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6月3日(月) アベノミクスによる労働の規制緩和の再起動(その1) [論攷]

〔以下の論攷は、『月刊社会民主』6月号に掲載されたものです。2回に分けてアップします。〕

 規制緩和政策が「成長戦略」の中心課題

 「規制改革が一丁目一番地で重要」。産業競争力会議の民間議員である竹中平蔵慶応大学教授は1月23日、『日経新聞』のインタビューに応じてこう語った。安倍首相も、翌日の規制改革会議での挨拶で「規制改革は安倍内閣の一丁目一番地であります。『成長戦略』の一丁目一番地でもあります」と述べている。
 こうして、規制改革という名の規制緩和政策が、「成長戦略」の中心課題として浮上することになった。そして、この規制改革の一環として打ち出されているのが雇用の規制緩和である。それは、かつて小泉首相時代の新自由主義的な構造改革として実行され、非正規化の拡大と労働の劣化、貧困の増大と格差の拡大をもたらす契機となった労働の規制緩和の再起動を意味している。
 竹中慶応大学教授の言う「一丁目一番地」には、小泉構造改革によって破壊された雇用と労働の「廃墟」が残っていた。それを更地にし、「成長戦略」という新しい装いの下に建物を建てて再び売り出そうというのである。

 過去の規制改革検討作業の継続

 安倍第二次内閣はデフレからの脱却と日本経済の再生を最大の目標に掲げている。そのために、総裁の交代など日銀の体制を変えて量・質ともに異次元の金融緩和政策を打ち出し、「国土強靱化」を掲げて巨額の財政出動による公共工事に取り組もうとしている。
 これに加えて、経済成長のための新たな戦略が模索されている。これが「第三の矢」としての「成長戦略」である。そのために、四つの組織が新設された。
 まず、1月8日に日本経済再生本部の第1回会議が開かれ、産業競争力会議が設置された。翌1月9日には経済財政諮問会議が復活し、6月には「骨太の方針」を出すべく活動を開始した。そして、1月24日には規制改革会議が第1回の会議を開いている。
 このような枠組み全体の司令塔となるのは経済財政諮問会議である。これは小泉構造改革の推進力となった戦略的機関の復活であり、4人の民間議員から労働界の代表が排除されている点でも変わりはない。
 日本経済再生本部は閣僚だけで構成され、その下に産業競争力会議が設置された。注目されるのは、そのメンバーとして小泉内閣時代に新自由主義的な構造改革を先導した竹中平蔵元経済財政担当相が加わったことである。
 また、規制改革会議には竹中元担当相の後任として経済財政諮問会議の議長を務めた大田弘子政策研究大学院大学教授も選任され、議長代理になっている。そればかりではない。規制改革会議には、小泉内閣時代の規制改革・民間開放推進会議の専門委員を努めていた安念潤司中央大学教授(当時、成蹊大学教授)と翁百合子日本総合研究所理事も加わっている。
 さらに、第1回規制改革会議に出された「金丸委員提出資料」には、「過去の規制改革会議の成果を有効活用し、残された大きな課題について優先的に検討」すべだと記されていた。過去の一連の規制改革検討作業との継続性は明らかである。

 規制緩和の新たな狙い

 他方、産業競争力会議には楽天の三木谷浩史会長兼社長やローソンの新浪剛史社長も加わっている。三木谷氏は昨年6月に発足した「新経済連盟」の会長であり、これは10年2月に設立された「eビジネス推進連合会」が新産業も含めて衣替えしたものである。
 以上のような枠組みと構成から、何が明らかになるのだろうか。
 それは第一に、小泉構造改革の継承と復活である。安倍首相は小泉内閣時代の官房長官であり、小泉元首相の後継者として第一次内閣を組織した経緯がある。小泉亜流の新自由主義的路線を継承しても不思議ではない。
 第二に、新たな産業分野の「成長力」を採り入れようという狙いである。リーディング産業をITビジネスやコンビニなどの流通産業、医療・福祉産業などへとシフトさせていくことがめざされており、そのために労働力が「過剰」となっている製造業や建設業、不況の波に呑まれた電機産業などからの労働力移動を円滑にしようというのである。
 そして、第三に、このような労働力移動を支援するための規制改革という課題が浮上する。雇用維持型から労働移動支援型へと雇用政策のコンセプトを大転換しようというわけである。そのために邪魔になる規制を撤廃し、労働力の移動と働き方の多様化がめざされることになる。
(続く)

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