SSブログ

5月24日(土) 安倍首相の記者会見で示されたその他の題点 [集団的自衛権]

 5月15日の安倍首相の記者会見には、昨日のブログで指摘した以外にも数々の問題点があります、さしあたり、以下の3点について指摘しておきましょう。

 第1に、日米安保条約によって日本は戦争に巻き込まれたという事実です。これについて安倍首相は全く無知であり、15日の記者会見は戦後史についても安倍首相の歴史認識が驚くほど貧弱なものだということを暴露しました。
 この点に関して、安倍首相は冒頭発言の後、記者の質問に答えて次のように述べています。
 
 「今回の検討によって、他国の戦争に巻き込まれるといった批判があります。こうした批判は、1960年の安保改正の際、盛んに言われました。この安保条約の改正によって、むしろ反対論の中心はそこにあったのです。この日米安保の改正によって日本は戦争に巻き込まれる、さんざん、そう主張されました。しかし、50年たってどうだったでしょうか。この改正によって、むしろ日本の抑止力が高まり、アジア太平洋地域においてアメリカのプレゼンスによって、今、平和がより確固たるものになるというのは、日本人の常識になっているではありませんか。まさに、私たちが進めていこうとすることは、その抑止力を高めていく、そして、日本人の命を守るためにやるべきことはやらなければならないという観点から検討していかなければならないということであります。巻き込まれるという受け身の発想ではなくて、国民の命を守るために、何をなすべきかという能動的な発想を持つ責任があると、私は思います。
 繰り返しになりますが、抑止力が高まることによって、より戦争に巻き込まれることはなくなると、私はこのように考えております。」

 このように、安倍首相は「日米安保の改正によって……むしろ日本の抑止力が高まり、アジア太平洋地域においてアメリカのプレゼンスによって、今、平和がより確固たるものになるというのは、日本人の常識になっているではありませんか」と強弁しました。しかし、これは真っ赤なウソです。
 安保条約によって日本はベトナム戦争の出撃基地となり、イラク戦争では陸上自衛隊と航空自衛隊がイラクに派遣されました。ベトナム戦争はトンキン湾事件をでっち上げたアメリカによる不正義の戦争であり、イラク戦争もフセイン政権による大量破壊兵器の開発・保有という濡れ衣によって引き起こされた間違った戦争です。
 安保条約が結ばれていなければ、このような間違った戦争に日本が加担することも、遠い中東での「他国の戦争に巻き込まれる」こともなかったはずです。まさに「アメリカのプレゼンス」こそが、このような戦争を引き起こしたのであり、それがアジア太平洋地域はもとより世界全体の平和を大きく脅かしたことは否定できない事実ではありませんか。

 第2に、戦争に「巻き込まれる」のではなく、「進んで加わる」のが集団的自衛権の行使容認という問題です。安倍首相にはこのことについての自覚がほとんどなく、他国から反撃されることへの想定が極めて薄弱で、それを全く想定していないかのような楽観主義には驚くばかりです。
 米国に向かうミサイルを撃ち落としたり、公海で米艦船を護衛したり、強制的な臨検を行ったり、戦闘中に機雷を除去したり、同盟国に対する攻撃に反撃したりすれば、直ちに相手国からの攻撃を招くでしょう。北朝鮮や中国からの反撃であれば、日本海側の原発がミサイルの標的にされ、巨大な災厄を引き起こす可能性があります。
 現在行われている与党協議の焦点になっているグレーゾーン事態についても、同様の問題があります。グレーゾーンとは準有事のことで直ちに戦争を意味しているわけではないにもかかわらず、警察や海上保安庁ではなく自衛隊が対処すれば事態はグレーからブラックに急変し、戦争にまでエスカレートしてしまうかもしれません。そのようなことになっても良いのでしょうか。

 第3に、抑止力に対する考え方も極めて楽観的です。抑止力とは、攻撃すれば相手以上の大きな被害を受けるかもしれないと考えて攻撃を思いとどまらせる力を意味していますが、北朝鮮はそのような「理性的」な判断ができる国なのでしょうか。
 すでにこれまでも、自衛隊の増強によって世界有数の「軍隊」を持ち、在日米軍基地が存在して横須賀は米第7艦隊の母港になるなど一貫して軍事力が強められてきたにもかかわらず、北朝鮮は核実験を繰り返してミサイル開発を続け、中国は過去10年間で4倍という軍事費の増大を続けてきました。どこに、自衛隊と在日米軍の抑止力が存在し、一体、何を「抑止」してきたというのでしょうか。
 安倍首相が言うように安保体制によって抑止力が高まってきたのであれば、今回のような「積極的平和主義」への転換や集団的自衛権の行使容認による平和憲法の空洞化などは必要ないはずです。逆に、このような日米同盟による軍事的対応能力の強化は、「それ見たことか」と北朝鮮や中国の軍拡の口実とされ、軍拡競争をさらにエスカレートさせて日本の安全を脅かすことになるでしょう。

 「こうした検討については、日本が再び戦争をする国になるといった誤解があります。しかし、そんなことは断じてあり得ない。日本国憲法が掲げる平和主義は、これからも守り抜いていきます。そのことは明確に申し上げておきたいと思います。むしろ、あらゆる事態に対処できるからこそ、そして、対処できる法整備によってこそ、抑止力が高まり、紛争が回避され、わが国が戦争に巻き込まれることがなくなると考えます。」

 安倍首相は、記者会見でこのように言って胸を張りました。つまり、「戦争をする国にならないための戦争の準備」であり、同盟国とともに戦争できるようにすれば日本は戦争に巻き込まれることがなくなるというわけです。
 「戦争抑止のための戦争準備」という論理は、「平和のための戦争」という論理と瓜二つです。まことに、軍事力一辺倒で「戦争オタク」の安倍首相らしい言い逃れであり、開き直りではありませんか。

nice!(0)  トラックバック(1) 

nice! 0

トラックバック 1