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3月14日(金) 「悪気のない?」差別こそ、ファシズムの温床ではないのか [文化・スポーツ]

 「JAPANESE ONLY」(日本人以外お断り)
 このような横断幕を、国際化が進んだ今日の日本において、サッカーの試合会場で眼にするとは、思いもよりませんでした。しかも、日の丸の旗と一緒に……。
 この横断幕はスタジアム通路の浦和サポーター観客席入場口に掲げられ、通報があったにもかかわらず、試合が終わるまでそのまま放置されていたといいます。対応の遅さにも、呆れてしまいました。

 これに対して、Jリーグは横断幕の内容が差別的だと判断し、横断幕を確認したあとも1時間にわたって撤去しなかった責任があるとして、レッズに対し始末書の提出を求めるけん責と埼玉スタジアムで予定している清水エスパルスとのホームゲームを観客を入れないで行う「無観客試合」とする処分を下しました。Jリーグで無観客試合の処分が出るのは初めてで、これまでで最も重い処分になります。
 当然のことでしょう。もっと厳しい処分が下されても良かったほどです。
 実は、昨日、共同通信の記者からこの問題についての取材の電話があり、「全くとんでもないことで、許されない。厳しい処分が望まれる」という趣旨の話をしました。私のコメントが載った記事が、今日の地方紙に配信されることと思います。

 この横断幕を掲げたのは3人で、「差別や政治問題化させる意図はなかった」と聴取に答え、掲げた理由については「ゴール裏は自分たちの聖地で、ほかの人たちに入ってきてほしくない。最近は海外のファンも増えているが、応援の統制が取れなくなるのが嫌だった」と話したそうです。本当でしょうか。
 横断幕の写真を見ると、その横には日の丸の旗が付いています。「ほかの人」とは「日本人以外」を指していることは明らかで、外国人を排斥する意図があったことは否定できません。
 サッカーの試合という非政治的でありふれた光景に、日の丸の旗と共に外国人を差別し排斥するような言辞が忍び込んできたということになります。日本社会の日常の中に、意識されることなく排外主義が浸透していることの現れであり、このような「悪意のない?」差別こそ、ファシズムの温床となるのではないでしょうか。

 実は、悪意に満ちた差別も別の形で日常化しています。電車のつり革広告には、韓国や中国に対する悪口や罵倒の言葉が満ちあふれ、それはありふれた光景になっているではありませんか。
 そのような光景を日常的に眼にしている若者にとって、外国人を差別したり他国や他民族を排斥したり貶んだりすることへの抵抗感が薄らぎ、知らず知らずのうちにそのような感情が内面化されていくのも当然でしょう。人権の無視や破壊であることを気づかず、軽い気持で人を踏みつけ、踏みつけていることにも無自覚であるという状況が、少しずつ生まれてきているのでないでしょうか。
 人々の差別意識や歪んだ愛国主義に訴えて売り上げを増やそうとする週刊誌などの販売戦略がこのような風潮を強めています。それを批判し押しとどめるのではなく、愛国心教育によって加速させようとしているのが安倍首相の教育改革であり、首相自らが中国、韓国への敵対心を強める姿勢を取って緊張感を高めていることがこうした流れを後押ししていることは明らかでしょう。

 本当に恐ろしい社会とは、日常生活の中で普通の人々が何気なく軽い気持で差別し、人権侵害を行うような社会です。人が人として扱われず、人権が尊重されず、異常が通常になり、国際社会での非常識が常識となるような社会へと日本が変貌しつつあることを、今回の事件が示していなければ幸いなのですが……。

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