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7月6日(金) 東京女子大でアンドルー・ゴードンさんの講演「世界に向けて東日本大震災を記録する」を聴いてきた [日常]

 ひさしぶりにアンドルー・ゴードンさんにお会いして、お話を伺ってきました。とは言っても、昨年のクリスマス・イヴにも、東大での研究会でお会いしましたが……。

 昨日、東京女子大学で第14回丸山真男文庫記念講演会が開かれ、アンドルー・ゴードン米ハーバード大学教授が講演されました。講演のテーマは「世界に向けて東日本大震災を記録する-危機アーカイブの効用と構築のための課題」というものです。
 ゴードンさんは6月末まで、ライシャワー日本研究所の所長をしており、私とはそれ以前からの古い友人で、ライシャワー日本研究所への留学中も大変お世話になった方です。昨年の3月、大地震と福島原発事故に衝撃を受けたライシャワー研究所周辺の日本研究者達は、この大変なときに研究者としても何かをしなければならないということでウェッブ内に記録を残すネットワークを立ち上げたそうです。
 これが「2011年東日本大震災デジタルアーカイブ」http://jdarchive.orgで、間もなく日本でも見られるようになります。その内容について、詳しくはhttp://jdarchive.org/explore/?la=jaをご覧下さい。

 ゴードンさんはこのアーカイブの概要について、「つながり」「発見」「参加」という三つのキーワードで説明されました。「つながり」というのは、すでに様々な機関や主体によって記録が収集・保存されていますので、それらのアーカイブ機能をネットワーク化してつなぐハブ機能を持たせることを意味しています。
 「発見」というのは、検索機能の充実とリンクによって多様な記録媒体を見つけ出せるようにするということです。保存されているのは、ウェッブ・サイトやツイート、写真、動画、pdfファイルなど多様だといいますが、私のこのブログまで記録されているかどうかは聞き逃しました。
 「参加」というのは、これらのネットワークと保存資料によって自分なりのコレクションを作成してもらおうということのようです。可能な限り公開し、閲覧と対話を通じて、より正確なものにしていくことができるというわけです。

 知を創造し、共有できる非営利的な開かれた情報ネットワークを構築する試みであるというのが、このアーカイブについてゴードンさんが強調された意義です。また、相互の交流、共有、対話、参加などによって、作り手と受け手の間にある壁をできる限り低いものにしていきたいとの抱負も述べておられました。
 今は、どこにでもあり、見ようと思えば瞬時に見ることができる様々な論説や映像、音声なども、時間が経てば消えていきます。それが、ウェッブの宿命のようなものかもしれません。
 その意味では、このような記録の保存は、現在よりも将来にとって、短期的にではなく長期的に、大きな意義を持つと言えるのではないでしょうか。歴史的な大震災と大事故についての記録をきちんと保存することは、本来は現在の日本に生きる私たちが行うべき責務だったかもしれませんが、このような形で海外でなされたためにかえって国際的な広がりができ、世界に発信するという意味ではプラスになったように思われます。

 質疑の中で、ゴードンさんは「今回の大震災や原発事故は、日本の歴史的な転換点、ないしは分岐点になるとお考えですか」という質問に、「二つの可能性があります」と答えられました。一つは良くなる場合で、これまで日本が抱えてきた様々な問題が解決へと向かう転換点になるかもしれないということ、もう一つは悪くなる場合で、これまでの問題点や矛盾点がさらにいっそう深刻化する分岐点となるかもしれないということです。
 防災や地震対策、人々の結びつきや社会問題への取り組みという点では、前者の可能性もあるように見えます。しかし、残念ながら、政治については明らかに後者だと言わざるをえないのではないでしょうか。
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