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6月19日(金) 「国際状況」が変われば憲法解釈も変えるのは当然だという安倍首相の憲法99条違反 [戦争立法]

 本来であれば、今日が退院の予定日でした。実際には一日早く昨日退院し、すでに自宅療養に入っています。
 退院が一日早まったのも、手術が大成功に終わり、その後の経過が超順調であったためです。お陰様で、ブログはもう本格復帰させていただいています。

 テレビ番組に出演した船田元自民党憲法改正推進本部長は、自民党推薦の長谷部恭男教授が衆院憲法審査会で安全保障関連法案を憲法違反と指摘したことについて「(以前)特定秘密保護法で(自民党の)参考人として来られたとき、ご理解のある発言だったので、少し安心して選んだ。正直、ミスだった」と述べました。自分たちに都合の悪いことを言ったから「人選ミス」だと言いたいようですが、憲法研究者の多数意見を代表する参考人を選んだのですから、憲法調査会の参考人の人選としては誠に正しいものだったと言うべきでしょう。
 「ミス」ということでは、国民の多くから理解が得られない違憲の「戦争法案」を出したことこそが大きなミスでしょうし、「人選ミス」ということで言えば、このような法案をゴリ押ししようとする極右の安倍晋三を自民党の総裁に選んでしまったことが、最大の「人選ミス」だったのではないでしょうか。
 3人の憲法専門家の「違憲」発言に慌てた政府はまたもや砂川判決を根拠に合憲性を主張していますが、すでに多くの批判を受け、判決自体の正当性すら疑われ、閣議決定の根拠にもできなかったような判決を持ち出さざるを得ないところに、「戦争法案」の根拠の薄弱さが示されています。ほかの最高裁判決についてもいろいろと探したのでしょうが、集団的自衛権の行使容認のこじつけとして使えそうな材料がこれ以外に見つからなかったということなのですから……。

 その「人選ミス」の安倍首相ですが、衆議院予算委員会での集中審議で、またもや重大な暴言を放っています。自民党の小野寺元防衛大臣の質問に答えて、「国際情勢に目をつぶり、従来の解釈に固執するのは政治家としての責任の放棄だ」と述べ、憲法解釈変更の正当性を強調したからです。
 この答弁は、今回の「戦争法制」が「従来の解釈に固執」するものではなく、それを変更したものであることをはっきりと認めています。それだけではありません。「時々の内閣が『必要な自衛の措置とは何か』とことん考えるのは当然のことだ。昭和47年の政府見解では、集団的自衛権は必要最小限度を超えると考えられたが、大きく国際状況が変わっているなかで、国民の安全を守るために突き詰めて考える責任がある」と居直りました。
 「国際状況」が変われば、それに応じて憲法の解釈を変えるのは当然で、むしろそうしないのは「政治家としての責任の放棄だ」というのです。安倍首相にとって憲法の規範性や立憲主義などはくそくらえで、「従来の解釈に固執する」ことこそ無責任なのだということになります。これこそ、憲法99条に定められた「憲法尊重擁護義務」違反の暴言であり、国務大臣の長たる首相として最悪の失言であると言わなければなりません。

 それでは、このような「国際状況」はどう変化したというのでしょうか。今回の「戦争法案」について、なぜ今必要なのかと問われた安倍首相はこれまでも国際環境の変化を繰り返し、昨年5月15日に出された安保法制懇の答申でも同様の説明がなされていました。
 日本周辺の安全保障環境が悪化したから、それに対応した安全保障法制の整備が必要になっているというわけです。加えて、日本の安全は日本一国では守れなくなっているからだとも……。
 この説明は嘘です。安倍首相は国民に嘘をついてまで、「海外で戦争できる国」に日本を変えようとしているのです。

 「日本周辺の安全保障環境の悪化」と言えば、国民は直ぐに北朝鮮を思い浮かべるでしょう。確かに、北朝鮮は核開発を進め、ミサイル実験を繰り返しており、解決を約束した拉致問題には全く進展がありません。
 しかし、世界が東西両陣営に分かれて対立し、ソ連を仮想敵国としていた時代に比べて今の方が安全保障環境は悪化していると言えるのでしょうか。冷戦時代にはソ連による北海道への着・上陸型侵攻まで想定されていましたが、北朝鮮についてはミサイル攻撃やゲリラ・グループの原発攻撃などだけで、着・上陸型の侵攻は想定されていません。
 その理由は、はっきりしています。北朝鮮は大量の侵攻部隊や武器・弾薬などを運ぶ大型の輸送船や輸送機を保有していないからです。
 太平洋艦隊などの軍事力の巨大さや核戦力、着・上陸型侵攻の可能性ということで言えば、冷戦時代のソ連の方が今日の北朝鮮よりもはるかに大きな脅威であったことは明らかです。このような過去と比べれば、今の方が「日本周辺の安全保障環境が悪化している」とは言えません。

 第2に、もし、安倍首相の言うように「日本周辺の安全保障環境が悪化している」ことへの対応が必要だというのであれば、何故、周辺事態法の「周辺」を削除し、集団的自衛権行使の具体例としてホルムズ海峡の機雷封鎖の例しか出してこないのでしょうか。
 まさに、「周辺」での危機に対処することが必要なのに、その「周辺」を取って重要影響事態という新概念を編み出し、対応地域を中東にまで拡大しようとしています。つじつまが合わないではありませんか。
 さらに、ホルムズ海峡の機雷封鎖について言えば、その周辺の安全保障環境は悪化するどころか、以前よりも格段に改善しています。封鎖する可能性があるとされているイランですが、穏健派のロウハニ大統領が欧米諸国との関係改善を積極的に進めようとしているという国際状況の変化を安倍首相は知らないのでしょうか。

 第3に、北朝鮮が安倍首相の言うような脅威であるとすれば、それを低下させるための努力が必要です。「それが今の安保法制なのだ」と安倍首相は言うかもしれませんが、それ以前に外交的な圧力を強めるべきでしょう。
 北朝鮮を孤立させ、核開発やミサイル実験を止めさせ、拉致問題を解決するためには国際的な協力による包囲網を形成しなければなりません。そのためには、韓国との連携を強め、中国の協力を得ることが不可欠です。
 そのために、安倍首相は何をやったでしょうか。何もしていないどころか、この両国との関係改善に役立たないことばかりやって来たのが、これまでの安倍首相の対応でした。
 もし、「戦後70年談話」が両国によって批判されるような内容になれば、再び「安全保障環境」は悪化するにちがいありません。そうなれば、「環境」悪化をもたらしている張本人こそ安倍首相なのだということが明瞭になるでしょう。

 現在審議中の「戦争法制」は、北朝鮮の核開発を思いとどまらせ、拉致問題を解決するうえで、何の役にも立ちません。このような無意味な「戦争法制」に熱中するよりも、具体的で効果的な外交交渉に力を入れることの方が先決でしょう。
 そのために韓国との連携を強め、北朝鮮に強い影響力を持つとされている中国の協力を得なければなりません。それをサボタージュするための口実として、「戦争法案」が使われているのでなければ良いのですが……。

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