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4月24日(金) なぜテレビは政治を正面から報じないのか(その3) [マスコミ]

〔下記の座談会は、『前衛』No.922、2015年5月号、に掲載されたものです。出席者は、五十嵐仁(法政大学元教授)、岩崎貞明(放送レポート編集長)、砂川浩慶(立教大学准教授)、永田浩三(武蔵大学教授)の4人ですが、私の発言部分だけを3回に分けてアップします。他の方の発言を含めたやり取りをお知りになりたい方は掲載誌をお読みください。〕

 五十嵐 その結果として、権力に対する批判が弱まったり、権力に同調したり、迎合したりということにもなるわけですね。あるいは安倍さんがしばしば登場することで、なんとなく親しみを感じてしまうということになる。それがもたらしている効果こそが、「高い内閣支持率の秘密」ではないでしょうか。個々の政策課題では反対が多いにもかかわらず、「安倍内閣を支持しますか」と聞かれると、なんとなく「支持する」と答えてしまう。三月のNHK世論調査では八ポイント落ちましたが、それでも四六%の支持率です。
 もう少し詳しく言えば、昼間テレビを見ている人たちの政治意識に大きな影響力を行使している結果ではないか。世論調査の手段として用いられるのは固定電話で、その調査に答えることができるのはだいたい在宅している人です。昼間家にいるということになると、多くは高齢者や主婦です。これらの人はテレビの視聴時間も多い。そのテレビでは、安倍さんの露出が多く、あまり政府に対する批判もなく、よくやっているかのような形で報じられる。「まあいいんじゃないの」という感覚的、ムード的な内閣支持の意識がつくられる。
 まず、内閣を支持していますか、いませんかということを聞くから支持率が高くなるという見方もあります。個々のテーマについて賛否を聞いてから、最後に「では、このような政策をおこなっている安倍内閣を支持しますか」と聞けば、もっと不支持が多くなるだろうというわけです。

 五十嵐 原発関連の報道では、3・11以後、やはり変わったと思います。原発事故、放射能被害が具体的な形で現れたわけですから、もう簡単に肯定するわけにはいかなくなった。もちろん、すべてが変わったわけではありませんが、一部には、それまで自分たちがおこなってきた放送内容について反省するような動きもあったと思います。それが原発再稼働反対、脱原発という運動の報道や世論のあり方にも反映されているのではないでしょうか。
 沖縄の問題もそうですが、世論と報道との相互関係、フィードバックが重要だと思います。マスコミがきちんと報道し、それに世論が反応し、またそれに対応する形でマスコミの報道も変わっていく。沖縄の例で言えば、「琉球新報」の世論調査では新基地反対が八〇%、安倍内閣支持率では支持しないが八一%という高率です。そこには、このような世論と報道との相互の関係が生まれているのではないかと思います。
 いまのままだと「テレビ離れ」がどんどん進んでいってしまいます。では、信頼を回復するためにどうするか。テレビ界にかかわる人たちがもっと真剣に考えなければなりません。インターネットは強力な競争相手ですが、問題も多いのははっきりしています。
 そういうなかで、よい報道をどう育てていくかは視聴者・国民の側の課題でもあります。情報リテラシー、メディアリテラシーという、報道される内容や番組、情報について判断する力を身につけ、よい番組を見て評価し、悪い番組は見ないようにする。あるいは、感想や意見を直接テレビ局などに伝える。そういうなかで、良心的な、まともなテレビ人、報道人を育てていく。視聴者の側からの働きかけで気概のあるジャーナリストを育成するということも必要なのではないでしょうか。

 五十嵐 テレビなどを見て、局に電話やメールをパッと送るという人もいると思います。その場合、文句をいったり批判したりすることは多いのですが、よいということをメールするようなことはあまりしない。よい番組については「よかった」という評価をきちんと伝えることが、良心的なディレクターや制作者を励ますことになり、これらの人々を守ることにもなる。そういうことも意識的にやってもらいたいと思います。

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