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4月28日(土) 「左翼」は並立制を受け入れるべきか(その1) [論攷]

〔表題を見て、奇異に感じた方がおられるかもしれません。これは、今から19年前、1993年11月27日付の『ふぉーらむ21』第27号に掲載された私の論攷です。「ふぉーらむ21」というのは当時存在した左派の小さなサークルで、時たま研究会や学習会を開いていました。
 先日、所長室から引っ越したので久しぶりに研究室を整理していたら、この論攷がひょっこり姿を現しました。「俺を忘れちゃ困る」と訴えているような登場の仕方です。
 ということで、かつて書いたこの古い論攷を紹介することにしましょう。読めば分かるように、先日のブログに登場した「U先生」というのは、後房雄名大教授のことです。
 後さんが社会運動内で果たしてきた役割をそれなりに評価している私としては、「旧悪」を暴くようなことはしたくなかったのですが、すでに20年近くも前に書いて公にされていますのでやむを得ません。過去の言動についても責任を問われるのが、研究者の宿命のようなものですから。
 この論攷は、先日紹介した拙著『一目でわかる小選挙区比例代表並立制』の刊行や後さんとの「論争」の直後に書かれたものです。私と後さんとの間で何が争点とされていたのか、そしてそれは現実によってどう決着がつけられたのか、良く理解していただけることでしょう。〕

「左翼」は並立制を受け入れるべきか-後房雄氏の所論「選挙制度改革・政界再編と民主主義的左翼」への疑問

はじめに

 最近、私は『一目でわかる小選挙区比例代表制』という本を出版しました。その中で、「国民の多くがよくわからないまま、『並立制にすれば、政界再編がもっと進む』といった次元の話で新制度が導入されてしまったら、あまりにも愚かな仕儀と言わなければなりません。政治家や政党さえも制度の性格やしくみ、問題点について十分に理解していないように見えます」と書きました。雑誌『情況』に掲載された後房雄氏の議論を拝見して、「制度の性格やしくみ、問題点について十分に理解していない」のは、何も「政治家や政党」に限らないという感を強くしました。以下、並立制という選挙制度をめぐる後氏の議論について、いくつかの疑問を提起しておきたいと思います。
 後氏の主張のポイントは、次の点にあります。
 「ここで筆者が強調したいのは、このような選挙制度、このような民主主義が、小沢らの新保守主義にのみ一方的に有利なものでは決してなく、それに対抗するリベラルないし左翼の側にもまた、明確な政策転換を主張して選挙で勝利することによってそれを実行に移すチャンスを与えるものであるということである。それゆえ、民主主義的左翼は、並立制を受け入れたうえでの具体的提案をもって選挙制度に主体的に関与することによってその内容を改善し、同時に新しい制度のもとでの民主主義ゲーム(とりあえずは政界再編)の有効な参加者としての態勢を整えるべきなのである。」
 このような主張の背後には、並立制が、①「政権交代のある民主主義」への移行を可能にし、②「必要な権力が中央政府に集中され、その権力をめぐっての競争が活性化するような民主主義」をもたらすという判断があります。はたして、そうでしょうか。(続く)



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