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4月14日(月) 日本周辺の「安全保障環境を激変」させたのはいったい誰だったのか [集団的自衛権]

 それは奇妙な光景でした。12日夜に放映されたNHKスペシャル「いま集団的自衛権を考える」での登場者です。
 集団的自衛権の行使容認に賛成する側に民主党政権の防衛相を務めた森本敏拓殖大学教授が座り、反対する側に自民党政権の内閣法制局長官だった宮崎礼壹法政大学大学院教授と元内閣官房副長官補の柳澤協二国際地政学研究所理事長が座ったのですから。

 普通なら、逆になるはずではありませんか。それがそうなっていないところに、現在の状況と集団的自衛権をめぐる問題の特異さが示されています。
 今の安倍政権はかつての自民党政権とは大きく違うということが、これによってはっきりと示されました。保守政党としての自民党は、極右勢力である「安倍一族」に乗っ取られてしまったからです。
 そのような極右勢力の政権簒奪と政策転換に手を貸したのが、民主党の仮面をかぶった野田前首相でした。NHKスペシャルでの人物構成は、このことを具体的な形ではっきりと示したことになります。

 この番組での討論を聞いて、集団的自衛権の行使容認がなぜ必要なのかを理解できた人はほとんどいなかったでしょう。その理由として具体的に示されたのは、尖閣諸島をめぐる緊張の高まりと中国の軍拡です。
 しかし、尖閣諸島は日本の領土ですから、その防衛は日米安保条約第5条の適用範囲で集団的自衛権の問題ではありません。政府の有識者懇談会座長代理を務めている北岡伸一国際大学学長は、「それなら、どうやって中国の軍拡を止めるのか」と反論していましたが、これには、「集団的自衛権の行使を認めて日米同盟を強化すれば、さらなる軍拡への口実を中国に与えるだけではないのか」と問うべきだったでしょう。
 集団的自衛権の行使容認による自衛隊と日米同盟の強化が新たな「抑止力」となる保障はどこにもなく、かえって軍拡競争をエスカレートさせて極東の緊張を激化させる可能性があります。このようなことも想定できずに、北岡さんが集団的自衛権行使容認の旗を振っていることに驚いてしまいました。

 中国との間の緊張緩和を図るのであれば、日中首脳会談を開催して関係の正常化を図ることの方が先決ではありませんか。それは「日本周辺における安全保障環境の激変」を改善するための最善の方法で、今すぐにできることだと、北岡さんはなぜ安倍首相に進言しないのでしょうか。
 そもそも、日中関係が悪化したのは尖閣諸島の問題が契機になっています。突然、石原元都知事が都による尖閣諸島の購入を表明して募金を集め始め、これに驚いた野田首相が十分な根回しもせずに国による買い取りを実行し、後継の安倍首相が歴史認識問題や靖国参拝などによって事態打開の芽を摘んでしまったというのがこの間の経過でした。
 以上の元都知事、前首相と現首相の3人は、尖閣諸島や歴史認識問題で中国を挑発し、日本周辺の安全保障環境を悪化させた3悪人だと言うべきでしょう。その責任を明らかにして周辺諸国との緊張を緩和することこそ、このような安全保障環境を改善するために最も必要なことではありませんか。

 この討論の中では、最近にわかに持ち上がった砂川事件に対する最高裁判決も議論の対象になりました。この判決の一部で「わが国がその存立を全うするために必要な自衛のための措置をとり得る」とし、憲法九条の下でも自衛権は認められるとの見解を示しましたが、ここでの「自衛権」には集団的自衛権も含まれているという珍説を高村正彦自民党副総裁が唱え、これに安倍首相が同調したからです。
 しかも、この最高裁判決には大きな問題がありました。これについては、また明日……。

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