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7月28日(木) 原発震災と政治の責任-再生可能な豊かな日本の自然エネルギー(上) [論攷]

〔以下の論攷は、 6月12日に新潟市でのシンポジウム「原発からの撤退を大きな国民世論に!再生可能な自然エネルギーへの転換を求めて」で行った講演の要旨(上)です。『新にいがた』2011年6月号、第1765号に掲載されました。〕

 はじめに

 原発は世界に435基ある。アメリカ104基、フランス59基、日本54基、ロシア27基、韓国20基、イギリス19基、カナダ18基、ドイツ17基、インド17基、中国11基など。
 日本には55基(商業用原子炉54基と日本原子力開発機構の「もんじゅ」)が存在する―それは自然に誕生したものではなく、政治によって生み出された「怪物」だ。現在稼働しているのは、そのうち19基。
 普通、機械はスイッチが切れると止まる。原発はスイッチが切れると暴走を始め、人間によって制御できない「恐ろしい悪魔」に変身する。
この「悪魔」を生み出したのは政治であり、その「悪魔」を退治することもまた、政治の責任だ。現存する原発55基の廃炉、建設予定14基の白紙撤回を実現しなければならない。
 1995年の阪神・淡路大震災以降、日本列島は「地震の活動期」に入っており、いつまた東日本大震災と同様の大地震が発生するか分からない。したがって、「地震付き原発の一掃」は急務の課題であり、それに代わるものとして再生可能な豊かな日本のエネルギー資源を生かすべきだ―これが、本日の話のスジだ。

Ⅰ。原発に関する俗論・「安全神話」の誤り

(1)福島第1原発の事故は地震のせいではなく津波のせいだという弁護論は間違い

 当初、東電と経済産業省原子力安全・保安院は、原子炉は揺れに耐えたが想定外の大きさの津波に襲われたために電源が失われ、大事故に至ったと説明していた。
 しかし、その後、東電関係者は「地震の揺れで圧力容器や配管に損傷があったかもしれない」と、津波より前に重要設備が被害を受けていた可能性を認めた。
 日本共産党の吉井英勝議員は4月27日の衆院経済産業委員会で、地震による受電鉄塔の倒壊で福島第1原発の外部電源が失われ、炉心溶融が引き起こされたと追及し、原子力安全・保安院の寺坂信昭院長は、倒壊した受電鉄塔が「津波の及ばない地域にあった」ことを認めた。
 4月7日に起きた余震でも、青森県にある東通原発は外部電源がすべて喪失し、非常用ディーゼル発電機は一時動作不能となった。これらの事実からしても津波原因説の誤りは明らかだ。

(2)二酸化炭素などの温暖化ガスを排出しないというのも誤解

 原発は温暖化ガスを排出しないとされているが、ウラン燃料を精製する段階でCO2が出る。そのウラン燃料を(オーストラリアなどから)日本まで船で運ぶのでここでも当然CO2が出る。
 また、原発で発生する熱量のうち、発電に使われるのは3分の1にすぎない。後の3分の2は温排水として海に捨てられる。原発は海を温めることで、直接的に温暖化を進めている。
 それに、地球環境の保全という点から言えば、二酸化炭素よりも放射能の方がずっと悪影響を与えることは明らかだ。

(3)原発はクリーンで環境に優しいというのは嘘

 原発はクリーンで環境に優しいとされているが、そうではない。ウラン鉱石の採掘による放射能汚染と採掘後の残土による放射能汚染がある。
①採掘時の問題
 採掘されたウラン鉱石は精錬工場に運ばれ、細かく砕かれて水で洗われ、濃硫酸やアンモニア等の薬品によって精製される。
 鉱滓は池に貯められたり、野積みにされ、洪水によって周辺の湖や川に流れ込んだり、乾くと埃となって飛び散り、広範な土地を汚染する。
 世界では14カ国で100万トン以上のウラン鉱石が採掘され、残土は16億8000万トン以上にのぼる。
 国連科学委員会は人類の最大の被曝源はウラン鉱山の鉱滓(こうさい=かす)にあると指摘している。
②使用済み燃料の保管問題
原発は「トイレのないマンション」「着陸する飛行場もなく飛び続ける飛行機」と同じである。原発から出る核廃棄物(放射性廃棄物)の処理方法を、人類はまだ知らないからだ。
 放射能の半減期は、放射性ヨウ素131が8日、ストロンチウム90が29年、セシウム137が30年、プルトニウム239が2万4千年、ウラン235が約7億年、ウラン238にいたっては45億年にもなる。
このような核廃棄物(『死の灰』)は放射能レベルが低下するまで、長期間保管し続けるしかない。
六ヶ所村は一時的な保管場所にすぎず、最終処分場ではない。モンゴルに建設する計画があったが、恐らく実現しないだろう。
 原発は、確かに部屋の中は綺麗かもしれないが、その入り口と出口は危険な核のゴミだらけということだ。

(4)原発の発電コストは安上がりというのは誤魔化し

 電気事業連合会(電事連)が出している発電コストの比較では、1KW当たり原子力5・3円、火力6・2円、水力11・9円で、原子力が一番安いとされている。
①立命館大大島教授による試算
 立命館大の大島堅一教授は有価証券報告書を元に、原発に払ってきた総コストを発電実績で割り、それに電源開発促進税(1KWにつき37・5銭。東京電力管内で毎月約108円:国民負担)等の税金(税金投入が多いのが原子力!)を入れて計算した。その結果、発電単価は原子力が10.68円、火力9.9円、水力7.26円で、一番高いのが原子力発電だった。
立地や開発の費用、使用済み燃料の再処理費用だけでも11兆円かかる。電事連の計算では、原発に注ぎ込まれている税金が入っていない。
 1974年に電源3法(電源開発促進税法、電源開発促進対策特別会計法、発電用施設周辺地域整備法)が制定された。2010年度には、標準的な原発(130万kw)1つで、運転開始前10年間に約450億円、開始後35年間に約1240億円の交付金が出されている。
いわば、原発建設のための国家的な賄賂のようなもの。周辺自治体は、これに買収されているようなものだ。
②本来のコストから除外されているコスト
 高レベル核廃棄物の最終処分のためのコストも計算に入っていない。今回のような原発事故が勃発した場合のコストも「想定外」だった。いずれも膨大なものだが、コストとしては計算されていない。
原発の発電コストが安上がりというのは、「安全神話」と同様に大きなごまかしだった。原発建設のための税金の支出、核廃棄物の最終処分のための費用、大事故に際しての対策費や賠償金なども含めて考えれば、原発のコストは初めから高かったのだ。
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