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10月29日(土) 普天間基地移設問題の現実的で根本的な解決策は国外移設しかない [在日米軍]

 臨時国会が始まり、野田首相の所信表明演説が行われました。「無難」ではあっても、何をやりたいのか、具体策をどうするのかが見えてこないというのが、大方の評価のようです。

 「ドジョウ宰相」は泥の中に隠れて、容易にその姿が見えてこないということなのでしょうか。
 いや、そうでもないようです。この間の野田首相の言動や所信表明演説からでも、はっきりと見えてきたことがあります。
 それは、強いものにつき従う信念なき姿です。外に向かってはアメリカ、内においては財界という強きものに付き従う姿だけは、くっきりと浮かび上がってきているからです。

 特に、アメリカのオバマ政権に対する迎合ぶりには顕著なものがあります。「対米従属」は、これまでの日本の政権の習い性となっていましたが、政権交代後の鳩山さんは、それでも対米自立と東アジアに軸足を移すそぶりを示していました。
 野田さんには、そのような影すらうかがうことができません。というより、従来の自民党政権以上に、従米姿勢が濃厚であると言わざるを得ないでしょう。
 野田政権は「アメリカのポチ」になろうとしているとか、「アメリカのご用聞き内閣」だと酷評されているのも当然でしょう。

 このような「ポチ」としての「ご用聞き」で典型的なのは、普天間基地の移設問題とTPP(環太平洋経済連携協定)への参加問題です。さし当たり、普天間問題について、コメントすることにしましょう。
 普天間基地の移設問題では、まず、現実的で根本的な解決策は国外移設しかあり得ないということをはっきりと確認することが重要です。それ以外の解決策は、非現実的であるか、あるいは当面の暫定的なものでしかあり得ません。
 端的に言って、問題の先延ばしか誤魔化しです。野田政権の対応策は、その典型だと言って良いでしょう

 10月27日に、仲井真沖縄県知事は野田政権発足後、初めて首相と会談し、米軍普天間基地を名護市辺野古へ移設する日米合意について「実現は事実上不可能だ」と県外移設を求めました。首相は、環境影響評価(アセスメント)の評価書を年内に県へ提出する準備を進めていると伝えた上で「県民とコミュニケーションを取っていきたい」と強調したそうです。
野田首相は、昨28日にも仲井真県知事に会っています。何回もあって、形だけでも誠意のあるところを示したいということなのでしょうか。
 また、一川保夫防衛相は辺野古沖の埋め立て工事は「強行することはない」と述べています。県知事が反対し、防衛相は強行しないというわけですから、実際には事態が動かない、つまり解決できないことを見越しているということになります。

 環境影響評価の県への提出などは、アメリカに対するポーズにすぎません。何かやっているかのようなポーズを示しながら、実際には事態を動かすための努力をせず、先延ばしをして基地の固定化を黙認するというのが現在の野田政権のやり方です。
 その間に事故でも起きたらどうするのでしょうか。こんな無責任な政権が、これまであったでしょうか。
 結局、アメリカに気に入られる様なポーズを取るだけで、問題は先送りされるだけです。まさに「ポチ」と言われるにふさわしい従米ぶりで、野田さんには沖縄県民の願いも怒りも全く届いていないかのようです。

 しかし、先送りするという場合であっても、何もしない「無策」のままでの傍観は許されません。いやしくも、日本の政府なのですから、沖縄県民のために努力を続ける責務があります。
 少なくとも、当面、野田政権は次の三つの方向で何らかの手を打つべきでしょう。すなわち、第1に普天間基地が存在することによって被っている周辺住民の負担を軽減するための具体的な措置、第2に仲井真県知事が求めている県外移設のための普天間の基地機能の分割移転の可能性の模索、第3に根本的な解決策としての国外移設を可能とするための対米工作、とりわけ議会や議員に対する説得工作、という方向で……。

 第1の具体的な軽減措置については、直ちに米側と折衝するべきです。たとえば、普天間基地に駐屯している人員や航空機の削減、騒音を減らすための飛行回数の減少、夜間など周辺住民の生活を阻害する形での飛行の禁止などです。
 たとえ、普天間基地の移設が遅れ、現状維持が継続される場合でも、基地の危険性を減らし、周辺住民の負担を軽減することが必要です。そのためには、以上に述べた措置について米側に申し入れ、それを実現することは日本政府としての最低限の義務でしょう。
 基地の危険性や住民への被害を放置したままでの現状維持であってはなりません。普天間移設が直ぐには実現しなくても、少しずつでも現状が改善されるように日本政府として具体的な努力を行うことが必要です。

 第2の普天間基地機能の分割移転の可能性の模索についても、米側との協議を始めるべきです。というのは、県外移設といっても、おそらく普天間基地を丸ごと受け入れるような所は国内でも見つからないと思われるからです。
 もし、国内の他の基地に普天間基地を移設する可能性があるとすれば、その基地機能を分割した細切れ移設ということになるでしょう。部隊や機能を分割して、それぞれの受け入れ先を探すというのが、一つの方法であるように思われます。
 そのような可能性について、日本政府はこれまで検討したことがあるのでしょうか。アメリカに言われて唯々諾々と従うだけでなく、「それはできないが、これなら可能だ」という対案を出すというのが、独立した国家のあり方というものではないでしょうか。

 とはいうものの、このようにしても国内での受け入れ先が見つかるとは思われず、このような解決策も実際には不可能でしょう。したがって、現時的には、次のような解決策しか残されていないということになります。

 その第3の現実的な解決策である国外移設のための説得工作こそ、これまでやられなかったことであり、すぐにやって欲しいことです。そのためにこそ、政権が交代したのではないのでしょうか。
 このような対案と説得工作は、自民党政権では絶対に不可能です。だからこそ、自民党は政権の座を追われたのです。
 それなのに、民主党政権にもできないというのであれば、自民党と同様に民主党も政権を追われることになるでしょう。それに代えて、アメリカと対等に交渉できる自立した政権を樹立するしかありません。

 アメリカ側も、すでに普天間基地の辺野古への移設は諦めているのではないでしょうか。少なくとも、議会の中では別の解決策を探る動きがあるように見えます。
 その動きを強めるために、日本政府は積極的な議会工作を行うべきでしょう。説得のための要人を派遣したり、ロビーストを雇ったりして、普天間基地の国外移設に向けての説得工作を行い、その可能性を拡大するために手を尽くさなければなりません。

 野田首相は所信表明演説の冒頭で「今、私たち政治家の覚悟と器量が問われています」と言い、締めの言葉でも「政治家としての覚悟と器量を示そうではありませんか」と呼びかけました。しかし、普天間問題を打開するためには、他の誰でもない、野田首相自身の覚悟と器量こそが求められているのであり、普天間基地の国外移設に向けて対等な立場からアメリカと交渉する覚悟を示す以外、沖縄県民の信頼を回復する道はないということを、野田さんは肝に銘ずるべきではないでしょうか。1
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