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4月25日(金) 第二次安倍内閣がめざす労働の規制緩和、派遣法改悪(その2) [論攷]

〔以下の論考は、『学習の友』5月号に掲載されたものです。2回に分けてアップします。〕

横やりによる派遣法改悪や特区構想のごり押し

 昨年秋の臨時国会で改正研究開発力強化法が成立し、大学や研究機関での有期雇用の研究者などについては更新による無期転換申し込み権が発生するまでの期間が5年から10年に延長されました。これは産業競争力会議(第4回)で橋本和仁東大教授が「労働契約法に係る雇止め問題は、……研究者のキャリアパスの上で問題が生じるので、考慮されたい」と要望し、議員立法で提案され、実質的な審議なしで成立したものです。
 また、派遣法改定の原案となった8月20日の「今後の労働者派遣制度の在り方に関する研究会報告書」に基づいて労働政策審議会で公益委員から骨子案が出されましたが、規制改革会議雇用ワーキング・グループ(第16回会議)で大田弘子議長代理が厚労省の富田望課長に対して、「この骨子案で見る限り、かなり強い、前と全然変わらない表現ぶりになっていますので、これも御再考いただければと思います」と注文を付け、稲田朋美内閣府特命担当相も「今回、規制改革の意見が反映された部分はどういうところなのか」と圧力をかけています。富田課長は「今回公益委員案の中では二六業務を廃止していこうということを打ち出してございます」と、これに迎合するような答弁をしていました。
 産業競争力会議の竹中議員も第14回会議で意見書を出し、「特に『雇用』分野は、残念ながら、全く前進がみられない」として「国家戦略特区を完成させるべく、引き続き全力を尽くしたい」と決意を述べ、国家戦略特区諮問会議の民間議員に選ばれています。また、安倍内閣は雇用調整助成金を1175億円から545億円に減らし、労働移動支援助成金を2億円から300億円に増やしましたが、その背景には、「今は、雇用調整助成金と労働移動への助成金の予算額が1000:5くらいだが、これを一気に逆転するようなイメージでやっていただけると信じている」という産業競争力会議(第4回)での竹中議員の発言がありました。

むすびに代えて-矛盾と対抗

 以上に見てきたような形で、政策内容も政策形成の手続きも歪められてきました。この点では、集団的自衛権の行使を容認する方向での政策変更のプロセスと似通っています。労働政策や労働法は、経営サイドの要望に沿う形で大きく変容しつつあります。
 しかし、このような強引な政策転換はILOの国際労働基準が要請する政労使の代表による三者構成原則に反し、少なくない矛盾と対抗を生み出しました。その一つは経産省主導の政策転換に対する厚労省の抵抗であり、第二はマスコミや世論による懸念と批判であり、第三に労働政策審議会での労働者側の抵抗です。
 とりわけ、直接的な利害関係者でありながら、この間の政策転換のプロセスから排除されてきた労働者側の対応が重要です。昨年10月には全労連や全労協などによって「雇用共同アクション」が結成され、日本弁護士連合会(日弁連)は12月に労働法制の規制緩和に反対して日比谷野外音楽堂で市民大集会を開催し、連合や全労連、全労協などナショナルセンターの違いを超える労働組合が結集しました。
 産業競争力会議や規制改革会議など経営者側の強力な「助っ人」に対抗して、労働者側も「助っ人」を呼ぶ必要があります。それは運動と世論の力です。
 国際的な労働基準と道理の力も借りて政策形成の歪みを正すとともに、通常国会に提出された派遣法改正案(そのポイントについては表3参照)の審議に際しても、運動と世論の力を背景に政党や議員、厚労省の官僚などに働きかけ、一方的に経営者に有利となる派遣法改正案の成立を阻まなければなりません。そうしなければ、派遣を臨時的・一時的に限るとした原則がくつがえされ、「生涯ハケン」に道を開くことになってしまうでしょう。

表3 派遣法改正案のポイント

・専門26業務の区分をなくして派遣期間の上限は「業務」ではなく「人」ごとになる。
・派遣先企業は労働組合の意見を聞けば(合意ではない)派遣の受入を続けられる。
・人材派遣会社に有期雇用されている場合、派遣労働者が同一職場で働ける期間は3年まで。
・人材派遣会社は3年経過後の人材に対して雇用機会の提供を義務付けられる。
・人材派遣会社に無期雇用されている場合、派遣労働者はおなじ職場で働き続けられる。
・届出制であった特定派遣制度は廃止し、すべての派遣事業者は国による許可制となる。
・一般労働者との「均等待遇」は「均衡を考慮しつつ」「配慮」することを求めただけ。

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