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7月30日(土) 原発震災と政治の責任-再生可能な豊かな日本の自然エネルギー(下) [論攷]

〔以下の論攷は、 6月12日に新潟市でのシンポジウム「原発からの撤退を大きな国民世論に!再生可能な自然エネルギーへの転換を求めて」で行った講演の要旨(下)です。『新にいがた』2011年7月号、第1766号に掲載されました。〕

Ⅱ、「原発震災」が提起した政治の課題

 (1)脱原発政治への転換は急務

①福島第1原発の冷温停止に向けて
 福島第一原発は今も災害が継続中だ。冷温停止に向けてあらゆる手段の動員が必要になっている。その際も、原発労働者の安全と健康の維持を無視してはならない。
 また、被災住民のケア、とりわけ子ども達の健康管理が重要。福島からの「学童疎開」も必要なのではないか?
 放射能汚染も広がっている。汚染範囲やホット・スポットの拡大、汚染量の蓄積という問題がある。
 チェルノイブイリ原発事故の場合、半径30キロ以内は永久居住禁止、250~300キロは立ち入り禁止だ。福島の原発から東京・銀座までは240キロで、この範囲が立ち入り禁止になったということだ。
②「原子力村」は「閉村」すべき
「原子力村」とも言うべき政・官・財・マスコミ・学者・裁判官の癒着構造がある。それを打破しなければならない。
 経済産業省によれば、幹部OBの電力会社への再就職は過去50年間に68人だ。ほかにも、原子力関連の公益法人や独立行政法人への「天下り」がある。
 元凶は旧東大工学部原子力工学科で、「原子力技術者の計画的な養成のため」、57年に設立が決まった。卒業生の就職先は日本原子力研究所、電力会社などだ。
 マスコミも宣伝費によって買収されているようなものだ。広告関連費は09年度で約250億円にもなる。
 裁判官では、東電第二原発の建設許可取り消し裁判で安全性にお墨付きを与えた味村治元最高裁判事が東芝の役員に天下りしている。
 このような「原子力村」を「閉村」するために、原発ビジネスを儲からないものにすべきだ。原発利権を一掃し、電源三法交付金の廃止、発電と送電の分離、地域独占の廃止、電力料金決定方法の見直しが必要だ。
特に、発電コスト+適切な事業報酬(事業資産の4・4%)という総括原価方式をやめることだ。

(2)日本にある豊かな自然エネルギー資源を生かすべき

 日本には再生可能な自然エネルギーが豊富にある。中小水力、地熱、太陽光、風力、潮力・波力、バイオマスなどでの発電によって、エネルギー資源を生かすべきだ。
 現状は再生エネルギーが9%で、うち水力を除く自然エネルギーは1%、原子力は29%だ。残りの62%が火力で、うち石炭25%、液化天然ガス(LNG)29%、石油等8%という割合になっている。特に、LNGは温暖化ガスの排出量が少なく、資源量も豊富だ。
 エネルギー資源の少ない日本は原子力に依存せざるを得ないという意見は誤っている。日本には豊かな自然エネルギーがあり、再生可能エネルギーの資源大国なのだ。
 砂漠の国では、水力やバイオマスでの発電はできない。火山や温泉がなければ地熱発電は難しく、海がなければ潮力や波力発電も不可能だ。日本には、その全てがある。
 バイオマス発電のために、森林の間伐材を利用したり、休耕田を活用したりすることができる。最近、鍋でお湯を沸かし、温度差を利用して携帯電話に蓄電する製品が紹介された。鍋で発電できるなら銭湯での発電だってできる。ゴミの焼却場を発電所に変えることだって可能だ。
 送電線がなければ送電ロスも生じない。電気を使う場所で発電するのが最も効率的。これが地産地消発電システムで、太陽、風、水などの資源を利用した小さな発電施設を各地に作ればよい。
 岩手県葛巻(くずまき)町では、風車15基、太陽光、バイオマスなどで180%以上の電力を自給している。牧場で飼っている牛約200頭の排泄物からのメタンガスによる発電も37kwだ。
 日本海にはメタンハイドレード(メタンの周囲を水分子が囲む固体結晶)が大量にある。これも資源として活用できるだろう。
 日本は約50年前から地熱発電技術を開発している。日本企業は世界シェアの7割を占めているのに、国内では18ヵ所しかない。ニュージーランドで世界最大の地熱発電所を完成させた富士電機の世界シェアは約4割だ。
 小規模分散型の自然エネルギー・ビジネスは地域の新たな産業となることができる。新しい雇用を生み、地方を再生させるだろう。
 日本の自然エネルギー分野での技術力は高い。さらに意識的に技術開発を進めれば、環境ビジネスとして有力な輸出産業にすることができる。

(3)東日本大震災と福島第一原発事故を契機にした新しい社会への転換

第一に、脱原発・省エネルギー社会への転換は全人類的課題になっている。日本はその先頭に立つべきだ。
震災と原発事故を契機に、膨大なエネルギーを浪費する大量生産・大量消費の社会のあり方を見直さなければならない。強欲・暴走資本主義からの転換をめざし、日本はその先進モデルを生み出さなければならない。
 第二に、日本における新しい社会への構造転換が必要だ。東日本大震災は、中央集権を改めてリスクを分散しなければならないことを教えた。
 地方分権・地方の再生をめざさなければならない。地産地消型エネルギー産業による新たな地域起こしは、経済・産業面でこの方向を促進することになるだろう。
第三に、新しい働き方を生み出すことに結びつけなければならない。
節電のためのノー残業や労働時間の短縮の動きがあるが、これをワーク・シェアリングによる雇用の増大に結びつけることだ。これらを通じて、過労死社会から脱却し、ワーク・ライフ・バランスを実現すること、ILOがめざしている「ディーセントワーク(人間らしいまともな労働)」の展望を切り開くことが重要だ。
第四に、新しい社会と働き方を実現するための政治の革新という課題がある。
 社会や働き方、生活のあり方の転換は、政治の転換によって可能となる。政治のあり方を刷新し、新しい社会を創造することこそが政治を変えることであり、政治革新にほかならない。

Ⅲ・何が問題だったのか

(1)対米従属―アメリカの言うことに疑いを挟まず付き従う

日本の原子力開発は、原子爆弾開発技術の有効活用を図ろうとしたアメリカによって売り込まれたものだ。日米同盟や米軍基地の押しつけと同じような構造だ。
これは日本の農業破壊の構図とも共通している。アメリカは余剰小麦の有効活用のために、パン給食を導入させて日本人の食生活を一変させた。
アメリカの差し金による米食からの転換こそが、日本農業衰退の始まりだったのだ。

(2)利益政治―目先の利益に惑わされて「大義」や「正義」を見失う

 自民党政治の悪弊は理(理念)より利(利益)を優先する利益誘導型政治にあった。原発の推進も例外ではない。
 保守政治家の多くは原発利権の大きさに目がくらみ、「買収」された地方政治家が原発推進の先頭に立ってきた。
 玄海原発の再稼働問題が注目を集めているが、玄海町の収入の7割は原発関連だ。町長も地元の建設会社出身で、原発利権と無縁ではない。

(3)官僚依存―政治家が自分で考えず全てを官僚に任せてしまう

 自民党政治のもう一つの悪弊は官僚依存だ。原発についてはほとんど無知で、官僚に丸投げだった。その官僚の方は、天下り先確保のために電力業界を指導できない。
規制・監督をするはずの原子力安全・保安院は経産省資源エネルギー庁の下部機関で自立していない。原子力安全委員会は審議会で管理・監督権限を持たなかった。

(4)共産党排除―正しいことであっても「共産党だから」ということで無視してきた

原発の危険性について指摘や警鐘がなかったわけではない。共産党の吉井英勝衆院議員は、地震に対して原発は大丈夫かという質問を繰り返し行った。共産党福島県委員会・県議団なども申し入れを行って、津波による過酷事故の危険性を指摘していた。
これらの指摘は、政府や周辺住民だけでなく東電にとっても利益となるものだった。
 しかし、それは無視された。共産党への偏見によって、正しい選択肢が見失われたのだ。

むすび 社会の転換を生み出すために政治を変えよう

 ヒロシマ、ナガサキ、ビキニ、フクシマと、4度にわたって日本は原子力による大きな犠牲を払うことになった。このことを忘れてはならない。
このような経験によって、核の恐ろしさ、被害の悲惨さを良く知る日本国民こそが、反原爆・反原発のアンチ・ニュークリア(反核)国家となるべき歴史的使命を帯びることになった。
幸い、新潟県には、巻原発を住民運動で阻止した県民の運動がある。この経験を生かして、柏崎刈羽原発を止めてもらいたい。
かつて日本人は「聖戦神話」に騙され、今度また原発の「安全神話」に騙された。三度騙されないために、物事の真実を見抜く正しい知識と能力を身につけ、日本の政治を変えて欲しい。


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