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11月17日(木) これで派遣労働者の待遇が改善されるのか [労働]

 またもや、「先祖返り」ということなのでしょうか。長い間店ざらしにされてきた労働者派遣法改正案の成立に向けて民主、自民、公明3党が合意したと報じられましたが、その内容は自公政権時代のものと何ら変わりません。政権交代の果実が、もう一つ、朽ち果てようとしています。

 報道によれば、これまで改正案に盛り込まれていた「製造業派遣」と「登録型派遣」をそれぞれ原則禁止する規定について削除することで大筋合意し、同改正案は修正のうえ、今国会で成立する見通しとなったそうです。
 この改正案は派遣労働者の待遇改善を目指して、2010年の通常国会に提出されたものです。改正案には、①派遣元企業が得る手数料の割合を明示するよう義務づける、②製造業への派遣は原則禁止する、③仕事がある時だけ派遣元と雇用契約を結ぶ登録型派遣は秘書や通訳などの専門26業種以外で原則禁止する、などが盛り込まれていました。
 このうち、①を残して、②製造業への派遣の原則禁止と③登録型派遣の原則禁止を削除するというわけです。これで、果たして派遣労働者の待遇が改善されるのでしょうか。

 そもそも、労働者派遣法の改正が必要とされたのは、08年秋のリーマンショック後、製造業を中心にして「派遣切り」などが横行したからではありませんか。今回の合意は、このような背景を全く無視したものになっています。
 派遣という働き方で最も問題が多かったのは製造業への派遣であり、仕事のあるときだけ働く登録型派遣でした。それを「骨抜き」にして、どうして問題が解決されるのでしょうか。
 これでは、一体、なんのための改正なのか、と言いたくなります。成立を優先したための合意とされていますが、成立しても問題が解決されず、派遣労働者の待遇改善に結びつかなければ意味がありません。

 総務省統計局が11月15日に公表した労働力調査(詳細集計)によれば、2011年7~9月期平均の雇用者(役員を除く)は4,898万人で、このうち正規の職員・従業員は3,168万人と前年同期に比べ50万人減少し、非正規の職員・従業員は1,729万人と23万人増加しました。しかも、東日本大震災や原発事故の影響を理由にした「派遣切り」など非正規労働者の解雇や休業などが増加しています。
 また、非正規労働者の74%は年収200万円以下という低収入で、まともな生活が送れるような状況にありません。国内需要が増えず、景気が回復しない背景の一つがここにあります。
 このような状況を踏まえれば、派遣法を抜本的に改正して派遣労働者の待遇改善を進めることこそが求められているはずです。政府提出の改正案に対して、自民、公明両党は「企業の経営が圧迫される」として反発していたそうですが、「労働者の生活が圧迫されている」現状をどう考えているのでしょうか。

 法案成立のための譲歩によって「改正」案を換骨奪胎すれば、かえって問題の解決を遅らせてしまうことになります。派遣労働者の待遇改善のためには、「製造業派遣」と「登録型派遣」を禁止する抜本改正の道しか残されていません。
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