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9月25日(木) 集団的自衛権を阻むために、 安倍政権の打倒を(その1) [論攷]

〔以下の論攷は、全国学者・研究者日本共産党後援会が発行する『全国学者・研究者後援会ニュース』No. 164(部内資料)、2014 年 9 月 18 日付に掲載されたものです。2回に分けてアップします。〕

 「戦中戦後をのり切ってきて、今また、不安な毎日を暮らすなんて考えてもみませんでした。何事にも自分本位の首相の言動、もう信じられません」。
 これは、「毎日新聞」8月 27 日付に掲載された三重県伊勢市在住の 75 歳の方の投書である。集団的自衛権の行使を容認する憲法解釈を行った閣議決定は、国民に「不安な毎日」を実感させるに十分なものだった。
 「もう信じられません」というからには、これまで「信じていた」ということかもしれない。安倍首相は「自分本位の言動」によって、国民の信頼を失ったのである。

急ぐ必要のなかった閣議決定

 集団的自衛権の行使容認とは何か。一言で言えば、戦争をしやすくするということである。これまでは、我が国が武力攻撃されなければ反撃できなかった。これからは、他国が攻撃された場合でも、「我が国と密接な関係にある」と認められれば反撃できる。これまで以上に戦争の敷居が低くなることは明らかであり、国民が不安に思うのは当然であろう。
 このような集団的自衛権の行使を認める閣議決定は、7月1日になされた。しかし、これは閣僚の言動を縛るにすぎない。集団的自衛権の行使に向けて自衛隊などを動かすためには、関連する法律を制定する必要がある。そのために変えなければならない法律は 16 本、関連する協定は2本ともいわれる。
 しかし、安倍首相はこれらの改定作業を来年の通常国会まで先送りし、改正法などは秋の臨時国会には出さないとしている。来年の通常国会は3月まで予算審議が行われ、4月にはいっせい地方選挙がある。実際の法案審議は5月の連休明けになると見られ、7月初めの閣議決定からは1年近くも先のことである。
 法案の提出と審議がこれほど先であれば、閣議決定を急ぐ必要はなかった。また、閣議決定を急いだのであれば、できるだけ早く関連法案を提出し、国会での審議にゆだねるべきではないか。そのいずれでもないのは、国民がよく理解しないうちに既成事実を作り出し、いっせい地方選挙への影響を回避しつつ、ほとぼりが醒めるのを待つためだったと思われる。
 だが、このような思惑がうまくいくとはかぎらない。集団的自衛権の行使容認によって「戦争する国」となり、「日本とは関係が薄い戦争に巻き込まれるのではないか」という国民の不安は増し、反対世論が増えてきている。
 現に、「毎日新聞」の調査では、集団的自衛権の行使容認についての反対は5月に 54%、6月に58%、8月調査では 60%と、時間を経るごとに増加してきた。特に、7月の閣議決定後である8月調査では、反対が6割に達した。
 これは「共同通信」の8月調査でも同様で、集団的自衛権の行使容認反対は 60.2%となり、7月調査より 5.8 ポイント増えている。とりわけ、この調査では 20~30 代の若年層で反対が7割に上り、前回調査より1カ月で 18 ポイントも上昇した。実際に戦争になれば命を失う危険が大きいのは、若者であることを考えれば、これは当然かもしれない。

安倍首相は何をめざしているのか

 このようなかたちで6割もの世論が反対する政策を強行し、国民の不安を高めたというだけでも、安倍首相は為政者としては失格であり、政策としては失敗である。しかも、世論の反対が多いことを知りつつ、与党の公明党が渋っていたにもかかわらず、安倍首相は集団的自衛権の行使容認にこだわった。それは何故だろうか。
 その背景には、安倍首相の個人的な思いがあることは否めない。よく言われるのは、祖父である岸信介の DNA が受け継がれているということである。それもあるかもしれないが、それ以上に、湾岸戦争でのトラウマやイラク戦争に際しての悔しい思いではないだろうか。
 湾岸戦争終了後、クウェートが出した感謝の新聞記事には日本の名前がなかった。イラク戦争では、アーミテージ米国務副長官に「Boots on the ground」とねじ込まれた。これをくり返したくないというのが、第1次内閣以来の安倍首相の悲願だったのではないか。
 しかし、与党協議の先頭に立った高村副総裁や石破幹事長など、自民党幹部の多くも集団的自衛権の行使容認を求めた。最近になって石破幹事長が異論を唱えたのは、そのやり方にすぎない。「太平洋に浮かぶイギリス」をめざし、米英同盟のように日米同盟を強化し、「列強」の一員として国連安保理の非常任理事国、やがては常任理事国になるという目標を抱いている点では変わらない。
 安倍首相の場合には、さらに帝国主義としての自立をめざし、外交・安全保障面での「戦後レジームからの脱却」に向けての突破口にしたいとの野望が垣間見える。米国が日本政府による集団的自衛権の行使容認を歓迎しつつも、それが安倍首相によって実行されることに一抹の不安を抱いているのはこの点であろう。

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