SSブログ

2月4日(月) 総選挙の結果をどうみるか-小選挙区制によってアシストされた虚構の自民圧勝(下) [論攷]

〔以下の論攷は、『学習の友』No.714、2013年2月号、に掲載されたものです。2回にわってアップします。〕

 小選挙区制の害悪

 小選挙区制は人為的に民意を歪める根本的な欠陥をもっており、最悪の選挙制度です。このような欠陥品は一日も早く廃止され、もっとマシな比例代表制的な制度に変えられなければなりません。
 第1に、少数の得票が多数の議席を生んでしまうという問題があります。今回の総選挙で、自民党は43%の得票率で79%の議席を手に入れました。4割台の得票率で約8割の議席を得たことになります。比例代表制なら自民党は133議席にすぎず、過半数を超えていません。
 第2に、議席に結びつかない票が多く出たという問題があります。これを「死票」と言いますが、制度によって殺された民意であり「他殺」と言うべきものです。今回の死票は過去最高の3730万票(56.0%)と半分以上になり、前回の46.3%より9.7ポイントも増えました。
 第3に、「過剰勝利」と「過剰敗北」によって結果が激変するという問題もあります。「膨らまし湖」によって得票率より議席率が膨らんでしまう結果、勝利と敗北が増幅され、まるでオセロ・ゲームのように与党が入れ替わり、政治が極めて不安定になっています。
 さらに今回は、「第三極」の乱立によって自民党が「漁夫の利」を得るということもありました。自民党、民主党、「第三極」(維新・みんな・未来)が「三つどもえ」となって自民党が当選した168小選挙区のうち、109選挙区では民主党と「第三極」候補の得票の合計が自民党を上まわっていました(『毎日新聞』12月18日付)。つまり、民主党と「第三極」が協力すれば、自民党が109議席減らしていたかもしれないというわけです。
 しかし、小選挙区で当選するために無理やり協力したり、候補者を一本化したりするというのもおかしな話ではありませんか。もともと、理念や政策が異なるから別の政党になっているのですから、そのまま支持を問うことができないような制度であることの方が問題でしょう。
今回の選挙の多党化状況は、直接には民主党の分解によって加速されたものですが、現代社会における政治的争点や要求の多様化の反映でもあります。それをそのまま国政に生かすのではなく、選挙の過程で集約してしまおうというところに無理があります。
 選挙では、社会に存在する多様な要求が議会に代表されるようにしなければなりません。民意の縮図を作ったうえで、熟議を通じて一つの方向に集約していくことこそ、議会の役割ではありませんか。選挙によって民意を集約しようとなどというのは間違いであり、議会の役割を無視することになります。

 総選挙にも及んだ民衆運動の力

 今回、民主・自民・公明の3党は消費税の増税隠しに徹し、重要な争点であった原発問題やTPP(環太平洋経済連携協定)参加についても、自民党や民主党は態度を曖昧にしました。それは世論の反発を受けることを恐れたからです。
 そのような状況を生み出したのは、消費税の増税反対、原発ゼロや反TPPに向けての国民運動の盛り上がりでした。この力が総選挙にも及んでいたということになります。また、自民党型政治が行き詰まり、新たな局面が開けてきた反映でもあります。
安倍晋三政権は従米・財界本位の路線を引き継ぐだけでなく、古い自民党型の利益政治と自助努力を求める新自由主義政策、復古的なタカ派政策の「ワースト・ミックス」を実行することになるでしょう。矛盾と危機はいっそう深刻にならざるを得ません。
そのうえ、日本維新の会という自民党よりも右翼的で新自由主義的な新勢力が国会に登場しました。当面、安倍首相は「安全運転」をめざすだろうと言われていてますが、この右翼勢力に引きずられて暴走を始めるかもしれません。そうなれば、平和を願う国民やアジア諸国民の世論と激しい矛盾を引き起こさざるを得ないでしょう。それを許さないブレーキの役割はますます重要になっています。
 今回、日本共産党は8議席で前回より1議席後退させるという残念な結果でしたが、選挙で示した改革ビジョンはいよいよ重要な意義をもつことになります。その実現のために、共通する課題での共同を広げることが大切です。
 自民党と公明党の議席は衆院で改憲発議が可能な三分の二を越えました。これに日本維新の会が加われば、さらに大きな勢力になります。憲法をめぐる攻防が本格化することになり、国民運動を盛り上げて改憲に向けての策動を抑えることがいよいよ重要になっています。さし当たり、2013年夏の参院選で改憲勢力が三分の二を越えないよう、全力を尽くさなければならないでしょう。
                             (2012年12月24日記)
nice!(0)  トラックバック(0) 

nice! 0

トラックバック 0