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6月10日(水) 憲法専門家の3人の学者は「王様は裸だ」と言ったにすぎない [戦争立法]

 衆院憲法審査会での専門家3人の「違憲」発言は、その後も波紋を呼んでいます。このような形で議論が深まるのは結構ですが、この3人の学者は「王様は裸だ」と本当のことを言っただけです。
 あわてて、「新3要件」というベールをかぶせて「裸の王様」を国民の目から隠そうとしても無駄でしょう。もともと「裸」なのですから……。

 安倍晋三首相はドイツ・ミュンヘンで記者会見し、衆院憲法審査会で憲法学者が安全保障関連法案を「違憲」と指摘したことに関し、憲法違反ではないと確信していると反論しました。「憲法解釈の基本的論理は全く変わっていない。世界に類を見ない非常に厳しい武力行使の新3要件の下、限定的に行使する」と述べたそうです。
 しかし、「新3要件」の内容はあいまいで「非常に厳しい」とは言えず、この3要件は「重要影響事態」や「国際平和共同対処事態」での「後方支援」(事実上の武力行使)には適用されません。9条2項で「交戦権」を認められていない自衛隊が、「限定的」であっても他国で「武力行使」することは憲法違反になります。
 安倍首相にとって、「新3要件」は魔法の呪文のようなものなのでしょう。これを唱えさえすれば、「他国防衛」は「自国防衛」となり、「武力行使」も「憲法解釈の基本的論理」に含まれてしまうというのですから……。

 自民党も憲法専門家3人の発言に大慌てです。全国での街頭演説を始めましたが聴衆に批判されて「帰れ」コールが起こり、「違憲」論に反論するために戦争法案の正当性を訴える文書を作成して配布しました。
 ここでも根拠として示されたのが、1959年の砂川事件判決です。自国の存立のために必要な自衛措置は認められるとされたことに触れ、「最高裁のいう自衛権に個別的自衛権か集団的自衛権かの区別はない」と指摘し、「日本の存立を根底から覆すような場合」は「集団的自衛権を行使することは何ら憲法に反するものではない」とし、「国民の命と日本の平和を守るための安全保障政策に責任を持つべきなのは政治家だ」として、今国会中の成立を目指す立場を改めて示しています。
 「自衛権に個別的自衛権か集団的自衛権かの区別はない」最高裁の判決をもって集団的自衛権の行使容認を正当化することはできないにもかかわらず、この判決をまたも根拠にしたということは、これ以外に根拠にできるものがないということを示しています。「国民の命と日本の平和を守るための安全保障政策に責任を持つべきなのは政治家だ」としても、その判断や行動が憲法に適合しているかどうかを判断するのは憲法の専門家の役割ではありませんか。

 また、政府は野党の求めに応じて見解を発表しました。「これまでの憲法解釈との論理的整合性および法的安定性は保たれている」として憲法学者3人が「憲法違反」と表明したことに反論しています。
 見解は、「わが国を防衛するためのやむを得ない自衛の措置として一部限定された場合の武力の行使を認める」とし、その理由について「安保環境が根本的に変容」したことで「今後、他国への攻撃でも日本の存立を脅かすことはあり得る」と説明したうえで、新3要件で容認されるのは「あくまでもわが国の存立を全うし、国民を守るため、わが国を防衛するためのやむを得ない自衛の措置」に限定されていると強調しています。また、「現に戦闘を行っている現場」では活動しないことなどを挙げ、「一体化の回避という憲法上の要請は満たす」とし、新3要件について「いかなる事態にも応えるという事柄の性質上、ある程度抽象的な表現が用いられることは避けられない」と説明しています。
 これまでの説明と基本的には変わりありませんが、最後に「ある程度抽象的な表現が用いられることは避けられない」としている点は注目されます。「新3要件」が具体性に欠け、恣意的な判断が可能であることを暗に認める結果となっているからです。

 これらの反論や説明は、反論にも説明にもなっていません。「王様が裸」であることを隠そうとして、これまでの牽強付会や強弁を繰り返しているだけだからです。
 問われているのは、無理やり「裸」にしてしまったことですから、それを隠そうとしても無理が生ずるだけです。必要なことは、ちゃんと服を着せて、元の姿に戻してやることでしょう。

 ということで、突然ですが、今日から10日間、鼻の手術のために入院します。このような重大な情勢の下で戦線離脱のような形になるのはまことに残念ですが、以前から決まっていたことでやむを得ません。
 このような事情ですので、参加を呼びかけておきながら、6.13大集会にも翌日の八王子の市民パレードにも参加できません。ブログの読者の皆さんの多くが参加され、私の分まで声を張り上げて下さることを期待しております。

 手術が無事に済んでブログを書けるようになり次第、再開します。その時まで、ご機嫌よう。

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