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5月28日(火) 泥沼であがき続ける橋下大阪市長 [スキャンダル]

 政治家にとって、言葉がいかに大切であるか。一度発した言葉への責任は、いかに重いものであるのか。
 このことを、今、誰よりも痛感させられているのは、おそらく日本維新の会の共同代表である橋下徹大阪市長でしょう。一度発した言葉の真意を説明し、その責任を取るために、昨日、橋下さんは外国特派員協会に赴きました。

 外国特派員協会は、東京・有楽町のビルにあります。実は私も一度、後に官房長官になった藤村修民主党衆院議員や高木剛連合前会長と一緒に、ここで話をしたことがあります。
 このときに、特別会員証をいただきました。これを持っていれば、昨日の記者会見にも出席できたかもしれません。
 しかし、昨日の橋下さんの会見は、私などの時と違って、かなり緊迫した状況の下で行われたようです。テレビのニュースに映った橋下さんの表情は緊張感に満ちていましたから……。

 この場で、橋下さんは「私の認識と見解」と題する日本語と英語の文書(A4判、各6ページ)を用意し、一連の発言について海外メディアに説明しました。アメリカ軍の幹部に風俗業の活用を進言したことについては、「綱紀粛正を徹底してもらいたいという思いが強すぎて、アメリカ軍のみならずアメリカ国民を侮辱することにもつながる不適切な表現だった」と述べ、撤回して謝罪しました。しかし、旧日本軍の慰安婦を「必要だった」とした発言は撤回しませんでした。
 会見では、「私の一つのワードが抜き取られて報じられたのが、今回の騒動のきっかけ」だとし、慰安婦問題について「私の発言の一部が切り取られ、私の真意と正反対の意味を持った発言とする報道が世界中を駆け巡ったことは、極めて遺憾」「『戦時においては』『世界各国の軍が』女性を必要としていたのではないかと発言したところ、『私自身が』必要と考える、『私が』容認していると誤報された」などと強調したそうです。
 さらに、いわゆる従軍慰安婦の問題を巡る発言について、「かつて日本兵が女性の人権をじゅうりんしたことは痛切に反省し、慰安婦の方々に謝罪しなければならない。日本以外の少なからぬ国々の兵士も女性の人権をじゅうりんした事実に、各国も真摯に向き合わなければならないと訴えたかった」などと釈明しました。

 1993年の河野洋平官房長官談話については、「河野談話で書かれていることはおおむね事実」「(慰安所の)施設に軍が関与していたことも間違いない」とした上で、強制性の有無の記述があいまいだとして「政治的に妥結した文書。国家の意思として組織的に女性を拉致、人身売買した事実があったのかなかったのか、日本政府は明確化すべきだ」と、重ねて持論を主張しただけです。
 そのうえで、「あたかも日本だけに特有の問題であったかのように日本だけを非難し、日本以外の国々の兵士による女性の尊厳のじゅうりんについて口を閉ざすのは、フェアな態度ではない」と主張しました。
 また、記者団が、一連の発言で諸外国の反発を招いたことへの責任の取り方を質問したのに対し、「民主主義の国では、政治家の政治的な責任は選挙で審判を受けることだ。私の発言に国民がノーと言えば、参議院選挙で維新の会は大きく敗北するだろう。選挙結果を受けて代表のままでいられるのか、党内で議論があると思う」と述べました。

 「河野談話」とは、1993年8月に当時の河野洋平官房長官が発表したもので、歴代の内閣はこの談話を継承する姿勢を示してきました。この中では、慰安所の設置について、「軍当局の要請により設営されたものであり、慰安所の設置、管理及び慰安婦の移送については、旧日本軍が直接あるいは間接にこれに関与した」と説明しています。
 また、慰安婦の募集については、「軍の要請を受けた業者が主としてこれに当たったが、その場合も、甘言、強圧による等、本人たちの意思に反して集められた事例が数多くあり、さらに官憲等が直接これに加担したこともあった」とし、強制的な連行があったとしています。そのうえで、「多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた」として、謝罪と反省を表明したものです。
 しかし、その後、2007年3月に、当時の第一次安倍内閣が、慰安婦の募集については、「政府が発見した資料の中には、軍や官憲によるいわゆる強制連行を直接示すような記述も見当たらなかった」などとして、「狭義の強制性」を裏付ける証拠はないという見解を示しました。橋下さんが、会見で「政治的に妥結した文書。国家の意思として組織的に女性を拉致、人身売買した事実があったのかなかったのか、日本政府は明確化すべきだ」と述べたのは、この点に関わっています。

 このように、橋下さんの発言の背景には、2007年の第1次安倍内閣の見解があります。また、今回の発言も、第二次安倍内閣の発足に当たって安倍首相が「河野談話」と「村山談話」を見直すとして有識者会議で検討する意向を示したためであると思われます。
 つまり、今回の橋下妄言を引き出した大きな原因の一つは、安倍首相にあると言うべきです。その安倍首相は、この間の歴史認識問題に対するアメリカからの批判や周辺諸国からの反発にたじろいで、「河野談話」や「村山談話」を継承するかのようなポーズを取り始めました。
 これを見た橋下さんは、極右空間での支持を競い合い、参院選に向けて安倍自民党との違いを際立たせるために、意識的に右翼的世論に迎合するような極論を吐いたということではないでしょうか。もちろん、その発言には人権感覚の欠如や女性に対する蔑視、男性への誤解など、彼個人に特有の欠陥が如実に反映されてもいましたが……。

 しかし、そのような目論見は無惨に破綻し、橋下さんの予想を超えて大きな国際問題に発展してしまいました。その結果、弁明せざるを得なくなり、起死回生の逆転を狙って、のこのこと出かけていったのが今回の外国特派員協会での会見だったというわけです。
 これで釈明できたと言えるのでしょうか。恐らく、そうではないでしょう。「責任の追及をかわす姿に、特派員からは『さすが弁護士』と皮肉の声が上がり、事態収束を図ろうとした狙いは不発に終わった」という論評があるほどですから……。
 責任の取り方を問われた橋下さんは、「私の発言に国民がノーと言えば、参議院選挙で維新の会は大きく敗北するだろう。選挙結果を受けて代表のままでいられるのか、党内で議論があると思う」と答えていました。選挙で負けたら、共同代表を続けていられないだろうというわけです。

 橋下発言を認めるのか、認めないのか。その答えは、来るべき参院選で、国民によって出されるべきものでしょう。
 維新の会を大きく敗北させ、選挙結果を受けて代表のままでいられなくすることによって、今回の暴言・妄言の政治的な責任を橋下さんに取らせることが必要です。そうすることによって初めて、橋下発言は明確に断罪され、日本国民の良識が世界に示されることになるでしょうから……。

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