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6月18日(月) 沈みゆく「船」・アメリカと心中することになっても良いのか [国際]

 一昨日の16日(土曜日)、午後のJCJのシンポジウムが終わってから、夜にもう一つの講演を聞きに行きました。「許すな!憲法改悪・市民連絡会」が主催する市民向けの講座です。

 こちらの方は、軍事ジャーナリストの前田哲男さんが講師で、テーマは「アメリカの世界戦略の転換と自衛隊」というものです。場所は文京区民センターで、会場が近かったものですから、講演会のハシゴをしました。
 それに、テーマも興味深いもので、一度は前田さんのお話をうかがってみたいと思っていたからです。都立大学時代からの友人でJCJ新聞部会の幹事をしている須貝道雄さんから懇親会に誘われて心が動きましたが、それはまた今度ということで、地下鉄に乗って春日に向かいました。

 この講演は、第70回市民憲法講座ということで、40人ほどの人が参加されました。このような講座が、もう70回も続いているということに驚き、また感心もしました。
 前田さんの講演は1時間ほどで、その後の質疑応答も活発でした。ただ、お話しの前半は安保条約についてのもので、ほとんど知っていることばかりだったのは残念でした。
 テーマとなっているアメリカの世界戦略とその転換、それに伴う日米軍事同盟や自衛隊の変質、役割や運用の変化について、もっと詳しく話をされるものと思っていました。これらについては後半で触れられましたが、もっとこちらの話に集中した方が良かったのではないでしょうか。

 ただし、重要な指摘もありました。たとえば、アメリカの世界戦略が太平洋中心へとシフトしていること、そのような戦略体制に日本を引き込んで日本からお金を引き出そうとしていることなどです。
 また、最近高まっている「中国脅威論」はかつての「ソ連脅威論」のデジャビュのようなものだが、中国はアメリカの国債を大量に保有し、貿易や経済面で米中は相互に深く依存し合っている点でかつてのソ連とは大きく異なっているとも指摘されました。この点で「新冷戦」などという言い方には賛成できないと言われたのは、なるほどと思いました。
 また、米戦略転換の背景として、EUでの統合が進んだヨーロッパでの戦争は考えられず、中東から追い出され、中南米での影響力も減退しているアメリカは、アジア・太平洋地域くらいしか軍隊を置けなくなっているからだと説明されました。これにも大いに納得させられたものです。

 帰りの電車の中で、この日、自宅に送られてきた新書に目を通しました。金子勝さんから贈っていただいた金子勝・神野直彦『失われた30年-逆転への最後の提言』(NHK出版新書)です。
 そこにも、金子さんの次のような発言がありました。

 「気がついたらアメリカの国際的なプレゼンスは、東アジアにしかない。それで必至にアジア重視とか言っているという面が強いわけです。……アメリカにとっては、他の地域が駄目だから、中国を中心にして成長している東アジアに割り込むか、日本や韓国を足がかりに割り込む以外に生きる先はないということなのに、思考の習い性から、この単純な事実が理解できないわけです。
 とりわけ、基地の負担をかなり負ってくれる日本以外に、アメリカを助けてくれる国がないんですね。つまり日本という国は、この沈みゆくアメリカという船と心中する路線に入ってきている。」(28~30頁)

 この日の午後のJCJのシンポジウムが「『ハシズム』で日本は沈む!?」というテーマだったことは、昨日のブログに書きました。金子さんは、「アメリカという船」はもう「沈みゆく」状態だと言い、日本はこの「船」と「心中する路線に入ってきている」と仰られるわけです。
 普天間基地の移設問題、原発再稼働、消費増税、そしてTPP。まさに、外交、軍事、経済、財政政策の全般にわたって、アメリカとの心中路線が選択されているように見えます。しかも、それに代わる選択肢として期待されているのが橋下政治であり維新の会であるとすれば、やはり「『ハシズム』で日本は沈む」と言わざるを得ないのではないでしょうか。


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