2月11日(水) 暴走政治に「反響の法則」 前途多難な安倍政権 [論攷]
〔以下のインタビュー記事は『東京民報』第1875号、2015年2月8日付、に掲載されたものです。〕
戦後70年の今年は、安倍政権のもとで日本の平和と今後の針路が大きく問われる年になります。総選挙結果を受けて政治はどう動くのか、法政大学元教授の五十嵐仁さんに聞きます(1面参照)。
―安倍内閣のもとで通常国会が始まっています。
総選挙を受けて第3次安倍内閣が発足しましたが、これは大きな惨事を国民に及ぼす可能性のある「大惨事」安倍内閣だと思います(笑)。
2年間も任期を残していたのに実施された今回の解散は、、「政治とカネ」の問題が表面化したことや、アベノミクスがうまくいかず消費税再増税が強行できないことなどを受けて、政権基盤を立て直そうとしたものでした。
昨年1月の東京民報でのインタビュー(2014年新年合併号)で、「国民の異議申し立ての行動を通して、安倍内閣に引導をわたす年、解散・総選挙を実現させる年に」と話しましたが、この解散は国民の運動に追い込まれてのものだったと思います。
選挙の結果、与党が3分の2の議席を獲得して圧勝したと報じられていますが、これはもともとあった議席を維持したにすぎません。しかも、与党のなかで自民党は議席を減らし、公明党が増やしています。
それ以上に大きく変わったのが野党内の勢力で、共産党が8議席から21に大きく躍進しました。他方で、野党内の隠れ与党というべき次世代の党は19議席から2議席になり、ほぼ壊滅しました。安倍さんからすれば、こうした結果は大きな誤算だったでしょう。
―1年前のインタビューで、国民の異議申し立ての広がり、デモの復権が起きていると話されていました。
私は、「反響の法則」とよく言うのですが、生活や平和への攻撃があるところ、必ず国民の運動という反撃が起きざるを得ません。
昨年1年を見ても、7月1日の集団的自衛権行使容認の閣議決定に反対運動が大きく盛り上がり、沖縄新基地建設反対、TPP(環太平洋連携協定)参加交渉や農協改革、消費税増税など安倍政権の暴走につぐ暴走に対して、国民の大きな運動が巻き起こりました。
特に沖縄では、県知事選や衆院選の小選挙区で、新基地建設反対の「一点共闘」が大きな成果をあげました。共産党候補が小選挙区で勝ったのは、小選挙区制最初の96年選挙での京都と高知以来です。「一点共闘」という形で小選挙区制の壁を突破し、不公平で歪んだ選挙制度を変えていく新たな展望を示した貴重な成果でした。
―総選挙では、市民運動からの共産党への支持、注目が大きく広がりました。
安倍さんのいう経済の「好循環」はまったく実現しませんでしたが、共産党が展開してきた運動と選挙の「好循環」、これは実現したと言えますね(笑)。
脱原発の官邸前行動など運動の現場に、共産党の候補者が議員になる前から参加している。そういう姿を運動の中で実際に見てきた人たちが信頼を寄せ、それが投票行動に結びついたのだと思います。
また、ブラック企業追及など、共産党が参院で議案提案権を獲得して法案を提出しました。運動とともに選挙で議席を増やせば政治を動かせることが、わかりやすく目に見えるようになってきた1年でした。
この好循環を国政だけではなく地方政治でも生み出していくことが、いっせい地方選挙での課題です。
―戦後70年の今年、政治はどう動くでしょうか。
毎日新聞の世論調査(1月19日付)では、アベノミクスについて、「地方に十分浸透しているか」という問いに、「浸透している」が6%、「浸透していない」が86%でした。
さらにこの調査では、戦後50年に出した村山談話を「引き継ぐべきだ」が50%、集団的自衛権行使容認に反対が50%、原発再稼働反対が54%、憲法改正に理解が深まっていると「思わない」が76%です。安倍政権のやろうとしていることは暴走どころか、国民世論に逆行し、「逆走」するものばかりです。
また、戦後70年にあたって安倍首相が出そうとしている談話が周辺諸国との摩擦を生むものにならないか、アメリカは早々と危惧を表明しています。戦後50年の村山談話にある侵略戦争と植民地支配への反省という言葉は、そのまま戦後60年の小泉談話にも引き継がれました。
これをどうするのか。周辺諸国の批判を浴びるような談話になれば再びアメリカは「失望」を表明し、国際的に孤立するでしょう。逆に、そういう批判を浴びないものなら、安倍さんを支持してきた極右勢力が黙っていない。どちらにしても、大きな矛盾に直面することになります。
安倍首相は総選挙の結果、政権基盤を安定させたといわれていますが、一皮めくると前途多難なことばかりです。国民の大惨事を転じて辞任に追い込み、安倍さんの大惨事につなげる可能性は大いにある。また、そういう一年にしなければならないと思います。
戦後70年の今年は、安倍政権のもとで日本の平和と今後の針路が大きく問われる年になります。総選挙結果を受けて政治はどう動くのか、法政大学元教授の五十嵐仁さんに聞きます(1面参照)。
―安倍内閣のもとで通常国会が始まっています。
総選挙を受けて第3次安倍内閣が発足しましたが、これは大きな惨事を国民に及ぼす可能性のある「大惨事」安倍内閣だと思います(笑)。
2年間も任期を残していたのに実施された今回の解散は、、「政治とカネ」の問題が表面化したことや、アベノミクスがうまくいかず消費税再増税が強行できないことなどを受けて、政権基盤を立て直そうとしたものでした。
昨年1月の東京民報でのインタビュー(2014年新年合併号)で、「国民の異議申し立ての行動を通して、安倍内閣に引導をわたす年、解散・総選挙を実現させる年に」と話しましたが、この解散は国民の運動に追い込まれてのものだったと思います。
選挙の結果、与党が3分の2の議席を獲得して圧勝したと報じられていますが、これはもともとあった議席を維持したにすぎません。しかも、与党のなかで自民党は議席を減らし、公明党が増やしています。
それ以上に大きく変わったのが野党内の勢力で、共産党が8議席から21に大きく躍進しました。他方で、野党内の隠れ与党というべき次世代の党は19議席から2議席になり、ほぼ壊滅しました。安倍さんからすれば、こうした結果は大きな誤算だったでしょう。
―1年前のインタビューで、国民の異議申し立ての広がり、デモの復権が起きていると話されていました。
私は、「反響の法則」とよく言うのですが、生活や平和への攻撃があるところ、必ず国民の運動という反撃が起きざるを得ません。
昨年1年を見ても、7月1日の集団的自衛権行使容認の閣議決定に反対運動が大きく盛り上がり、沖縄新基地建設反対、TPP(環太平洋連携協定)参加交渉や農協改革、消費税増税など安倍政権の暴走につぐ暴走に対して、国民の大きな運動が巻き起こりました。
特に沖縄では、県知事選や衆院選の小選挙区で、新基地建設反対の「一点共闘」が大きな成果をあげました。共産党候補が小選挙区で勝ったのは、小選挙区制最初の96年選挙での京都と高知以来です。「一点共闘」という形で小選挙区制の壁を突破し、不公平で歪んだ選挙制度を変えていく新たな展望を示した貴重な成果でした。
―総選挙では、市民運動からの共産党への支持、注目が大きく広がりました。
安倍さんのいう経済の「好循環」はまったく実現しませんでしたが、共産党が展開してきた運動と選挙の「好循環」、これは実現したと言えますね(笑)。
脱原発の官邸前行動など運動の現場に、共産党の候補者が議員になる前から参加している。そういう姿を運動の中で実際に見てきた人たちが信頼を寄せ、それが投票行動に結びついたのだと思います。
また、ブラック企業追及など、共産党が参院で議案提案権を獲得して法案を提出しました。運動とともに選挙で議席を増やせば政治を動かせることが、わかりやすく目に見えるようになってきた1年でした。
この好循環を国政だけではなく地方政治でも生み出していくことが、いっせい地方選挙での課題です。
―戦後70年の今年、政治はどう動くでしょうか。
毎日新聞の世論調査(1月19日付)では、アベノミクスについて、「地方に十分浸透しているか」という問いに、「浸透している」が6%、「浸透していない」が86%でした。
さらにこの調査では、戦後50年に出した村山談話を「引き継ぐべきだ」が50%、集団的自衛権行使容認に反対が50%、原発再稼働反対が54%、憲法改正に理解が深まっていると「思わない」が76%です。安倍政権のやろうとしていることは暴走どころか、国民世論に逆行し、「逆走」するものばかりです。
また、戦後70年にあたって安倍首相が出そうとしている談話が周辺諸国との摩擦を生むものにならないか、アメリカは早々と危惧を表明しています。戦後50年の村山談話にある侵略戦争と植民地支配への反省という言葉は、そのまま戦後60年の小泉談話にも引き継がれました。
これをどうするのか。周辺諸国の批判を浴びるような談話になれば再びアメリカは「失望」を表明し、国際的に孤立するでしょう。逆に、そういう批判を浴びないものなら、安倍さんを支持してきた極右勢力が黙っていない。どちらにしても、大きな矛盾に直面することになります。
安倍首相は総選挙の結果、政権基盤を安定させたといわれていますが、一皮めくると前途多難なことばかりです。国民の大惨事を転じて辞任に追い込み、安倍さんの大惨事につなげる可能性は大いにある。また、そういう一年にしなければならないと思います。
2015-02-11 03:55
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