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12月26日(金) 誇って良い青春 [論攷]

 総選挙投・開票日の前日に当たる12月13日、「アルカディア市ヶ谷」で小さな集まりがありました。三階康子・寺脇洋子編『外堀の青春―法大「マル研」と安保闘争の仲間たち』(桐書房)という本の出版記念会です。
 この本の最後に、私は「『60年安保』とは」という解説を書いています。その縁で私も招待され、この会に顔を出しました。

 この本の帯には、「これは60年安保闘争のなかで、ひとつの理想をかかげ、非暴力の大衆闘争を組織し、志を共にし、法政大学に学んだ若者たちの回想録である」と書かれています。サブタイトルにある「法大『マル研』」というのは、法政大学での学生サークルだった「マルクス主義研究会」のことです。
 このサークルに集まった学生たちによる安保闘争の回想と、その後の人生の歩みについての証言録が本書です。安保闘争についての回想は珍しくありませんが、それが参加者の人生観・社会観にどのように影響し、その後半世紀以上にわたってどう生きてきたかについての証言や記録は貴重なものだと言えるでしょう。
 60年安保闘争の頃、私は田舎の小学生でしたから、ほとんど記憶がありません。その私が安保闘争についての解説を書くことになったのは、同じ法政大学の同窓生であるという縁だけでなく、編者の三階さんが大学院でお世話になった故三階徹先輩の夫人で、その頃からの面識があったからです。

 ということで、以下に私の書いた解説「『60年安保』とは」の一部、最後の部分を紹介させていただきます。全文を読みたいという方は、桐書房http://www.kirisyobo.com/まで、本書をご注文下さい。定価は1728円となっています。

 誇って良い青春

 最後に、安保闘争時における学生運動の分裂に触れておかなければならない。全学連主流派と非主流派との、どちらが正しかったのかという問いである。その答えはすでに明瞭だと言って良い。過激な暴力行為に走った主流派のやり方は歴史によって断罪されているからである。樺美智子の非業の死は、このような誤った戦術提起の犠牲でもあった。
 安保闘争後、全学連主流派は分裂し続け、中核派や革マル派、社学同やマル学同などの新左翼諸党派に分かれた。やがて「暴力学生」との呼称が定着し、七〇年安保闘争でも暴力的な挑発行為に終始する。その後、暴力はさらにエスカレートし、京浜安保共闘や連合赤軍事件などの犯罪者集団として自滅路線を辿ることになった。今日の政治運動において、暴力やテロは完全に正当性を失っている。
 本書に登場するのは、このような主流派の暴力的挑発行為を厳しく批判し、非主流派として非暴力路線を選択した学生たちである。それは今も正当性をもっており、当時の選択としても正しいものであった。
 新安保条約の締結に反対したことも、そのために大衆的な行動に立ち上がったことも、そのための手段として非暴力を選んだことも間違いではない。迷いや未熟さはあっても、そこに過ちはなかった。誇って良い青春である。
 願わくば、その青春時代の情熱を「想い出」のなかに閉じこめるのではなく、今一度かきたてていただきたいものである。戦争できる国に向けてきな臭さを増している時代の流れを阻み、あの時にやり残した課題を達成するために。安保条約を廃棄して日米軍事同盟を打ち破り、平和で豊かな日本を後世の人々に手渡すという課題を……。


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