12月29日(日) 安倍内閣と国民が本格対決 異議申し立てで変化を [論攷]
〔以下のインタビュー記事は、『東京民報』2013年12月29日・2014年1月5日付に掲載されたものです。〕
2014年は猪瀬都知事の辞任による都知事選が2月に予定され、国政でも安倍政権の暴走に国民の強い批判がわき起こる激動のなかで幕開けします。2013年の政治を振り返るとともに、新たな1年がどういう展望を持つ年になるのかを、法政大学大原社会問題研究所教授の五十嵐仁さんに聞きました。
2014年 政治の展望
―昨年12月はちょうど、総選挙、知事選が行われていました。この1年間、大激動が続きましたが、それらを振り返ってどういうことを感じますか。
一言でいえば、「あきらめから期待へ、絶望から希望への1年」ということです。総選挙と参院選で、衆参両院ともに「自民一強体制」が生まれ、都知事選では石原氏の後継候補だった猪瀬氏が434万票という過去最高の票を得ました。「国政も都政もこれからどうなってしまうんだろう」という、ある種のあきらめと絶望のような気分が広がったように思います。
しかし、猪瀬氏は就任後わずか1年で徳洲会からの裏金疑惑で辞任し、秘密保護法案をめぐる大きな運動が国政を揺るがしました。
また、福島での原発ゼロを求める動きや沖縄での米軍基地移設反対、北海道をはじめとした各地のTPP(環太平洋経済連携協定)反対の運動など、地方からの新しい変化、広く深い地殻変動も生じています。
さらに、秘密保護法案反対運動に象徴されるように、安倍内閣が進めようとしている悪政への危機感が広く共有され、国民の行動力が高まっています。
そのなかで、茨城県筑西市や群馬県みなかみ町、沖縄県北谷町など、共産党の候補が補選で一議席を争い、自民党や保守系候補を破って当選するという結果も生まれています。
安倍政権へのマスコミの論調も大きく変わりました。安倍内閣の支持率は峠を越え、その終わりが始まっています。政治を良くしていくための希望の灯が見えてきたなかでの年明けといえるのではないでしょうか。
かなぐり捨てた猫かぶり
―秘密保護法に象徴されるような安倍政権の暴走について、どう感じておられますか。
安倍首相はわずか1年で放り出すことになった第一次政権での失敗から、ある程度の教訓を引き出したのだと思います。私の言葉で言えば「騙しのテクニック」を身につけたということになるでしょう。
このため、就任からしばらくはアベノミクスという経済政策を前面に出し、持論であるタカ派的な政策を抑制してきました。しかし、それもわずか8カ月にすぎません。参院選で衆参の「ねじれ解消」を果たしたのを機に、本質を露わにしてきています。
秘密保護法案をはじめとした臨時国会で相次いだ強行採決は第一次安倍政権でも繰り返されたもので、強権的な政権運営の本来の姿が現れました。いわば「猫かぶりの虎」が猫をかなぐり捨てて牙をむきだしにしてきたのです。
今後は、4月の消費税増税をはじめ、安倍政権が予定する各種の増税で消費不況が再現し、アベノミクスは破たんするでしょう。また、軍事費の増大、国家安全保障会議の本格稼働、国家安全保障戦略の策定と基本法の制定、新防衛計画の大綱に基づく日米ガイドラインの見直し、武器輸出三原則の緩和、秘密保護法の施行、集団的自衛権の行使容認、オスプレイの配備や訓練、愛国心重視の教育改革、それに改憲など、書き出したらきりがないほどタカ派政策が目白押しです。
安倍政権の経済政策の失敗とタカ派政策の強行が予想される2014年は、「ハンドル」を右へ右へと切って日本経済と国民生活をなぎ倒そうという安倍首相と国民との本格的な対決の年になると思います。
共産党は「見える」ように
―2013年夏の都議選、参院選は自民党が圧勝し、共産党も健闘するという共通する結果になりました。
民主党政権の失政に対する国民の怒り、政権交代にかけた期待を裏切ったことへの失望が、このような結果を生んだと思います。
振り返ってみると、安倍政権のさまざまな暴走の主要な部分のいくつかは、民主党政権が始めたものです。消費税増税やTPP参加は菅直人首相が言い出しましたし、野田佳彦首相は「税と社会保障の一体改革」をごり押しして民主党を分裂させました。また、「動的防衛力構想」を唱えて軍事力強化を打ち出したのも民主党政権です。
そういった自民党と変わらない民主党政治への国民の失望や怒りが選挙での投票率低下を生み出し、民主党の惨敗をもたらしました。特に衆院選では、小選挙区制の害悪もあって、有権者の絶対得票率では4分の1ほどにすぎない自民党が議席数では圧勝しました。
また、参院選や都議選をみると、「風」頼みではない政党の底力が示されたともいえるでしょう。政党としての地力、組織的な力を持っている共産党だけでなく、自民党や公明党なども健闘しましたから。
共産党について言うと、「2大政党制」の枠組みが崩れたなかで、有権者からその姿が「見える」ようになったことも大きかったと思います。ネット選挙が解禁されてIT(情報通信手段)を活用したことや、若い候補者の起用、都議選での躍進でマスコミの注目が高まったことなどが功を奏しました。今後も、正しいことを言うだけでなく、それをどう伝えるか、マスコミやインターネットを通じて、多くの人に「オヤッ」と注目されるようなアクションを工夫し、続けてほしいと思います。
背景にあったデモの復権
―2014年は激動の中での幕開けになります。どんな展望を持っておられますか。
平和国家として生き続けるのか、戦争国家に変わってしまうのか、本格的に問われる岐路の年になるでしょう。そのなかで、いま生まれている新しい芽、深部で始まった変化を現実の変化、政治勢力の変化に結びつけることが課題になってきます。
反原発の官邸前行動や秘密保護法案反対の行動には、今後に生かすべきものが多くあります。特に秘密保護法案反対の行動は、いわば「プール」のように、消費税増税反対やTPP反対、原発反対など、各分野で取り組まれてきた運動が流れ込む場となりました。
バーチャル(IT)とリアルの結合という形で、こうした運動に多くの市民層が個人として参加したのも特徴的です。団体などの運動主体が身近なところになくても、フェイスブックやツイッターなどで運動情報に出会って行動に移るということが、ますます多くなってくるでしょう。
こうしたことの背景には、「デモの復権」とでもいうべき現象があります。反原発の官邸前行動が注目を浴び、しかもずっと続いてきたなかで、デモや集会で意思表示をするのは当たり前だという空気が社会に生まれました。そこに起きたのが秘密保護法案制定の動きだったのです。
現在の日本は、選挙を通じて国政に意思を反映するという間接民主主義がうまく機能せず、世論と国会内の勢力分布がかけ離れ、逆転してしまっています。そのなかで、デモや集会による異議申し立てなど直接行動による民主主義の回復が求められているのです。
こうした直接行動の動きを自民党や政権がいかに恐れ嫌がっているかは、秘密保護法案反対のデモをテロと同一視した石破茂自民党幹事長の発言がよく表しています。このような異議申し立ての行動を通して、2014年を安倍首相に引導をわたす年、解散・総選挙を実現させる年にしなければならないと思います。
2014年は猪瀬都知事の辞任による都知事選が2月に予定され、国政でも安倍政権の暴走に国民の強い批判がわき起こる激動のなかで幕開けします。2013年の政治を振り返るとともに、新たな1年がどういう展望を持つ年になるのかを、法政大学大原社会問題研究所教授の五十嵐仁さんに聞きました。
2014年 政治の展望
―昨年12月はちょうど、総選挙、知事選が行われていました。この1年間、大激動が続きましたが、それらを振り返ってどういうことを感じますか。
一言でいえば、「あきらめから期待へ、絶望から希望への1年」ということです。総選挙と参院選で、衆参両院ともに「自民一強体制」が生まれ、都知事選では石原氏の後継候補だった猪瀬氏が434万票という過去最高の票を得ました。「国政も都政もこれからどうなってしまうんだろう」という、ある種のあきらめと絶望のような気分が広がったように思います。
しかし、猪瀬氏は就任後わずか1年で徳洲会からの裏金疑惑で辞任し、秘密保護法案をめぐる大きな運動が国政を揺るがしました。
また、福島での原発ゼロを求める動きや沖縄での米軍基地移設反対、北海道をはじめとした各地のTPP(環太平洋経済連携協定)反対の運動など、地方からの新しい変化、広く深い地殻変動も生じています。
さらに、秘密保護法案反対運動に象徴されるように、安倍内閣が進めようとしている悪政への危機感が広く共有され、国民の行動力が高まっています。
そのなかで、茨城県筑西市や群馬県みなかみ町、沖縄県北谷町など、共産党の候補が補選で一議席を争い、自民党や保守系候補を破って当選するという結果も生まれています。
安倍政権へのマスコミの論調も大きく変わりました。安倍内閣の支持率は峠を越え、その終わりが始まっています。政治を良くしていくための希望の灯が見えてきたなかでの年明けといえるのではないでしょうか。
かなぐり捨てた猫かぶり
―秘密保護法に象徴されるような安倍政権の暴走について、どう感じておられますか。
安倍首相はわずか1年で放り出すことになった第一次政権での失敗から、ある程度の教訓を引き出したのだと思います。私の言葉で言えば「騙しのテクニック」を身につけたということになるでしょう。
このため、就任からしばらくはアベノミクスという経済政策を前面に出し、持論であるタカ派的な政策を抑制してきました。しかし、それもわずか8カ月にすぎません。参院選で衆参の「ねじれ解消」を果たしたのを機に、本質を露わにしてきています。
秘密保護法案をはじめとした臨時国会で相次いだ強行採決は第一次安倍政権でも繰り返されたもので、強権的な政権運営の本来の姿が現れました。いわば「猫かぶりの虎」が猫をかなぐり捨てて牙をむきだしにしてきたのです。
今後は、4月の消費税増税をはじめ、安倍政権が予定する各種の増税で消費不況が再現し、アベノミクスは破たんするでしょう。また、軍事費の増大、国家安全保障会議の本格稼働、国家安全保障戦略の策定と基本法の制定、新防衛計画の大綱に基づく日米ガイドラインの見直し、武器輸出三原則の緩和、秘密保護法の施行、集団的自衛権の行使容認、オスプレイの配備や訓練、愛国心重視の教育改革、それに改憲など、書き出したらきりがないほどタカ派政策が目白押しです。
安倍政権の経済政策の失敗とタカ派政策の強行が予想される2014年は、「ハンドル」を右へ右へと切って日本経済と国民生活をなぎ倒そうという安倍首相と国民との本格的な対決の年になると思います。
共産党は「見える」ように
―2013年夏の都議選、参院選は自民党が圧勝し、共産党も健闘するという共通する結果になりました。
民主党政権の失政に対する国民の怒り、政権交代にかけた期待を裏切ったことへの失望が、このような結果を生んだと思います。
振り返ってみると、安倍政権のさまざまな暴走の主要な部分のいくつかは、民主党政権が始めたものです。消費税増税やTPP参加は菅直人首相が言い出しましたし、野田佳彦首相は「税と社会保障の一体改革」をごり押しして民主党を分裂させました。また、「動的防衛力構想」を唱えて軍事力強化を打ち出したのも民主党政権です。
そういった自民党と変わらない民主党政治への国民の失望や怒りが選挙での投票率低下を生み出し、民主党の惨敗をもたらしました。特に衆院選では、小選挙区制の害悪もあって、有権者の絶対得票率では4分の1ほどにすぎない自民党が議席数では圧勝しました。
また、参院選や都議選をみると、「風」頼みではない政党の底力が示されたともいえるでしょう。政党としての地力、組織的な力を持っている共産党だけでなく、自民党や公明党なども健闘しましたから。
共産党について言うと、「2大政党制」の枠組みが崩れたなかで、有権者からその姿が「見える」ようになったことも大きかったと思います。ネット選挙が解禁されてIT(情報通信手段)を活用したことや、若い候補者の起用、都議選での躍進でマスコミの注目が高まったことなどが功を奏しました。今後も、正しいことを言うだけでなく、それをどう伝えるか、マスコミやインターネットを通じて、多くの人に「オヤッ」と注目されるようなアクションを工夫し、続けてほしいと思います。
背景にあったデモの復権
―2014年は激動の中での幕開けになります。どんな展望を持っておられますか。
平和国家として生き続けるのか、戦争国家に変わってしまうのか、本格的に問われる岐路の年になるでしょう。そのなかで、いま生まれている新しい芽、深部で始まった変化を現実の変化、政治勢力の変化に結びつけることが課題になってきます。
反原発の官邸前行動や秘密保護法案反対の行動には、今後に生かすべきものが多くあります。特に秘密保護法案反対の行動は、いわば「プール」のように、消費税増税反対やTPP反対、原発反対など、各分野で取り組まれてきた運動が流れ込む場となりました。
バーチャル(IT)とリアルの結合という形で、こうした運動に多くの市民層が個人として参加したのも特徴的です。団体などの運動主体が身近なところになくても、フェイスブックやツイッターなどで運動情報に出会って行動に移るということが、ますます多くなってくるでしょう。
こうしたことの背景には、「デモの復権」とでもいうべき現象があります。反原発の官邸前行動が注目を浴び、しかもずっと続いてきたなかで、デモや集会で意思表示をするのは当たり前だという空気が社会に生まれました。そこに起きたのが秘密保護法案制定の動きだったのです。
現在の日本は、選挙を通じて国政に意思を反映するという間接民主主義がうまく機能せず、世論と国会内の勢力分布がかけ離れ、逆転してしまっています。そのなかで、デモや集会による異議申し立てなど直接行動による民主主義の回復が求められているのです。
こうした直接行動の動きを自民党や政権がいかに恐れ嫌がっているかは、秘密保護法案反対のデモをテロと同一視した石破茂自民党幹事長の発言がよく表しています。このような異議申し立ての行動を通して、2014年を安倍首相に引導をわたす年、解散・総選挙を実現させる年にしなければならないと思います。
2013-12-29 04:51
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