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10月15日(土) 九電社長の居直りと佐賀県知事の責任逃れを許してはならない [原発]

 呆れかえってしまいました。昨日の九州電力の眞部利応社長の記者会見です。

 眞部九電社長は、最終報告書を経産省資源エネルギー庁に提出後、福岡市の同社本店で記者会見して社長続投を正式に表明しました。そこで何と言ったと思いますか。
 「無実の可能性が高い方に『あなたが要請しましたよ』と言えないでしょ」と、佐賀県の古川康知事を擁護し、何度も「無実」と繰り返しました。自ら設置した第三者委員会の調査結果に反してまでも、古川知事を守ることを優先したというわけです。
 何という、居直りでしょうか。佐賀県知事と九電社長と、互いに身内をかばい合っている姿がこれほど鮮やかに示されるというのも珍しいでしょう。

 第三者委員会が先月30日にまとめた最終報告書は、玄海原発(佐賀県玄海町)の再稼働に関して国が今年6月に開いた県民説明番組で、九電が組織的に再稼働賛成の意見投稿(やらせメール)をしたのは事前に知事が九電幹部に伝えた発言が発端だと認定しました。また、同原発へのプルサーマル発電導入を巡る05年12月の県主催討論会で、九電が質問者を仕込んだことへの県の関与も指摘しています。
 しかし、九電が提出した今回の最終報告書では、こうした知事や県の関与部分は一切触れられていません。都合の悪い事実は黙殺し、知事を守ったということです。
 会見した小野丈夫・経営管理本部長は「恣意(しい)的なつまみ食いでは」と指摘されると、「たとえ外から(要請が)あったにしろ、私どもの行為が問題なのだ」と反論しました。仕込み質問に関しても、「私どもとしては県の意向をそんたくし、独自にそういう動き方をしたのではと考えている」と第三者委員会の指摘を否定しています。

 このように、第三者委員会が指摘した知事のやらせへの関与や不透明な関係など、都合の悪いことは全く盛り込まれませんでした。そのためにかえって、古川知事との蜜月関係を印象付ける形となっています。
 そもそも、第三者委員会を設置したのは信頼回復のためではありませんか。「社内調査では信じてもらえないから第三者委を設けた」のに、それを「つまみ食い」して都合の悪い事実については黙殺するというのでは、信頼回復どころかますます不信感を高めるだけです。
 この程度のことも理解できない社長が、制御不能になるかもしれない原発を推進してきたというのですから、これほど恐ろしいことはありません。もっとも、「制御不能」になっているのは眞部社長の方かもしれませんが……。

 眞部九電社長は、原発をめぐる状況が大きく変化したことをほとんど理解していないように見えます。世論のあり方も、行政の側の対応も……。
 福島原発事故の前であれば、居直って逃げおおせるということもできたでしょう。しかし、今では世論もマスコミもそれを許すはずがありません。
 自民党政権であったなら、居直りへの援護射撃を期待できたでしょう。しかし、これまでの腐れ縁に縛られない民主党政権ですから、そのようなことは無理でしょう。

 現に、枝野幸男経済産業相は訪問先の中国で「原子力政策への国民的批判がある中で、こんなことをしているのは理解不能だ」と語り、九電の対応を厳しく批判しました。世論向けのリップサービスでも、これくらいのことを言わざるを得ない立場に置かれているわけです。
 また、「第三者委員会に調査を委ねた趣旨をどう考えているのか。大変深刻な問題だ」と述べて強い不快感を示しました。眞部社長らの続投を決めたことについても、「それ以前の問題として、報告書への佐賀県知事の関与を記載しなかったことがある」として、続投は問題外との認識を示したそうです。
 さらに、九電に最終報告書の再提出を求めることも検討していることを明らかにしました。問題は、これで収まらないということでしょう。

 他方、第三者委員会の委員長を務めた郷原信郎弁護士も東京都内で記者会見して九電を厳しく批判しました。最終報告書については、「第三者委の報告書の都合のいいところだけをつまみ食いしてちりばめたもので、何の意味もない」と……。
 また、眞部社長に対し、「独自見解を表に出すのは常識はずれで、体制の維持ばかり考える経営者の暴走」と断じ、「進退をしっかり考えていただきたい」と辞任を求めています。当然でしょう。
 九電の最終報告書が、佐賀県側の関与に言及しなかったことに対しても、「我々が本質と捉えた九電と佐賀県の不透明な関係を一切無視し、第三者委発足前の九電の認識とほとんど変わっていない」と非難。眞部社長が「やらせメール」の原因について「(古川康・佐賀県)知事の発言ではなく、発言のメモが発端」と主張していることにも、「メモは発言の後に作られており、理屈にならない」と強く批判しています。

 テレビに映し出された眞部九電社長の記者会見を見ながら、火に油を注いでいる姿を連想したのは私だけでしょうか。そうとは気づかずに、眞部さんはガソリンをぶちまけて大爆発を引き起こしてしまったように思われてならないのですが……。

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