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1月17日(土) 外交文書の公開によって明らかになった日米関係の闇 [国際]

 このような秘密があったのか、と思いました。そうであれば、なおさらその秘密を明らかにするための仕組みや努力が必要になるでしょう。

 1月15日、外務省は外交文書41冊を新たに公開しました。それによって、日米関係に秘められてきた数々の闇が明らかになっています。
 その最大のものは、1965年8月に当時の佐藤栄作首相が米国統治下の沖縄を訪問した時に行った演説について、基地の意義を強調するように求める米側の圧力によって内容を修正していたことです。冷戦下を念頭に「極東の平和と安定のために沖縄が果たしている役割は極めて重要」との一節を加え、8月19日に行われた「国映館」での歓迎大会で読み上げられました。
 これは基地存続を前提とする文言で、米軍普天間飛行場を含むその後の沖縄の過重負担に大きな影響を及ぼし、それを正当化するものです。また、佐藤首相が沖縄訪問時に、米側現地トップのワトソン琉球列島高等弁務官との会談で「返還は日米安全保障条約の下に実施したい」と伝えていたことも判明しています。

 これ以外にも、以下のような重要な事実が明らかになっています。

 第1に、中曽根康弘防衛庁長官が「米国の核兵器導入については留保しておいた方がよいと思う」として、核兵器の持ち込みに反対していなかったことです。70年9月9日の中曽根防衛庁長官とレアード米国防長官との会談記録で示されています。
 この密約については、82年12月9日の衆院本会議で不破哲三共産党委員長が質問し、中曽根首相は「私が核兵器の導入を認めるような発言をしたことは全くありません」と答えていました。この答弁は真っ赤な嘘だったということになります。
 「安保条約改定の際に日米間で交わされた合意・密約の存在」の一つとして、「核兵器についての事前協議は『持ち込み』(イントロダクション)だけで立ち入りや飛来(エントリー)は対象外という『核持ち込み密約』」があったことは、すでに12月27日付のブログ「歴史による検証」で明らかにしたように、私も指摘してきました。今回の公文書で明らかになった中曽根防衛庁長官の発言はこの密約に沿うものであり、首相になってからの答弁はそれが嘘を言ってでも守られなければならない「秘密の約束」だったことを示しています。

 第2に、沖縄返還に際しての米軍用地の原状回復費用400万ドルの肩代わり密約について、「一切知らないと応答されたく」、「国務省にこの点を強く申し入れおきありたい」と求めていたことです。71年12月11日の福田赳夫外相から牛場信彦駐米大使への「大至急」の極秘公電で明らかになりました。
 この「400万ドル上乗せ」という「秘密の取決め」は、機密公電を入手した西山太吉毎日新聞記者を通じて横路孝弘社会党衆院議員が12月7日に国会で追求し、政府はそれを否定し続けてきました。しかし、2010年3月、外務省有識者委員会の調査を踏まえて、民主党政権は密約の存在を認めています。
 今回の公開で密約の存在がさらに裏付けられたことになります。それだけでなく、それを秘匿するために日米間で「口裏合わせ」をしていたという、おぞましい姿まで表面化したわけです。

 第3に、沖縄返還時の基地縮小の交渉では、日本側が70%程度への縮小を目指していたのに対し、米側は基地機能の維持と移転費用の日本負担を主張していましたが、同時に、外務・大蔵両省の協議では、多くの軍用基地が返還されても「わが国の防衛力から無用の長物になる恐れがある。費用もかかり、かえって迷惑」との発言も出ていました。70年6月から71年4月ごろまでの機密文書で明らかになっています。
 また、4月1日付の文書では、日米合同委員会のファイスナー事務局長が「海兵隊の訓練地域はかなりの面積を減じうると信じている」と主張していたそうです。実際には、72年5月の復帰時には約81%への縮小にとどまっています。
 もし、この時、日本側が主張していたように7割への縮小が実現していたら、沖縄の負担はもっと軽くなっていたことでしょう。それを可能にするような基地縮小論が米側にもあったこと、それに対して「かえって迷惑」だという否定的な意見が日本側にあったことは、基地の返還・縮小問題を考えるうえで重要な事実だと言えるでしょう。

 これらの文書は日米関係のあり方や沖縄の基地問題を考えるうえでの貴重な示唆を与えています。日本は実質的にはアメリカの従属国であり、核の持ち込みや基地の返還・縮小に際して主権国家としての対応ができず、国民に嘘を言ってまで欺いてきた姿がくっきりと示されているからです。
 特定秘密保護法が施行された今、今後もこのような形で日米関係の闇が明らかになることはあるのでしょうか。それとも、日米の当局者にとって不都合な、このような闇があるからこそ、特定秘密保護法という密約隠蔽のための法律が必要とされたのでしょうか。


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