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2月9日(木) 在日米軍再編のロードマップ見直しを普天間基地問題解決のチャンスに [在日米軍]

 突然の繁忙期が訪れました。『日本労働年鑑』の執筆・原稿集め、そして編集作業が始まったのです。
 しばらくは、この作業に忙殺されます。このブログに書き込む余裕がなくなると思いますが、ご理解いただければ幸いです。

 ということで、沖縄の米軍再編問題について若干のコメントをしておきましょう。日米両政府は06年に合意した在日米軍再編のロードマップ(行程表)見直しに関する共同文書を発表し、在沖縄海兵隊のグアム移転と米軍嘉手納基地より南の米軍施設返還を、米軍普天間飛行場の移設と切り離して先行実施するため「公式な議論を開始した」と表明しました。
 これらを一体で進めるとしていたロードマップの根幹を転換したわけです。他方で、普天間飛行場を名護市辺野古に移設する現行計画については「唯一の有効な進め方であると信じている」として堅持する方針を示しました。
 「これしか解決の道はない」とされていた「ロードマップ」が見直されたわけですから、解決の道がこれしかなかったわけではない、ということが証明されたわけです。このような経緯からすれば、「唯一の有効な進め方」とされている普天間基地の辺野古移設についても、いずれ見直される可能性があるということが分かるでしょう。

 このような見直しがなされた背景については、色々な見方がなされています。米側には、歳出削減を求める議会の圧力をかわしつつ、普天間飛行場移設を後押しする狙いがあり、中国の台頭でアジア太平洋地域のパワーバランスが崩れつつあるとして1月に発表した新たな国防戦略の具体化であるというのもその一つです。
 オバマ大統領がアジア太平洋地域を最優先とする新戦略を打ち出した流れの延長線上にあるというわけです。在沖縄海兵隊をグアムのほかハワイやフィリピン、オーストラリアへも派遣するなど、中国の中距離弾道ミサイルに対応するため、前方展開戦力を分散させ、秘密裏にローテーションで動かして機動力を高める新たな戦術の一環だとされています。
 実は、基地の前方展開を最小にして機動力を生かすという方向性は、03年に明らかにされた海外駐留米軍のトランスフォーメーションによって、早くから打ち出されていました。一方で、海外の基地は維持費がかかり、駐留米兵の負担も大きく、周辺住民とのトラブルが絶えないためにできるだけ縮小する必要があり、他方では、軍事技術と部隊の運用能力の向上によって、前線となりうる地域から遠く離れていても短時間での機動的な前方展開が可能であるということで、米軍基地を再編・統合して縮小する方向を強めてきたからです。

 沖縄の米軍基地についても、基本的な方向性はグアムなどへの集中と周辺諸国での機動的な運用であって、普天間基地を維持することも、それを代替する基地を辺野古に作ることも、実際にはそれほど必要とされてはいません。それなのに在沖米軍基地の整理・縮小が進まないのは、「抑止力」としての沖縄駐留米軍のプレゼンス低下を日本政府が望んでいないからです。
 そもそも、米軍普天間飛行場の移設を持ち出したのは、1995年の米海兵隊員による少女暴行事件を契機にした県民感情の悪化と普天間基地の危険性に大きな危惧を抱いた米政府の方でした。今回の海兵隊移転のグアム先行実施によって「普天間基の固定化」が生ずるのではないかと心配されていますが、このような「固定化」による問題の継続と拡大を危惧しているのは、本当はアメリカ政府の方なのではないでしょうか。
 日本政府がことさら「普天間基地の固定化」の可能性を強調するのは、「それが嫌なら辺野古への移設を受け入れなさい」と圧力をかけるためなのです。このような脅迫に屈してはなりません。

 今回の見直しを、沖縄にある普天間基地など米軍基地の整理縮小にむけての新たなチャンスとして積極的に捉えるべきでしょう。そのためには、「普天基地の固定化」か、それとも「辺野古への移設」かという二者択一の呪縛を離れ、普天間基地の閉鎖・返還という第三の解決の道をはっきりと提起する必要があります。
 また、日本政府の外交・安全保障政策における能動性を回復し、このような第三の道を合理的な選択として米政府に提起しなければなりません。普天間基地を閉鎖して沖縄県民に返還することこそが日米関係の強化と発展にとって最も有効であり、ひいては極東の安全保障にも役立つのだということを、米政府だけでなく米国民にも分からせることが必要でしょう。
 それ以外のどのようなやり方でも沖縄県民の要求を踏みにじることになり、世界で最も危険な普天間基地がそのまま維持されれば、いつ、どのような形で、新たな事件や事故が発生し、対米感情の悪化に火がつくか分かりません。そうなれば、沖縄の米軍基地全体の存続や日米関係も危うくなるかもしれないのです。

 民主主義とは、最終的には民の声によって政治が動くシステムです。米軍海兵隊の移駐と普天間基地問題の新たな展開が示しているように、民主主義のシステムが残っている以上、基地撤去を望む民衆の声がいずれは事態を動かすことになるでしょう。
 問題は、どのような声を上げ、それをどのように伝えていくかということです。宜野湾市長選挙という形で、沖縄県民の普天間基地撤去に向けての声を上げる絶好のチャンスが、今、訪れようとしています。
 この選挙でどのような声が代表されるかは、宜野湾市だけでなく沖縄全体にとっても、大きな意味を持つでしょう。「基地をなくして欲しい」という声こそが、「普天間基地の固定化」を許さず、沖縄の未来を切りひらくにちがいありません。


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