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10月15日(水) ガイドライン「中間報告」で明らかになった集団的自衛権行使容認の狙い [集団的自衛権]

 ガイドラインというのは、「日米防衛協力の指針」のことです。これは東西冷戦を背景に1978年に初めて作成され、北朝鮮の核開発疑惑や弾道ミサイル発射実験を背景に97年に改定されています。
 今回は3度目の改定で、集団的自衛権の行使容認が閣議決定されたために必要とされ、先ほど「中間報告」が出されました。これを見て、「なるほど、集団的自衛権の行使容認はこのためだったのか」と思った方は少なくなかったはずです。

 今回の改定は、これまでと違って日本から米国に持ちかけたものです。これが12月に迫っているから7月1日に決めなければならないと公明党のしりをたたいて閣議決定を急いだわけですが、それは米国側ではなく日本側の都合だったのです。
 この改定は中国の脅威に対処するためとされ、漁民を装った武装集団が日本の離島に上陸した場合などを想定した「グレーゾーン事態」への対応を重視しています。これは米軍にも一緒に対抗してもらうことを期待してのことだとされています。
 しかし、そうであれば尖閣諸島には安保条約第5条が適用されますから、集団的自衛権ではなく個別的自衛権で対応できます。また、そこは日本の領土ですから「周辺事態」を廃止する必要は全くありません。

 それにもかかわらず、「周辺事態」という言葉をなくしたのが、この「中間報告」の最大の特徴となっています。それは日米間の防衛協力が日本「周辺」に限られるわけではなく、グローバルな規模で実行されることを意味しています。
 ということは、今回の改定は日本に対する直接の攻撃とは無関係に日米間の軍事協力を行えるようにするためだったということです。中国の軍拡や尖閣諸島での「グレーンゾーン事態」などは、集団的自衛権の行使容認によって日本の「周辺」という制約や限界を突破するための口実にすぎませんでした。
 また、このグレーゾーン事態での協力については「切れ目のない形で、日本の安全が損なわれることを防ぐための措置をとる」とされ、日本の自衛隊は「周辺事態」とは無関係に、いつでも、どこでも、米軍とともに行動できるようになります。日本の領域外である海外での作戦行動が可能になり、それには「非戦闘地域」などの制約が課されることもありません。

 これについて、自民党の中谷元安全保障法制整備推進本部長は「地球規模の課題に切れ目なく対処することで日米協力は非常に幅広くなっている」と称賛しているそうです。「語るに落ちる」とは、このことでしょう。
 「離島防衛」がいつの間にか「地球規模の課題」にすり替わっています。中東地域やホルムズ海峡の機雷封鎖解除まで含むグローバルな規模での日米共同作戦が意図されているということになります。
 そうだとすれば、「日米協力は非常に幅広くなっている」と言うのも当然です。しかし、このような無限定な拡大は公明党などの認めるところではなく、今後の集団的自衛権行使を具体化するための安全保障法制の整備本格化に向けて大きな火種となるにちがいありません。

 今回の「中間報告」では、「周辺事態」の取り消し以外については課題が列挙されているだけで具体的な記述は見送られました。集団的自衛権行使容認の具体化が難しかったからでしょう。
 アメリカの理解と承認を得るという点で、一定の困難があったのかもしれません。オバマ米大統領は集団的自衛権の行使容認と日本側による負担の肩代わりについては歓迎していますが、それが戦後の国際秩序の変更や中国との関係悪化につながることを懸念しているからです。
 また、アメリカとの合意が得られれば今後の法制の整備に反映させなければなりませんが、その際、内閣法制局の承認が得られるかどうかも微妙です。これまでの憲法解釈を前提に答弁してきたのは内閣法制局であり、それを全面的に転換するような関連法の改定を簡単には受け入れないかもしれないからです。

 いずれにしても、ガイドラインの「中間報告」が示している方向が「専守防衛」だなどと言えるわけがありません。「地球規模の課題に切れ目なく対処する」ために日本を離れて海外に出かけて行きながら、それを「専守」だというのは明確なごまかしだからです。
 国民に対して嘘を言い国際社会をたぶらかす不誠実な言い逃れを許してはなりません。このようなごまかしによって日本を戦争に巻き込むことが、「平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占め」ることになるはずがないのですから……。

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