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7月13日(金)  「法政学への招待」リアクションペーパーにおける質問への回答 [論攷]

 〔2週間前の金曜日(6月29日)、法政大学の自校教育である「法政学への招待」で、大原社会問題研究所について講義してきました。終了後に出された学生の質問に答えたのが、以下の回答です。〕

Q どうして、これほど貴重な資料を集めることができたのでしょうか。資金は誰が出したのでしょうか。

 戦前の研究員がドイツやイギリスなどに派遣され、資料収集を行ったからです。第1次世界大戦後、ドイツは大変なインフレーションで貴重な書籍が安く購入できました。大原社研が所蔵している『資本論』第1巻の初版本は3冊で、櫛田民蔵が1921年にベルリンのシュトライザンド書店で購入したもの、向坂逸郎が1923年にベルリンで購入したもの、高野岩三郎が1927年にドイツで購入して娘婿の宇野弘蔵に贈り、1995年に遺族から寄贈されたものです。マルクスの署名入り『資本論』は櫛田が購入したものに含まれていました。その資金は1937年に東京に移転するまで大原孫三郎が出しました。大原については城山三郎『わしの眼は十年先が見える―大原孫三郎の生涯』 (新潮文庫) という伝記があります。

Q 研究所はどのような活動をしていますか。ILOとのシンポジウムのテーマは労働問題ですか

 大原社会問題研究所は第一次世界大戦後の労働争議など、主として労働問題を研究課題として出発しました。現在も労働問題が中心ですが、子供の貧困や家族の問題、脱原発運動などの社会問題も研究対象にしています。このほか、『大原社会問題研究所雑誌』(月刊)や『日本労働年鑑』の刊行、『労働運動資料集成』や『社会労働大事典』の編集・出版なども行っています。ILO(国際労働機関)駐日事務所と共催のシンポジウムは、主としてILO総会の議題に関するものですから労働問題が中心になります。今年のテーマは「若者の雇用問題」で、10月23日(火)に国連大学で行われます。参加費無料で、どなたでも参加できます。

Q 学生は利用できますか。戦前のポスターなどは見ることができますか

 本学の学生だけでなく、資格を問わず、どなたでも利用できます。請求していただけば、ポスターをはじめとした所蔵資料を見ていただけます。その他、社会・労働問題に関わる専門的な図書・資料を沢山所蔵していますので、卒業論文の作成などに利用してください。研究所のウェッブ・サイトhttp://oohara.mt.tama.hosei.ac.jp/で、所蔵している図書などについては「デジタルライブラリー」、原資料などについては「デジタルアーカイヴス」、写真やポスターなどは「デジタルミュージアム」でご覧いただけます。一度、訪問してみてください。また、戦前のポスターを紹介した『ポスターの社会史―大原社研コレクション』という本も刊行しています。図書館などでご覧になって下さい。

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