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9月3日(火) 安倍首相は取り組むべき政治課題の優先順位を間違えているのではないか [原発]

 「トイレのないマンション」で汚水があふれ出している時に、お客を招いて盛大なパーティーを開こうとしているようなものです。あるいは、沈みゆく船の上で大宴会の準備にうつつを抜かしていると言うべきでしょうか。

 今の日本の状況を喩えて言えば、こういうことになるでしょう。東京電力福島第一原子力発電所の貯水タンクからの高濃度汚染水漏れが深刻化しているというのに、政府は東京オリンピックの招致に地道をあげ、不利になるからと言って汚染水問題処理についての国会審議を先送りしたといわれているくらいですから……。
 放射能汚染水漏れ事故については、原子力規制委員会が国際原子力事象評価尺度のレベル3と認定し、毎日のように新たな漏水が明らかになっています。これまでどれだけ漏れだしたのか、これからそれをどのようにして防ぐのかが不明確なままで、海外メディアも大きく取り上げています。
 その対応策を東電まかせにせず、政府が全力を挙げて取り組むべきであることは明らかです。この問題こそ、今、安倍政権が全力で取り組むべき最重要課題だったのではないでしょうか。

 ところが、安倍首相は汚染水問題が深刻化するなか、中東諸国歴訪で日本を留守にしていました。これから全力で取り組むのかと思っていたら、今度はオリンピック招致のためにアルゼンチンのブエノスアイレスまで行くのだそうです。
 いったい何を考えているのか、と言いたくなります。汚染水問題に頭を悩まし、原発事故や大震災からの復旧・復興の遅れに苛立っている被災者は、オリンピック招致に浮かれている安倍首相や猪瀬東京都知事の姿をどのような気持ちで見ているでしょうか。
 日本消費者連盟は、政府、原子力規制委員会、東京電力に要請書を送付し、放射能汚染水の流出問題を最優先課題として位置づけ、全社会的な取り組み体制の構築を急ぐべきだとし、国際環境NGOのFoE Japanも声明を発表して、汚染水対策に人的資源を集中すること、原発再稼働議論の凍結と原発輸出政策の撤回を求めています。安倍政権は、これらの要請に正面から応えるべきでしょう。

 当然、秋の臨時国会でもこの問題が最優先されなければならないのに、改憲や軍事力強化の課題が目白押しという状況です。安倍首相は取り組むべき政治課題の優先順位を間違えているのではないでしょうか。
 安倍首相は、有りもしない幻の危機対応ではなく、「今、そこにある危機」を直視し、全力で取り組まなければなりません。
 「今、そこにある危機」とは、高濃度汚染水の垂れ流し、震災復興の遅れ、国際社会での日本の孤立化、とりわけ、韓国や中国など周辺諸国との関係悪化、貧困と格差の拡大、物価の値上がりと生活苦の増大、雇用の劣化・不安定化と「ブラック企業」の横行などです。これらの課題の解決こそが、今、緊急に求められている重要課題なのです。

 原発の再稼働や売り込みではなく汚染水の処理などの事故対応、TPPへの参加や公共事業のバラマキではなく震災からの復旧・復興、アメリカと一緒に戦う戦争の準備ではなく周辺諸国との関係改善、消費税の増税ではなく生活の安定、企業の活躍しやすい国ではなく労働者の働きやすい国をめざすために、力を尽くすべきでしょう。しかし、安倍首相のめざしている方向は、全ての課題において逆の方向をめざしています。
 言うまでもなく、政治においては、用いることのできるお金も時間もエネルギーも限られています。その政治の資源である資金、時間、エネルギーを無駄遣いするべきではありません。
 その資源をどのような課題に優先的に配分するかという選択において、政権の性格や政治の方向性は明確になります。安倍首相には、今の政権が取り組むべき最優先改題は何か、もう一度胸に手を当ててじっくり考えてもらいたいものです。

 ようやく昨日になって安倍晋三首相は政府与党連絡会議であいさつし、福島第一原子力発電所の汚染水問題について、国が前面に出て抜本的な対策を講じるとして解決に向け早急に基本方針を取りまとめる、と述べました。会議では、菅義偉官房長官が3日の原子力災害対策本部において、政府としての総合対策を提示することを明らかにしたそうです。
 政府は原発事故に対する危機意識を高め、現在の汚染水をめぐる状況が危機的なレベルの非常事態であることをはっきりさせなければなりません。持てる力の全てを動員し、全責任を負う覚悟で事故対策を抜本的に改めて取り組む姿勢を明確にするべきでしょう。

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