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8月31日(土) 「日本は社長の給料が低すぎる」と言う三木谷さんはどれだけの給料をもらっているのか [企業]

 あいかわらず酷暑の日々が続いていますが、そのくそ暑かった8月も今日で終わりです。この夏休みの間、私も「宿題」を抱えていました。
 それは、旬報社から依頼された原稿「第二次安倍内閣がめざす労働の規制緩和」の執筆で、すでに著者校正も終わっていますから、『労働法律旬報』9月上旬号に掲載される予定です。刊行されたましたら、ご笑覧いただければ幸いです。

 この論攷を執筆するために、経済財政諮問会議、日本経済再生本部、産業競争力会議、規制改革会議、その下に設置された雇用ワーキング・グループなどの戦略的政策形成機関(戦略的機関)の議事要旨、記者発表、報告書などを読みました。これらは全てウェッブ・サイトで公表されていますから、誰でも目を通すことができます。
 とはいえ、その分量はかなりの量になりますから、全てに目を通す人はそう多くはいないでしょう。読むのは大変ですが、そこで展開されている議論には大いに興味をそそられるものがありました。
 興味のある方には、直接目を通されることをお勧めします。そこには、次のような興味深い意見を開陳される方もいるのですから。

(三木谷議員)一方で、日本は社長の給料が低すぎる。リストラにしろ、合併にしろ、大変なことなので、そういうことをするためにアップサイドを上げるということが非常に重要であり、株式報酬の制度を積極的に活用していくことで、経営者サイドにもインセンティブを出してほしい。

 ここで「三木谷議員」と書かれているのは、三木谷浩楽天会長兼社長のことです。この発言は、「産業の新陳代謝の促進について、人材力強化・雇用制度改革について」を議題として3月15日に開かれた産業競争力会議の第4回会議でなされたものです。
 驚きましたね。この意見を読んで。
 同時に思いましたね。「日本は社長の給料が低すぎる」と仰る三木谷さんは、一体、どれだけの給料をもらっているのか、と。

 そう言えば、『週刊朝日』2013年7月26日号に、「『社長の給料』実名ランキング」という特集がありました。これは、「年間1億円以上役員301人を徹底解剖」したものです。
 つまり、日本には、年収「1億円以上」かせぐ役員は301人もいるというわけです。ところが驚いたことに、ここには三木谷さんの名前は出てきません。実名のリストで出てくるのは、97番目の1億5600万円までですから、三木谷さんの年収はこれよりも低いということなのでしょうか。
 「社長の給料が低すぎる」と言ったのは、三木谷さん自信のことだったのかもしれません。高額報酬トップに返り咲いた日産自動車のカルロス・ゴーン会長兼社長・CEOの年収は9億8800万円で、社員の平均年収の141倍にもなるというのですから、決して「低すぎる」ということはないでしょう。

 ここに名前が出てこない三木谷さんにしても、ウィキペディアによれば、「2008年にはフォーブス誌の日本人富豪ランキング8位にランクイン、38億ドル(約4000億円)保有していると報じられ、2009年には36億ドル(約3384億円)で7位にランクイン、2010年には47億ドル(約4277億円)で6位にランクイン、2011年には56億ドル(約4648億円)世界ランキング182位、日本富豪ランキングでは5位にランクインした」と書かれています。
 世界有数の資産家であるということは明らかでしょう。これらの資産を貯め込む原資となったのは、楽天の社長や会長を歴任したことから得られた報酬ではありませんか。
 それだけの収入を得て巨額の資産を形成した人が、「給料が低すぎる」と圧力をかけるような発言をしている。それも、「人材力強化・雇用制度改革について」議論している戦略的機関において……。

 呆れかえってしまいました。これでは「楽天」ではなくビックリ「仰天」です。
 三木谷さんは原子力発電に批判的な発言を行い、「電力業界を保護しようとする態度がゆるせない」として経団連を脱退し、新経済連盟(新経連)という新しい経済団体を立ち上げて代表理事に就任している方です。この新経連が原発依存からの脱却や節電・省エネの推進を訴えるエネルギー政策に対する提言書をまとめるという報道もありました。
 ということで、それなりに注目していたのですが、三木谷さんも国の政策形成に関与する機会を利用して自らの利益を図ろうとしていたのかと、ガッカリしてしまいました。所詮、大企業の経営者とはこんなもの、なのでしょうか。

 「経営者サイドにもインセンティブを出してほしい」などと仰っていますが、「インセンティブを出」すべきなのは、従業員サイドに対してでしょう。収入が減って、貧困に苦しんでいるのは、従業員なのですから……。
 産業の競争力を回復し、人材力を強化するためにもっと給料を上げるべきだという発言なら、「全くその通り」だと思います。しかし、それは一般の社員について、とりわけ年収200万円以下のワーキングプアについてでしょう。
 「給料が低すぎる」のは社長ではありません。社員・従業員であり、非正規労働者なのです。

 もっと社員の給料を上げるべきだ、原資が足りなければ社長の給料を削れと、何故、三木谷さんはそう言わなかったのでしょうか。日本産業の競争力回復のためにそれが必要なら自己犠牲を厭わないくらいの気概を示すことこそ、「産業競争力会議」という戦略的機関に選ばれた民間議員の有るべき姿だったのではないでしょうか。

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