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9月23日(金) 野田首相が国連で語るべきだったこと [原発]

 せっかくのチャンスだったのに、日本は国際社会の信頼を回復する機会を逃してしまいました。野田首相の国連での演説を聞いた国際社会は、「これだけ迷惑をかけたのに、まだ原発で儲けようというのか」と、日本に対する不信感を強めたのではないでしょうか。

 野田首相は国連本部での「原子力安全首脳会合」で演説し、原発の安全性を「世界最高水準に高める」としたうえで、各国への原子力技術協力や原発輸出を継続する考えを表明しました。第1原発原子炉の冷温停止は「年内に達成すべく全力を挙げる」と強調し、事故に関する全ての情報を国際社会に開示すると確約。事故調査・検証委員会の検証を踏まえ、来年中に最終報告を示すとしています。
 今後の方向については、「中長期的なエネルギー構成の在り方についても、来年夏をめどに具体的な戦略と計画示す」と述べたにとどまり、脱原発依存について言及していません。これについて、『東京新聞』は「今後のエネルギー政策に関して、原発依存度の低減、再生可能エネルギーの促進、省エネの徹底を三本柱にした『ベストミックス』(電源の最適な組み合わせ)の具体案を来年3月までに作成する方針を固めた」と報じ、「ベストミックス案を示すことは結果として『脱原発は高コスト』との印象を国民に与え、原発維持論を強めることにもなりかねない」と「解説」しています。

 このように、野田首相の演説や政府方針は極めて不十分なもので、一方で脱原発依存のポーズを取りながら、他方で原発維持・推進の方向も否定しないものとなっています。これを聞いた国際社会や国民は、野田首相や政府はどちらの方向に進むつもりなのかと、大きな疑問を感じたことでしょう。
 野田さんは揺れています。9月19日の6万人集会にも示されたような脱原発の世論には抗しがたいものの、原発推進を求める産業界の要望も拒むことはできないと考えているのでしょう。
 これでは困ります。相変わらずのリーダシップの欠如であり、フクシマ後の日本の最高責任者としては無責任きわまりない対応であると言わなければなりません。

 原発問題では、①国民の安全、②電力の安定供給、③温暖化の防止という3つを同時に達成する必要があります。野田さんにはその答えが見つかっていないから、明確な方針を出すことができないのです。
 しかし、国民の安全を第一に考えれば、原発をこれ以上推進することはできません。できるだけ早く原発依存から脱却し、自然エネルギーへと転換するためにイニシアチブを発揮することが首相としての最大の責務です。
 他方、電力の安定供給という点からすれば、直ちに全てを自然エネルギーに頼るということはできません。一定の過渡期が必要ですが、自然エネルギー買い取り法の改正や電力供給体制の改革などによってこの過渡期をできるだけ短くすること、その間のエネルギー供給を安定させることが必要です。

 ここで、第3の温暖化の防止との関連が生じます。昨日のブログでも書きましたが、原発は発生させる熱量の3分の1しか発電に回らず、3分の2は温排水となって海に放出されますから、この点でも原発は落第です。
 小出さんが著書で、原発は「海温め装置」だと書いているのはこのためです。海水温の上昇は法律で7度以下に抑えることが決められていますが、注水と排水が繰り返されれば、海水温はどんどん上昇していくでしょう。
 現在日本にある原発全てが稼働すれば、このような温排水は1000億トンにも上ります。1年間で日本の全ての河川から流出される水量4000億トンの4分の1に匹敵する量になり、これが周辺海域の温暖化を進めることは明らかでしょう。

 つまり、温暖化という点からも、原発の維持・推進は選択肢にならないということです。それに代わるものとして、当面は天然ガス(LNG)と石炭による発電を考えざるを得ません。
 天然ガスの発電によるCO2の発生は、石炭や石油による発電の3分の1ほどです。最近は、大量のシェールガスの発見によって供給量に問題はなく、国際基準よりも高い料金も、アメリカとの交渉や中国からの輸入などによって安くできるでしょう。
 石炭による火力発電も、チップとの混合によってCO2の発生を大きく減らす技術が開発されています。これについて『東京新聞』8月26日付の「特報」は磯子火力発電所のルポを掲載し、「日本の火力技術は世界トップレベルで、大気汚染物質は大幅削減され、いまや煙突からほとんど煙も出ない」と報じています。

 問題は、脱原発という方向を、政治の意思としてはっきりと確定させることです。そのうえで、脱原発のためにどうするのか、何が必要なのかを明言することこそ、野田首相が国連で語るべき言葉だったのです。
 フクシマでの原発事故によって大気と海洋を放射能で汚染し、日本は世界中の人々に迷惑をかけました。再びそのようなことのないように脱原発の方向に向かうことは、日本にとっての国際的責務にほかなりません。
 日本が脱原発による新しいエネルギー政策とそれに基づく成長モデルを作り出すことは、国際社会にとっても大きな利益になるでしょう。自然エネルギー技術の開発と輸出は、日本にも新しいビジネス・モデルをもたらすにちがいありません。

 フクシマでの過酷事故を教訓として、ドイツやスイス、イタリアは脱原発の方向を明確にしました。それにもかかわらず、日本がそのような方向を選択しないとなれば、国際社会からこう問われるにちがいありません。
 「フクシマは、一体どこの国にあるのか」と……。

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