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4月4日(水) 金元重先生の再審無罪による名誉回復を祝う [国際]

 嬉しい知らせをいただきました。ソウル高裁での金元重千葉商科大学教授の再審請求裁判で、無罪判決が言い渡されました。
 金先生、おめでとうございます。長年のご苦労が報われましたね。

 金先生とは、1995年からの大原社会問題研究所と韓国の仁荷大学産業経済研究所との共同研究プロジェクトで知り合いましたから、もう17年のお付き合いになります。昨年の社会政策学会春季大会では、非正規労働への再規制問題で、私が日本について、金先生が韓国について報告するという形で、ご一緒させていただきました。
 それに、金先生は以前から大原社会問題研究所の嘱託研究員で、昨年度からは客員研究員になっています。私とも研究所とも深い関係のある先生で、それだけに今回の無罪判決は我がことのように嬉しく思います。
 もともと、先生は罰せられるべきではなく、罰せられるべきは事件をでっち上げたKCIAなどの公安当局であったということが、韓国の司法当局によって正式に認められたということになります。本当に、良かったと思います。

 金先生は在日韓国人で、法政大学の学部を出た後、大学院も法政大学の経済学専攻で学んでおられます。その間、学部を卒業してソウル大学に留学していた1975年に、韓国中央情報部(KCIA、現在の 国家情報院)などによって「北朝鮮スパイ団」として逮捕・投獄され、7年間服役させられました。
 一昨年の秋、ソウル大学日本研究所との研究交流覚書を結ぶために訪韓した折、西大門刑務所を訪れました。社会政策学会分科会での報告の打ち合わせをした際、金先生にその話をしたら、「最初に私が取り調べを受けて投獄されたのが、そこでした」と仰り、驚いたことを覚えています。
 西大門刑務所は1967年7月に「ソウル拘置所」に変更され、1987年11月まで現役として使用されていました。ですから、75年に逮捕された金先生がここに投獄されることは充分にありえたわけです。

 この事件は75年にKCIAが「大学に浸透した在日韓国人らのスパイ団を摘発した」と発表した日付から「11・22事件」と呼ばれています。金先生を含めて在日韓国人16人が起訴され、4人が死刑判決(恩赦で全員減刑)を受けました。
 金先生は「知人の北朝鮮系の在日男性から指令を受けて韓国に潜入し、ソウル大大学院に在学しながら機密を探知した」との国家保安法違反罪などで有罪とされたそうです。もともと元被告の多くは、当時から容疑は事実無根で、共犯とされた人との面識もないと主張していたのに、令状なしで21日間監禁され、棒で殴るなどの拷問を受けて罪を着せられたわけです。
 判決を言い渡す際、金基正裁判長は「拷問による自白以外に証拠は何もない」として事件自体がでっち上げられ たと認定し、「長い間の苦労に何と申し上げていいか分からない。歳月を取り戻す方法がなく残念です」と、金さんに慰労の言葉をかけたそうです。

 無罪判決で名誉が回復されたとは言っても、この事件で奪われた青春時代の7年もの歳月も、長年の投獄によって損なわれた健康も、二度と戻ってはきません。権力犯罪の罪深さに、慄然とするばかりです。
 せめては、裁判で煩わされることなく、これからは研究活動に専念できるということが救いでしょうか。でも、金先生自身は、「在日韓国人政治犯としては私は9番目の無罪判決なのですが、まだ再審が始まっていない人や再審請求をできていない人々のために少しでも役立てれば」と仰っていて、これからも再審請求への支援活動を続けられるようですが……。

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