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5月22日(木) 司法の生命力を示した二つの画期的判決 [裁判]

 「裁判は死なず」と言うべきでしょうか。司法の生命力を示した2つの画期的判決が出されました。関西電力大飯原発運転差し止め訴訟と第4次厚木基地騒音訴訟です。

 安全性が保証されないまま関西電力大飯原発3、4号機を再稼働させたとして福井県などの住民189人が関電に運転差し止めを求めた訴訟の判決で、福井地裁の樋口英明裁判長は「大飯原発の安全技術と設備は脆弱なものと認めざるを得ない」と地震対策の不備を認定し、関電側に運転差し止めを命じました。原発訴訟で住民側が勝訴したのは、高速増殖炉原型炉もんじゅ(福井県敦賀市)の設置許可を無効とした2003年1月の名古屋高裁金沢支部判決と、北陸電力志賀原発2号機(石川県志賀町)の運転差し止めを命じた06年3月の金沢地裁判決(いずれも上級審で住民側の敗訴が確定)に続き3例目になります。
 原告側の訴えがそのまま認められただけでなく、「生存を基礎とする人格権は憲法上の権利であり、法分野において最高の価値を持つ」とし、差し止めの判断基準として「新規制基準への適否ではなく、福島事故のような事態を招く具体的な危険性があるか」を挙げ、大地震が来た時に原発の冷却機能が維持できるかどうかについては関電の想定を「信頼に値する根拠はない」としました。そのうで、「関電は、原発の稼働が電力供給の安定性につながるというが、極めて多数の人の生存そのものに関わる権利と電気代の高い低いの問題とを並べた議論の当否を判断すること自体、法的には許されないと考える」と結論づけるなど、判決の論拠や内容においても画期的なものになっています。
 脱原発弁護団全国連絡会などによれば、東京電力福島第1原発事故後、全国で住民側が提訴した原発の運転差し止め訴訟は少なくとも16件あるといいますが、この判決はこれらの訴訟にも大きな影響を与えることでしょう。 脱原発を訴え、風雨が吹き付ける嵐にも負けず、夏の蒸し暑い夜にも冬の凍てつく寒さの中でも毎週金曜日に官邸前で行動を続けてきた多くの人々の努力も、この判決によって報われたのではないでしょうか。

 もう一つの、厚木基地周辺住民が航空機の騒音被害を訴えて国に飛行の差し止めや損害賠償を求めていた第4次厚木基地騒音訴訟でも、横浜地方裁判所は騒音被害の違法性を認め、自衛隊機の夜間と早朝の飛行の差し止めと国におよそ70億円の損害賠償を命じる判決を言い渡しました。基地の航空機の飛行の差し止めが認められたのは全国で初めてであり、この点でまさに画期的な判決だと言って良いでしょう。
 ただし、米軍機の飛行差し止めの訴えについては、日本の法律では差し止めの対象にはならないなどとして退けました。米軍基地は日米地位協定によって治外法権となっているからです。
 今後の基地行政における騒音対策が強化されなければならないのは当然ですが、根本的な対策は、騒音の主な発生源となっている基地そのものを撤去することだということを忘れてはなりません。その可能性を強め、条件を拡大することこそ政治の役割であり、そのためにも集団的自衛権の行使容認などではなく、周辺諸国との緊張緩和を実現し、基地が無用になるような安全保障環境を生み出すように努めるべきでしょう。

 この二つの画期的判決は、運動によって世論を変え、司法を動かすことが可能であるという教訓を示しています。今後の課題は、このような司法の判断を行政に尊重させ、具体的な問題解決に踏み出させることであり、さらに選挙を通じて政治に反映させていくことでしょう。
 このような形で影響力を行使できる権利を持っているからこそ、私たちは「有権者」なのです。そしてその「権利」を行使して政治を左右することができるようになった時こそ、私たちは真の「主権者」になれるのではないでしょうか。

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