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11月16日(火) 安倍首相の目論見に反し、極右を減らして左翼を増やした総選挙結果 [解散・総選挙]

 総選挙の結果をどう見たらよいのか。私のところにも、色々と取材が来ています。
 昨日の連合通信の取材には、「寝込みを襲うように解散した安倍政権の『作戦勝ち』」だと答えました。確かに、与党で3分の2を超える絶対多数の議席維持に成功したのですから、基本的には「作戦勝ち」です。
 しかし、総選挙結果を子細に検討すると、必ずしもそうとばかり言えない事実も見えてきます。昨日のブログで、「安倍首相にとっては、『めでたさも中くらいなり』という心境かもしれません」と書いたのは、そのためです。

 昨日のブログで示した選挙結果の表を良くご覧ください。これを見ればすぐ分かるように、今回の選挙で最も議席を増やしたのは共産党で13議席増、最も減らしたのは次世代の党で、17議席減という一人負けの惨敗です。
 政策的な立ち位置からすれば、共産党は国会内で最左翼であり、次世代の党は海外で「極右政治家」とみなされている石原慎太郎元都知事をはじめ、「ネトウヨのアイドル・田母神閣下」などを候補とする極右政党でした。したがって、このような議席の増減に従って選挙の結果を端的にいえば、国会内での手ごわい反対勢力である左翼を増やし、「是々非々」で政権の応援団にもなる極右を減らしたということになります。
 国会を解散して総選挙を実施しなければこのような結果にはならず、少なくともあと2年間は安倍政権にとって好ましい勢力関係を維持できました。しかし、突然の解散・総選挙によって安倍首相はこのような勢力関係を変えるリスクを犯し、共産党や民主党の議席を増やして左翼の比重を高めたわけで、まことに皮肉な結果になったと言うべきでしょう。

 さらに詳しく今回の総選挙での票の動きを見ると、次のようなことが分かります。いずれも、新聞などではほとんど注目されていない重要なポイントです。
 今回の選挙の投票率は52.7%で前回よりも6.6ポイント、約500万票減少しました。他方で、前回の2012年に日本維新の会、みんなの党、日本未来の党で約2000万票(比例)を得票した「第三極」は、今回の総選挙で維新の党、次世代の党、生活の党で約1000万票と半減しています。
 これら3党が失った票の半分(約500万票)は棄権に回り(そのために棄権が500万人、6.6ポイント増えたわけです)、残りの約半分(400万票)は、今回得票を増やした共産(237票)、自民(104万票)、公明(19万票)、民主(15万票)に投じられたと思われます。このうち共産党が増やした得票数は半分以上の237万票ですから、比例代表での票の変化を見れば、今回の総選挙での勝者は共産党であったということ、有権者の共産党への期待がいかに大きかったかということがはっきりと示されています。

 また、自民党は「圧勝」したとされていますが、議席総数で2議席、小選挙区では222議席と15議席減らし、小選挙区の得票数も2546万票で18万票の減少です。小選挙区での得票数の推移を見れば、自民党は政権を失った09年に522万票も減らしただけでなく、12年に166万票減、そして今回も18万票減と一貫して票を減らしてきました。
 それにもかかわらず多数議席を獲得できたのは比較第1党が議席を独占できるという小選挙区制のカラクリのためであり、今回も48.1%の得票率で75.3%の議席を得ています。この間、有権者は自民党にダメを出し続けているにもかかわらず、その意思は全く議席に反映されていないということになります。
 今回は小選挙区で得票数だけでなく議席も減らしたわけですが、それでも自民党が「圧勝」できたのは比例代表で11議席増の68議席を獲得したからです。しかし、増やした得票数は104万票で、共産党が増やした票の半分にも及びません。

 つまり、安倍首相が進めているアベノミクスによる一定の受益とその「おこぼれ」に対する期待は確かにあり、それは比例代表での104万票増に反映されているわけですが、しかし、アベノミクスに対する危惧と反対も強く、安倍首相の暴走にストップをかけてほしいという有権者の願いの方が2倍以上も多かったということになります。
 確かに、安倍首相は「寝込みを襲うよう」な突然の解散・総選挙によって与党全体としての現状維持に成功しました。しかし、それはアベノミクスに対する異議申し立ての機会としても有効に活用され、国会の勢力関係を変えて強力な反対者の登場を促す結果となっています。
 それは、安倍首相の目論見を大きく覆すものだったと言って良いでしょう。やはり、総選挙の結果は必ずしも安倍首相の「作戦勝ち」とは言い切れない側面を持っていたということになります。

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