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10月21日(月) 「特区諮問会議」の設置は規制緩和のために「ブレーキ」を解除しようとするものだ [規制緩和]

 「特区諮問会議 設置へ」「医療・雇用・農業 関係大臣を外す」
 本日の『朝日新聞』の一面に、このような見だしが踊っていました。この記事は、次のように伝えています。

 政府は20日、国家戦略特区を進めるための関連法案に、安倍晋三首相を議長とする「特区諮問会議」の設置を盛り込む方針を固めた。メンバーからは厚生労働相、農林水産相など関係分野の大臣を外す。各省庁の規制を守りがちな大臣の「抵抗」を抑え、トップダウンで規制緩和を進めるねらいだ。
 ……
 政府は11月上旬に臨時国会に関連法案を出し、どこを特区にするかや特区ごとにどの規制を緩めるかを決める特区諮問会議の設置も盛り込む。経済財政諮問会議と同じ「法定組織」になり、政府方針を定めるといった強い権限を持つ。

 何としても、遮二無二、規制緩和をすすめようという安倍首相の強い決意がうかがわれます。抵抗を排する、ということで、「厚生労働相、農林水産相など関係分野の大臣を外す」というのですから、呆れてしまいます。
 それぞれの担当大臣は、担当する行政についての最終的な責任を負うべき立場にあります。だからこそ、国民のためにならないと考えれば、たとえ安倍首相の強い意向であっても抵抗するわけです。
 すでにこれまでも、産業競争力会議や規制改革会議で、大胆な規制緩和を求める民間議員と、それに対して異議を唱えて抵抗する担当大臣という構図ができていました。その担当大臣を外すための装置として「特区諮問会議」を設置しようというわけですから、まさに「暴走」のためのブレーキ解除と言うべきでしょう。

 そもそも、このような形で「特区」を設け、そこでだけ憲法や法律による規制を弱めようというやり方には、大きな問題があります。一定地域に住み働く人に対してだけ、憲法や法の保護・規制を緩和するということですから、「法の下の平等」に反するからです。
 また、解雇規制や労働基準の緩和など、憲法で保障された人権の保護を特区の設置によって弱めるということになれば、法律によって憲法の内実を変えてしまう結果をもたらします。
 下位法たる法律によって、基本法にして上位法である憲法の一部修正を行うようなものですから、憲法解釈の変更による集団的自衛権の行使容認と同様、「憲法下克上」ないしは「憲法クーデター」と言うべきものです。このようなことが許されれば、憲法による人権保障は有名無実となるでしょう。

 開幕した臨時国会は、「官邸主導国会」と言われています。このようなやり方から見れば、実際には「官邸独裁国会」と言う方が相応しいものではないでしょうか。
 野党の無気力さと内閣支持率の高さを背景に、安倍首相はやりたい放題の「暴走」を始めつつあります。それを目隠しするために、「安保法制懇」などの私的諮問機関や経済財政諮問会議・産業競争力会議・規制改革会議などの戦略的政策形成機関を利用してきました。
 今回また、邪魔者を追い出して好き勝手な規制緩和を行うために、「特区諮問会議」という戦略的政策形成機関を新設しようとしています。民主的な手続きの仮面を被った「独裁」的な手法だと言うべきでしょう。

 前回のブログで紹介した『日本経済新聞』10月18日付のコラム「春秋」は、「経済の『特区』は科学の『実験室』に似ているかもしれない」と指摘していました。その「特区」で「実験」されようとしている規制緩和のターゲットは、国民の暮らしや働き方に向けられています。
 このコラムを書いた「春秋」子は、「実験」の材料が生きた生身の人間であるということをどれだけ自覚していたでしょうか。「実験」の結果によっては、その人々の生活や人生が大きく狂わされてしまうということ、すでに小泉構造改革の「実験」によってそのような人々が大量に生み出され、大きな社会問題となっているということを、どれほど認識していたでしょうか。

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