3月23日(土) 主権侵害条約「TPP」が振りまく「毒素」の怖さとは何か [TPP]
国会審議などを通じて、ようやくTPPというものの正体が分かりつつあるようです。依然としておぼろげではありますが……。
それもそうでしょう。基本的には秘密交渉で、交渉の進展具合も、どのよう条件があるのかも、何が決まったかも、正確には分からないのですから……。
交渉が終わってTPP条約が締結されてからも、その内容は5年間秘匿することが義務付けられているというのですから、秘密主義は決まった後でも貫かれているということでしょう。
何があるか分からない真っ暗な部屋に入ろうとしている。そして、一度入ったら、もう出られない。それが、TPP交渉という闇の世界なのです。
その闇の中には、危険な「罠」がいくつも隠されているのではないでしょうか。その「罠」の一つで最も良く知られているのがISD条項で、最近ではISDSと書かれることも多いものですが、TPP条約の代表的な「毒素」です。
「ISDS条項」は投資家保護条項(Investor-State Dispute Settlement)のことで、ある国家が自国の公共の利益のために制定した政策によって、海外の投資家が不利益を被った場合、世界銀行傘下の国際投資紛争仲裁センターなどの第三者機関に提訴できるというもので、地方自治体の規制なども訴訟の対象になる可能性があります。それに「第三者機関」とはいっても、この「紛争解決センター」はワシントンにあってアメリカ支配下の世界銀行傘下で、審判はアメリカ寄りですから、アメリカの思うままです。
現に、これまでの46件の提訴のうち31件が米国企業の原告で、米政府が負けたことは一度もないと言われています。しかも、この審理は非公開で、不服があっても上訴することができません。
先ほど「『罠』の一つ」と書きましたが、「毒素条項」そのものは一つではありません。以下のような「毒素条項」もあります。
たとえば、「ラチェット条項(Ratchet条項)」は、貿易などの条件を一たん合意したら、後でどのようなことが発生してもその条件は変更できないというものです。先発国がすでに合意した条件については、後から入った国は異議を申し立てられず、ただそれを受け入れるだけというわけです。
「NVC条項(Non-Violation Complaint条項)」というものもあります。これは「非違反提訴」のことで、米国企業が日本で期待した利益を得られなかった場合、TPPに違反していなくてもアメリカ政府が米国企業に代わって国際機関に日本を提訴できるというものです。
さらに、「スナップバック(Snap-back)条項」はアメリカ側が相手国の違反やアメリカに深刻な影響があると判断した場合、関税撤廃を反故にできるというものです。
「未来の最恵国待遇(Future most-favored-nation treatment)」という条項もあります。将来、日本が他の国にアメリカより条件の良い最恵国待遇を与えた場合、自動的にその待遇はアメリカにも適用されるというものです。
このほか、「ネガティブリスト方式」というものもあります。これは、明示された「非開放分野」以外は全てが開放されるというものです。
規制必要性の立証責任と開放の追加措置というものもあります。日本が規制の必要性を立証できない場合、市場開放のための追加措置を取る必要が生じる、例えば当初米をネガティブリストに加えていても、その規制が必要であることを立証できない場合、無条件で開放させられるというものです。
これらの条項によって、加盟国の市場は無理やりこじ開けられることでしょう。少しでも邪魔なものがあれば次々と訴訟を起こされ、アメリカ寄り(というより多国籍企業寄り)の「第三者機関」によって莫大な賠償金を支払わされます。
政府の試算では、関税撤廃が求められている農業分野だけしか対象になっていない点が批判されました。非関税障壁の撤廃が求められている農業以外の分野での影響と損害は、見方によっては、もっと大きなものかもしれません。
というのは、医療の市場化が求められ、公的医療の給付範囲は縮小し、医療格差は拡大するでしょうし、国民階保険崩壊の危機が訪れることになるからです。また、知的所有権の変更によって、著作権などはアメリカ企業に有利に変えられるでしょう。
公契約や公共事業への参入という点でも、外資が安く入札して日本の建設業者は壊滅的打撃を受ける可能性があります。地方の土建業者にとっては死活問題になります。
外国の農業法人が進出し、遺伝子組み換え食品や今まで認められなかった農薬なども流れ込んでくるでしょう。この点では、アメリカの遺伝子組み換え食物や種子などを取り扱うモンサントと住友化学(会長は米倉経団連会長)との親密な関係も注目されます。
遺伝子組み換え食品などの表示方法の変更や食品関連の規制撤廃によって、安い米国製品が売り込まれ、病気や病人が増大するでしょう。こうして、医療に対する需要が高まり、混合診療の解禁や新薬・高い薬の売り込みなどを通じて外国の医療ビジネスにとって大きなチャンスが生まれますが、国民にとっては医療費が増大し、自己負担が拡大することになります。
郵政・金融・保険などの分野にも、米国企業が参入してくることになります。差し当たり、郵貯・かんぽの資金267兆円が標的となることでしょう。
こうして、国民の健康と安全が脅かされ、日本はアメリカの医療資本や保険ビジネスの草刈場となります。「病気の沙汰も金次第」という、アメリカ映画「シッコ」のような未来が、この日本に訪れるにちがいありません。
とはいえ、TPP条約の内容については、おぼろげにその姿が分かるだけで、すべては暗い闇に包まれたままです。世論調査ではTPPへの支持率が高いようですが、このような恐ろしい内容が知らされていないからだと思います。
以上に見たような、主権侵害条約としてのTPPのおぞましい全貌が明らかになれば、このような世論も大きく変わることでしょう。でも、その時になってからではもう遅い、ということにならなければよいのですが……。
それもそうでしょう。基本的には秘密交渉で、交渉の進展具合も、どのよう条件があるのかも、何が決まったかも、正確には分からないのですから……。
交渉が終わってTPP条約が締結されてからも、その内容は5年間秘匿することが義務付けられているというのですから、秘密主義は決まった後でも貫かれているということでしょう。
何があるか分からない真っ暗な部屋に入ろうとしている。そして、一度入ったら、もう出られない。それが、TPP交渉という闇の世界なのです。
その闇の中には、危険な「罠」がいくつも隠されているのではないでしょうか。その「罠」の一つで最も良く知られているのがISD条項で、最近ではISDSと書かれることも多いものですが、TPP条約の代表的な「毒素」です。
「ISDS条項」は投資家保護条項(Investor-State Dispute Settlement)のことで、ある国家が自国の公共の利益のために制定した政策によって、海外の投資家が不利益を被った場合、世界銀行傘下の国際投資紛争仲裁センターなどの第三者機関に提訴できるというもので、地方自治体の規制なども訴訟の対象になる可能性があります。それに「第三者機関」とはいっても、この「紛争解決センター」はワシントンにあってアメリカ支配下の世界銀行傘下で、審判はアメリカ寄りですから、アメリカの思うままです。
現に、これまでの46件の提訴のうち31件が米国企業の原告で、米政府が負けたことは一度もないと言われています。しかも、この審理は非公開で、不服があっても上訴することができません。
先ほど「『罠』の一つ」と書きましたが、「毒素条項」そのものは一つではありません。以下のような「毒素条項」もあります。
たとえば、「ラチェット条項(Ratchet条項)」は、貿易などの条件を一たん合意したら、後でどのようなことが発生してもその条件は変更できないというものです。先発国がすでに合意した条件については、後から入った国は異議を申し立てられず、ただそれを受け入れるだけというわけです。
「NVC条項(Non-Violation Complaint条項)」というものもあります。これは「非違反提訴」のことで、米国企業が日本で期待した利益を得られなかった場合、TPPに違反していなくてもアメリカ政府が米国企業に代わって国際機関に日本を提訴できるというものです。
さらに、「スナップバック(Snap-back)条項」はアメリカ側が相手国の違反やアメリカに深刻な影響があると判断した場合、関税撤廃を反故にできるというものです。
「未来の最恵国待遇(Future most-favored-nation treatment)」という条項もあります。将来、日本が他の国にアメリカより条件の良い最恵国待遇を与えた場合、自動的にその待遇はアメリカにも適用されるというものです。
このほか、「ネガティブリスト方式」というものもあります。これは、明示された「非開放分野」以外は全てが開放されるというものです。
規制必要性の立証責任と開放の追加措置というものもあります。日本が規制の必要性を立証できない場合、市場開放のための追加措置を取る必要が生じる、例えば当初米をネガティブリストに加えていても、その規制が必要であることを立証できない場合、無条件で開放させられるというものです。
これらの条項によって、加盟国の市場は無理やりこじ開けられることでしょう。少しでも邪魔なものがあれば次々と訴訟を起こされ、アメリカ寄り(というより多国籍企業寄り)の「第三者機関」によって莫大な賠償金を支払わされます。
政府の試算では、関税撤廃が求められている農業分野だけしか対象になっていない点が批判されました。非関税障壁の撤廃が求められている農業以外の分野での影響と損害は、見方によっては、もっと大きなものかもしれません。
というのは、医療の市場化が求められ、公的医療の給付範囲は縮小し、医療格差は拡大するでしょうし、国民階保険崩壊の危機が訪れることになるからです。また、知的所有権の変更によって、著作権などはアメリカ企業に有利に変えられるでしょう。
公契約や公共事業への参入という点でも、外資が安く入札して日本の建設業者は壊滅的打撃を受ける可能性があります。地方の土建業者にとっては死活問題になります。
外国の農業法人が進出し、遺伝子組み換え食品や今まで認められなかった農薬なども流れ込んでくるでしょう。この点では、アメリカの遺伝子組み換え食物や種子などを取り扱うモンサントと住友化学(会長は米倉経団連会長)との親密な関係も注目されます。
遺伝子組み換え食品などの表示方法の変更や食品関連の規制撤廃によって、安い米国製品が売り込まれ、病気や病人が増大するでしょう。こうして、医療に対する需要が高まり、混合診療の解禁や新薬・高い薬の売り込みなどを通じて外国の医療ビジネスにとって大きなチャンスが生まれますが、国民にとっては医療費が増大し、自己負担が拡大することになります。
郵政・金融・保険などの分野にも、米国企業が参入してくることになります。差し当たり、郵貯・かんぽの資金267兆円が標的となることでしょう。
こうして、国民の健康と安全が脅かされ、日本はアメリカの医療資本や保険ビジネスの草刈場となります。「病気の沙汰も金次第」という、アメリカ映画「シッコ」のような未来が、この日本に訪れるにちがいありません。
とはいえ、TPP条約の内容については、おぼろげにその姿が分かるだけで、すべては暗い闇に包まれたままです。世論調査ではTPPへの支持率が高いようですが、このような恐ろしい内容が知らされていないからだと思います。
以上に見たような、主権侵害条約としてのTPPのおぞましい全貌が明らかになれば、このような世論も大きく変わることでしょう。でも、その時になってからではもう遅い、ということにならなければよいのですが……。
2013-03-23 07:07
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