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9月1日(月) ヘイトスピーチは新法を制定して厳格に取り締まるべきだ [国際]

 いつから日本は、このような形で「後ろ指」をさされるようになったのでしょうか。外国から言われるまでもなく、「日本の恥」は自らの力で解決しなければなりません。
 しかも、集団的自衛権の行使容認によって戦争しやすくなるような憲法解釈の変更と足並みをそろえるような形で、周辺諸国に対する差別や憎悪をあおり、反感と敵意を強めるような風潮を掻き立てているのがヘイトスピーチです。「これでは戦争になってしまうのではないか」と国民が不安に思うのは当然で、このような風潮を放置することは許されず、新しい法律を制定して厳格に取り締まるべきでしょう。

 国連人種差別撤廃委員会(ジュネーブ)は8月29日、日本における人種差別撤廃条約の順守状況に関する「最終見解」を発表しました。その中で、人種や国籍で差別をあおるヘイトスピーチ(憎悪表現)を法律で規制するよう日本政府に勧告がなされました。
 この見解は、右翼団体の街頭宣伝活動でのヘイトスピーチの広がりや公職者、政治家による人種差別発言に懸念を表明し、①街頭宣伝やインターネットを含むメディアでの差別的行為・表現に対する厳正な対応、②差別行為にかかわった個人と組織への捜査と訴追、③ヘイトスピーチを広げる公職者と政治家の処罰、④教育などを通じた人種差別問題への取り組みなどを勧告するものです。
 また、人種差別撤廃条約は差別を助長する表現を「犯罪」と定義し、処罰立法措置を義務付けています。これに対して日本政府は「表現の自由」を保障する憲法との整合性を考慮すべきだとして履行を留保していますが、これについても最終見解は留保の取り下げを要請しました。

 この日本政府の見解のように、表現の自由や言論の自由を保障する立場から、ヘイトスピーチに対して法的規制をためらう意見があります。表現の自由や言論の自由が守られなければならないのは当然であり、ヘイトスピーチの取り締まりを口実にこれらの自由が制限されるようなことがあってはなりません。
 しかし、ヘイトスピーチは「言論」ではなく「暴力」です。それを聞いり見たりする不特定多数の人々の心を深く傷つける許しがたい暴力にほかなりません。
 このような暴力に自由を与える必要があるのでしょうか。人種や民族、国籍で差別をあおり憎悪を焚き付けるようなヘイトスピーチを特定し、法律によって取り締まることは十分に可能でしょう。

 現行法でも、そのようなことができるという意見もあります。ならば、現行法によってきちんとそれを取り締まり、ヘイトスピーチを一掃してもらいたいものです。
 実際には、現行法では十分に取り締まることができないから、野放しになっているのではありませんか。国連人種差別撤廃委員会の委員を驚かせ、憂慮させるような現状が放置されているから、国際社会から「後ろ指」をさされたのではありませんか。
 ヘイトスピーチをなくすための効果的な措置を何も取らず、ただ新法に反対するというのでは単なるサボタージュにすぎません。新たな法的規制に反対するのであれば、それがなくても大丈夫だということを事実によって示すべきでしょう。

 さすがに自民党も、このような状況は放置できないと考えたのかもしれません。プロジェクトチームを設置して、8月28日に初めての会合を開きました。
 この会合では、今後「ヘイトスピーチ」に対して法規制も含めて検討していくことを確認すると同時に、首相官邸前や国会周辺で行われてきた「原発再稼働」や「秘密保護法」に対する抗議・街頭行動などを念頭に、何らかの規制を行うべく議論を進める姿勢も示されたそうです。会合で高市早苗政調会長は抗議行動をさして「何時間も仕事にならない状況が続いている。とても電話の声も聞こえない」などとし、「批判を恐れることなく、議論を進めてまいりたい」と強調したといいます。
 このプロジェクトチームの座長が平沢勝栄議員でメンバーには高市早苗政調会長も入っていると知った時から、このような議論が出てくるのではないかと懸念していましたが、その通りになりました。そもそも、このプロジェクトチームはヘイトスピーチを利用して表現の自由や言論の自由を取り締まる手がかりを作り出すことを隠れた狙いにしていたのかもしれません。

 一方で、ヘイトスピーチを取り締まる新法を作れば表現の自由が阻害される懸念があるといい、他方で、ヘイトスピーチへの取り締まりと一緒に表現の自由を制限しようと狙う。懸念されるような行動をとっているのは、自民党自身じゃありませんか。
 ヘイトスピーチとは民族や人種に対する差別や憎悪を掻き立てる発言をさしています。国会周辺の抗議行動で、そのような発言がなされていたのでしょうか。
 ヘイトスピーチと国会周辺などでの抗議行動とは全く性格が異なり、いっしょにするのは筋違いの暴論です。国連人種差別撤廃委員会の勧告は、ヘイトスピーチ対策を、その他の抗議行動などを規制する「口実にしてはならない」とくぎを刺しているそうです。
 ここで釘を刺されているようなことを、まさに自民党のプロジェクトチームはやろうとしているわけです。そんなことをすれば恥の上塗りになり、日本は国際社会の笑い者となることでしょう。

 そもそも、脱原発官邸前行動や秘密保護法反対運動など国会周辺で声をあげなければならないのは、このような反対の声が国会内に届かないからではありませんか。世論の多くが反対する政策を強行する自らの姿勢を反省することもなく、国民の声を単なる「騒音」としか受け取れないとは情けない限りです。
 こんな自民党は、名前を変えるべきでしょう。自由民主党ではなく、不自由非民主党と……。

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