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2月22日(日) 「改革」の失敗がもたらした政治の劣化と右傾化(その1) [論攷]

〔以下の論攷は、『学習の友』No.739、2015年3月号、に掲載されたものです。3回に分けてアップします。〕

 日本の政治が民意を反映しなくなっているのではないか。多くの国民はそう思い、反対意見や要求が政治に届かない不満やもどかしさを感じているのではないでしょうか。ひとことで言えば、日本政治の劣化です。
 自由で民主的な政治体制を標榜していながら、日常的な政治運営では自由も民主主義も十分に機能していません。主要なマスメディアは官邸にコントロールされ、原発再稼働反対や沖縄での新基地建設反対の世論は無視され続けてきました。「政治とカネ」の問題も相変わらずです。
 政治の右傾化もはなはだしく、出版物では反中・嫌韓の言論があふれ、「在日」の人々を敵視し排除するヘイトデモが繰り返されてきました。集団的自衛権の行使容認や改憲に向けての動きが強まり、「戦争できる国」への転換も図られようとしています。
 どうして、こうなってしまったのでしょうか。なぜ、日本の政治は劣化し、右傾化が進行してきたのでしょうか。その大きな原因は政治改革や構造改革、アベノミクスなど一連の「改革」路線が失敗したことにあります。

政治改革の失敗①―小選挙区制の罪

 政治改革は1993年から94年にかけて取り組まれましたが、結局は選挙制度改革に単純化され、最終的には小選挙区比例代表並立制の導入に結びつきました。小選挙区制になれば政治は改革されると宣伝されましたが、今からすれば大きな間違いでした。日本政治を劣化させた最大の罪は、小選挙区制にあります。
 政治改革前の日本の選挙制度は、基本的に定数3から5の中選挙区制と呼ばれるものでした。この制度では同一政党から複数の当選者が出るため「サービス合戦」となったり派閥を生んだりするから、当選者を1人にすれば政党・政策中心の選挙になって「政治とカネ」の問題はなくなり、政権交代も起きやすくなると言われたのです。
 しかし、1議席を争う小選挙区制は大政党に有利で「死票」が多く、相対多数であれば当選し、4割台の得票率でも7割台の議席を占めることができるという根本的な欠陥を持っています。そのような制度が導入された結果、候補者と選挙活動は大きな変容をこうむることになりました。
 小選挙区では候補者は1人で、その候補者を決めるのは政党です。基本的に、有権者は候補者を選ぶことができません。大きな政党では候補者になればほぼ当選でき、その候補者は党によって選ばれますから、執行部に逆らえなくなります。自民党などでは派閥の力が弱まり、集権化が進みました。
 しかも、選挙区が狭く、一人しか当選できません。地盤があって選挙に強いと考えられる候補者が選ばれがちになり、二世議員や三世議員が増えることになります。派閥が弱体化した自民党では、その新人発掘機能や議員への教育・訓練機能も失われます。若い候補者が政治家として鍛えられるチャンスが減り、「こんな人が」と思われるような不適格者も国会議員になってしまったというわけです。
 そのうえ、当選最優先で政策も理念も後まわしの「選挙互助会」のような政党も生まれました。政策抜きの野合や離合集散などもあり、政党の劣化と 堕落をもたらす制度になっています。

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