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7月14日(日) なぜ規制緩和が成長戦略の柱とされるのか [規制緩和]

 昨日のブログで、規制緩和は公正で自由な競争を失わせ、経済成長に向けての推進力をも失わせると書きました。それなのに、なぜ規制緩和が成長戦略の柱とされているのでしょうか。

 それには二つの理由があります。一つは、本来の成長戦略を避けるための「目くらまし」として利用するためです。もう一つは、それに変わる何らかの成長戦略らしきものを提起しなければ、国民の納得を得られないからです。
 しかし、このような規制緩和に頼るやり方が期待されたような成果をもたらさないことは、すでに事実によって立証されています。小泉構造改革は確かに大企業の儲けを増やし、2002年から07年にわたる「いざなぎ越え景気」によって大企業は史上最高益を更新し続けましたが、しかし、労働者の収入は増えず、デフレ脱却の効果はありませんでした。だから、「失われた20年」となり、今回、再びデフレ脱却を政策課題としなければならなくなったのです。
 そればかりではありません。「実感なき景気回復」によって大企業内にだぶついた資金は「投資」ではなく「投機」にまわり、アメリカでの住宅投資に殺到してリーマン・ショックを引き起こしました。今回も、同様の経過を辿る危険性があります。

 それでは、このような危険性を避けるためにはどうすれば良いのでしょうか。そのためには、規制緩和などの誤った「目くらまし」に頼ることなく、実効性のある二つの施策を堂々と実施すれば良いのです。
 その一つは、労働者の所得を引き上げて労働分配率を高めることです。260兆円とも言われる大企業の膨大な内部留保を取り崩して、賃金を引き上げる原資に回すべきです。
 そうすれば、貯め込まれている過剰資金を市場にはき出させることができ、労働者の購買力を高めることもできます。まさに、金融資産として死蔵されている大企業の貯金を活用する一石二鳥の方策ではありませんか。

 もう一つは、この間、拡大してきた所得格差を是正することです。そのためには、富裕層から貧困層に所得を移すための再分配政策を本格的に実施しなければなりません。
 一般的に言って、富裕層は貯蓄性向が高く、貧困層は消費性向が高いという傾向があります。富裕層から貧困層への所得の再分配は、貯め込まれた富を消費に回すことによって、有効需要を生み出すことができます。
 そのためには、消費増税などの大衆課税を止め、所得に対する累進課税を強めるなどの税制改革を行い、社会福祉を充実しなければなりません。このような政策によって消費活動を活性化すれば、景気は上向いてデフレからの脱却は容易になるでしょう。

 このような施策が有効であることは、たいていの人には理解されるはずです。それなのに、どうして規制緩和などの「目くらまし」に頼ろうとするのでしょうか。
 このようなやり方では上手くいかないことは、すでに小泉構造改革によって明らかになっているというのに。失敗を運命づけられている愚策に、なぜ再び頼ろうとしているのでしょうか。
 そこにこそ、大企業と富裕層の利益代表としての自民党の最大の限界と弱点があります。いくら有効性が明らかであっても、大企業と富裕層の利益を優先しようとする限り、それを実行できないからです。

 労働者の収入を増やすためには、正規雇用を拡大して雇用を安定させ、定期昇給や最低賃金の引き上げを実行すればよいのです。大企業の内部留保に対して課税すれば、その原資は簡単に調達できるでしょう。
 所得の再分配のためには、消費税の増税を中止し、社会保障サービスの充実を図ればよいのです。企業減税などを取り止め、富裕層への累進課税や金融資産に対する課税を強めれば、そのような再配分は簡単にできるはずです。
 しかし、自民党が大企業と富裕層の利益を代弁する立場を放棄しない限り、そのような政策を実施することはできません。だから規制緩和なのであり、すでに失敗した道をもう一度進まなければならなくなっているわけです。

 こうして、成長戦略をめぐる二つの道の対立が浮かび上がってくることになります。そのうちのどちらを選択するのかということも、今回の参院選で問われている重大な争点の一つであるということになるでしょう。
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